第30期竜王戦 1組ランキング戦準決勝 糸谷哲郎 vs 羽生善治 (角換わり)

 羽生さんの永世竜王&永世7冠のかかった竜王戦。1組ランキング戦は準決勝まで来ました。羽生さんの相手は、糸谷さん!いやあ、強豪ばかりで心臓に悪いです。この将棋、糸谷さんの先手で角換わりになったんですが、怪物じみた名局。両者ともにスゴイ指し手の続いた鳥肌ものの棋譜で、これは角換わりの定跡になるんじゃないかと思います。

20170411竜王30-1組ランキング_糸谷vs羽生_角換37手 角換わり相腰掛け銀は、すっかり▲48金29飛/△62金81飛型の同型が席巻する事になってしまいましたね。▲58金△52金型の時も、僕は定跡を勉強するまで打開できずに何を指していいかまったくわからなかったんですが、▲48金△62金型でもまったく同じ状態に陥ってます(^^;コマッタモンダ)。しかし、この将棋はめっちゃ参考になりました。今後はこの棋譜を参考に指そうと思ったほど。37手目盤面図はほぼ先後同型。次に△31玉と潜れば完全に先後同型ですが、後手としてはそれは避けたいので、ここで△65歩と突く手をプロで何回か見た事がありますが…

△63銀
 えええええええ~~さっき出たばかりの銀を引くのか?!!(゚д゚ノ)ノ!
いやあ、竜王戦1組の将棋で、こんな手が飛び出してしまうとは。もしこれがシロウト同士の対局だったら、間違いなく悪手と言われそうですが、羽生さんの指し手ではね。。

▲66歩△52玉▲88玉△42玉
 うわあああああ~~寄った玉を中央に戻すのか?!…な~んちゃって、これは森内さんなんかも指していたし、手待ちですね(^^)。あああなるほど、先手の形が今が最善なので、手待ちして駒組みの崩れた一瞬を狙っていこうという考えかな?これは角換わり相腰掛け銀の考え方の伝統みたいですね(^^)。ただ、その手待ちに腰掛け銀自体を引くという手があるのが、プロの定跡研究の恐ろしい所です。僕なんかのアマ弱小では、観た事がなかったらあんなの指せないよ…。そういえば、何かの解説で「後手の42にいる玉の位置は、不安定なようでいて52にも31にも行けるので非常にいい形」ときいた事があります。しかし、ここで先手は▲45桂から攻めないんですね。去年のA級順位戦▲三浦-△渡辺戦の角換わりで、三浦さんがものすごくはやい段階で▲45桂と跳ね、桂を丸損しながらとんでもない指し回しで後手陣を崩壊させて以降、この筋の恐怖症になってます(^^;)。あれは△62金型じゃなかったですが…ああ、だから△62金型になってるのか。。

▲67銀
 とはいえ、▲45桂は普通は成立しなさそうですよね、あの将棋だって早い段階での桂の丸損だったし(^^;)。。というわけで、ここで糸谷さんは銀を引きました。これは手待ち半分ぐらいの意味かな?

△54銀▲56歩△44歩
 いやあ…先手が銀を引いたタイミングで銀を腰掛け、▲56歩で先手腰掛け銀が一瞬消えたところで桂跳ねを消しに行きつつ、腰掛け銀を囲いにくっつける手も見せてくんですか。なんというか、この呼吸がすごい。。逆に糸谷さんから見ると、▲56歩は飛車を回って腰掛け銀を潰しに行こうとしてますよね?まだ駒はぶつかってませんが、すごい攻防戦です。

20170411竜王30-1組ランキング_糸谷vs羽生_角換52手▲59飛△31玉▲55歩△43銀▲56銀△22玉(52手目盤面図)
 ここもすごかった。糸谷さんはやっぱり飛車を回って5筋から仕掛けて位を取りましたが、それに対して羽生さんは玉を躱し、腰掛け銀を玉側に引いて銀矢倉を完成し、玉を潜ってしまいました。先手は攻めっ気ある指し回しで5筋の位を取りましたが、羽生さんはその手に乗って陣形を整えていきます。これは面白い盤面図ですが、バランスが取れているんでしょうか。角換わりなのでおっかないとも思ったんですが、こうなると△62金81飛型は打ち込みの傷がなくって守りやすそうですね…なるほど、ここまで組めれば後手不満なしかも。

▲29飛△65歩
 ここで先手は飛車を定位置に戻して角の打ち込みを消しつつ矢倉崩しの位置に飛車を据えましたが…なんとここで後手から仕掛けました!!いや~、こういう将棋になると、後手は受け潰すかカウンター狙いの将棋を構想するかと思ってたんですが、なんと先制です!!しかしこれ、成立してるのか?

▲同歩△86歩▲同歩△95歩
 ああああああ~~~なるほど、これで▲同歩と取れば△75歩▲同歩から△86飛と飛車を切って▲同銀△66角の打ち込みで勝負するのか!!いや~それでどちらがいいのかは分かりませんが、後手が先着できるのは間違いなさそうですね。という事は、△65歩は成立してるって事?マジか、オソロシイ…

▲66角
 いや~、先手の糸谷さんもすごいです。なるほど、9筋の歩を取り込まれたら、92から連打の歩で反撃しようというわけか。う~ん、すごい事になってきました。。

△54歩
 羽生さん、糸谷さんが打ち込んだ角を咎めに行きました!▲同歩なら△同銀で角頭への攻めが決まりそうですが…

20170411竜王30-1組ランキング_糸谷vs羽生_角換65手▲24歩△同歩▲23歩△同金▲25歩(65手目盤面図)
 というわけで、糸谷さんはここで先に玉頭からの矢倉崩し。手抜きに取り込みのタイミングに反撃筋に速度という難解な局面になってきました(^^)。でもこれ、△同歩と取れば▲同桂△24銀で玉のコビンが空いて、△54歩と咎めに行った手がむしろあだとなりそうですよね…というわけで手抜いて反撃するなり、角筋を消すうまい順を考えるなりしたいところですが…

△85歩
 うわあ、羽生さん、ストレートな攻め合いを選択!しかしこれ、取って取ってとやったら、後手の飛車筋は歩で止められるだけに、先手の方が良いように見えるんですが…

▲24歩△同金▲45歩△86歩▲84歩
 あああやっぱり▲84歩で飛車筋を止められたよ…。。羽生さんの永世竜王への道はまた遠のいたか…でもまだランキング戦だしな、チャンスはまだある…と思ったら…

△96歩
 いやあ、鳥肌が立った。。。
これ、僕は完全に見えてませんでした。そうか、飛車筋を止めたら香が走るのを止められなくなるのか!これ、香を補充しにいって飛車のかわりに85に打ち込もうとしてますよね?ただ、次の▲44歩が入ると後手はかなり危ないですよね?速度的にどうなんだ?

▲44歩△同銀直▲54歩
 あああ、これで次の▲24飛△同銀▲44角がめっちゃ厳しいですが…

△28歩▲同飛
 いやあ、これもすごい…。この歩、飛車を浮かせるという意味ですよね。でもそれが具体的にどういう手を準備しているかというと、ちょっと分かりませんでした。これがどういう意味だったかというと…

△55歩▲45歩△56歩▲44歩
 角を止める手筋の△55歩は厳しいですが、ここで先手は突き違いで銀を取り合って反撃。次の▲43歩成がまたしても厳しい手になりますが、しかしここで銀を拾った後手は…

20170411竜王30-1組ランキング_糸谷vs羽生_角換82手△87銀
 いやあ、この打ち込みが速いのか。。しかも、飛車を浮かした事の具体的な意味がようやく解りました。つまり、飛車を浮かしておくと、ここで△69角が用意できるというわけですか。要するに、ここで本当なら▲同金としたいんだけど、そうすると△同歩成▲同玉に△69角が入るので、▲78銀△97金(これも端を取り込んだ時には見えていた筋なんでしょうね…羽生さん恐るべし)▲同香△同歩成▲同桂△同香成と精算してから△78角成の詰めろ。ここで手番は先手に移りますが、どうやっても一手間に合わないというわけですか。。
 というわけで、この銀を取る事が出来ずに糸谷さんは玉を逃げましたが、これは駒を補充しながらの追撃となるのでいかにも厳しかったです。結果、最後は糸谷さん得意のクソ攻めに行きましたが(とはいえ、これがアマなら簡単に間違えさせられそうな厳しい攻めでけっこうオッカナイ)、羽生さんは鬼のように冷静に受け切って、攻めが切れたところで糸谷さん投了。羽生さん、竜王戦1組ランキング戦決勝に進出です!!

いや~、なんという将棋でしょうか。とんでもない手待ちから、相手が銀を引いた瞬間に玉を固め、自分から先制してしかもそれが成立していて、最後は一手勝ちの局面に持ち込んでしまうんですから。中央の折衝もメッチャクチャおっかなくって、僕なんかだとどっちがいいのか全然わからないんですが、この棋譜を見る限り、羽生さんは読み切って自分の方が速いと判断してから踏み込んでますよね…いやあ、マジでオソロシイです。糸谷さんの指し回しも絶品と思ったんですが、仕掛け前後の数手の綾だけが勝敗を分けたんじゃなかろうかというほどの、1mmの隙で相手を斬ってしまったような見事な将棋でした。この棋譜、角換わり相腰掛け銀の▲48金/△62金型の定跡になるんじゃないでしょうか?!


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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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