2019年09月26日 [木]
木村一基王位、誕生!!

今回の王位戦、全局見ていました。一度もタイトルを取った事のない40代後半の騎士がタイトル挑戦自体をする事自体が奇跡に近くて、僕は前回のタイトル挑戦で「これが最後のチャンスだろうな」と思っていたんです。あと一勝の所まで行って破れた最終局、自分の劣勢がはっきりしている局面で、休憩時間も盤面に向かって必死に考える光景を見て涙が出てしまったのを覚えています。よもや、あれからまた挑戦者になるとは。今回の王位リーグだって、菅井さんと羽生さんを倒しての挑戦ですから、ラッキーなんてものじゃなく、実力での挑戦でした。
タイトル戦が始まっても、豊島さん圧倒的有利に見えました。三冠騎士の連勝スタートでしたし、時間の使い方を見るに、序盤研究は圧倒的に豊島さんが上。それでもなんとかイーブンに追いついたものの、最終局の振り駒は豊島さん先手、運にも見放されたように見えました。そして豊島さん得意の角換わり。持ち時間で3時間半の差をつけられ…何から何まで、豊島さん防衛の流れにしか見えませんでした。ところが木村さんは凄かった、ソフト研究含みの研究順に引っ張り込まれながら、互角のままついていったんでしょうから、序盤中盤と驚異の指しまわしと思いました。
将棋として面白かったのは封じ手前後。時間の使い方を見るに、封じ手の局面で豊島さんの研究から外れたと思うのですが、意外な場所に飛車を逃げた木村さんおあの一着は研究を外しに行ったのか、それとも深い読みの入った手だったのか。もう、封じ手以降は難解な局面の連続、どっちが良いのかぜんぜん分かりませんでした。数手後には、受けに行った方が負けみたいな斬り合いの状況に。僕程度のアマからすれば、中盤以降はすべてが難解でした。あれを勝ちきるというのは、木村さんにとっては会心譜だったのではないでしょうか。
終局直後の記者会見、なんとも表現しがたい表情で言葉に詰まりながらの木村さんの会見が印象的でした。そして、記者の数が凄かった!広くない対局室に50人ぐらいなだれ込んだのではないでしょうか。
プロ棋士って、子どもの頃から他のものを捨てて将棋を指し続け、奨励会3段以降は人生を賭けての対局の連続でしょうし、プロになったら人生終盤になってもまだ将棋を指し続けるので、まさに将棋が人生という生き方だと思うんですが、そこでタイトルを取るのと取らないとでは、自分の人生の重みがまったく変わってしまう大ごとだと思うんですよね。もし死ぬその時を迎えた時に、タイトルホルダーになる事が出来た人生なら、「いい人生だった」と人生を諦める事が出来ると思うんですが、そうでなかった場合には、まったく違う人生を振り返る事になると思います。その境目に立った最終局の2日間は、木村さんにとって人生の賭かったた大一番だったと思います。
木村新王位、おめでとうございます。今日は仕事を休んでずっと見てましたが、驚異の指しまわし、素晴らしい会心譜でした。感動をありがとう!!
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