第43期女流名人戦 第5局 上田初美 vs 里見香奈 (後手中飛車vs先手一直線穴熊)

 この将棋、メッチャメチャ面白かった!!全盛期の羽生さんを思わせるほど、女流将棋で無類の強さを発揮している里見さんと、その里見さんをカド番まで追い込んだ上田さん。フルセットまでもつれた第5局は、お互いの心の機微が指し手にあらわれるような壮絶な心理戦のようでした!

20170222女流名人43-5_上田vs里見_後手中飛車30手 最初の山は中盤。僕にとって中盤のイメージって、お互いに辛い状態でガマンした方が勝ち、という感じ。無いようにみえる所から手や順を探す、それでもない時は代償を求める、みたいにして、簡単に崩れずに相手との辛抱合戦をしのぐイメージです。中盤は手が広くて将棋でムズカシイ所のひとつだと思うんですが、逆に言うと手が広いので、なさそうでもあったりするんですよね(^^)。そして、今日の中盤はまさにそんな感じの辛抱合戦。30手目盤面図は、里見さんが5筋から仕掛けたところ。ここ、先手はそれこそ手が広いですよね(^^)。問題は正着が何かという事なんですが、ここで上田さんは…

▲68角
 居飛車党の人なら、異筋が見えない限りはほとんどこう指すんじゃないかと思うんですが、こうすると△57歩成からの仕掛けは成立しないですよね。アマチュア低段ぐらいの僕の場合、一直線穴熊で居飛車が良くなるのは大体このあたりで後手が手詰まりになって、居飛車の遅れていた攻めが追いつくからだと思うんですが、里見さんはどうするんだろう…

△54飛
 先に辛抱したのは里見さん。▲46歩からの銀ばさみの受けに浮き飛車を4筋に回そうという事でしょうね。しかしこれはいい手だなあ、先手は▲46歩と突きにくくなったぞ。しかしよくこういう手を思いつくなあ。

▲96歩△52金左
 上田さんの▲96歩は渋いながらも入るなら入れておきたい手だし、このあたりで入れないと入る時がなくなってしまいそうなので絶妙のタイミングだったのかも。それはここで美濃の完成に着手した後手も同じ…といいたい所ですが、僕的には対中飛車で41から動かない金というのもそれなりに厄介なので、ここに手を使ったというのは、後手は手詰まり気味なのかな?もしそうなら、駒組みの進展性がある先手がいいんじゃないかと思ったんですが…

▲46歩△同銀▲56金△55銀
 上田さん、ここでいったああああ!いやあしかしこれを警戒して後手は飛車を浮いたのに、入るんでしょうか?アホな僕は分かりませんが(^^;)、僕なら後手手詰まり気味とみて▲16歩とかで駒組みを更に万全にしつつ後手に手番を渡して攻めさせて受け潰したい所ですが…相手が里見さんだと先着で仕掛けられる恐怖感とか、受け潰すどころか自分が攻め潰されそうだなとか、心理的なプレッシャーが半端じゃないんでしょうね(^^;)。ここ、相手が里見さんでさえなければ、上田さんは違う手を指していたかもしれません。

▲65金△84飛▲86歩△同歩
 上田さん、飛車をいじめているようにも見えますが、実際のところは辛抱という感じですね。いかにも切れそうな攻めを督促されている時のようなイヤナ感覚…でもこうなった以上は仕方ないと開き直った感じかな?しかし先手のこの飛車先の歩の突き捨て、絶妙のタイミングに見えます(^^)。

▲22歩
 これは凝った将棋を作りにいきました(^^)。でも歩の突き捨てが入ったんだから、普通に▲55金△同角で角の利きを外して▲24飛で飛車を捌いて駒損ながらも飛車が捌ければ先手も決して悪くないと思うんですが、ここで△64銀と出られたら難しくないかい?これは凝りすぎのような気も…

△64銀
 ですよねえ…。ここも先手は手が広いですが、どの順がいいかの判断が難しそう…

▲64同金
 いやあ、これはさすがに先手辛抱しきれなくなった手なんじゃないでしょうか。歩があれば▲67歩で先手よしなんでしょうが、歩切れってやっぱり辛いっす。。飛車を捌かずに▲22歩を選択した以上は▲21歩成の駒得で主張して欲しかったですが、それだとまずい順があるのかな…。でもそれがまずいのであれば、ここじゃなくて▲22歩がまずかったという事なので、やっぱり悪くても▲21歩成で勝負してみて欲しかったなあ。これで指し手の一貫性がなくなってしまった感じがして、「中盤はお互いに辛い状態でガマンした方が勝ち」状態は、上田さんが先に我慢しきれなくなったように見えてしまいました。

 ところが、ここでプッツリ切れてしまわず、立て直しに行った上田さんの精神力が見事!上田さんが里見さんというプレッシャーから先に動いてしまったのに対して、里見さんは有利と見たところで安全策を取りに行ってしまって食らいつかれてしまいました。羽生さんとか久保さんとか渡辺さんとか康光さんとかだと、有利と見ても安全に行かずに一手差でも勝ちきる順に踏み込みに行くと思うんですが、それこそ傍目八目というもんで、タイトル戦の最終局という大舞台になると、心理的なものがお互いに働くんでしょうね。宮田さんや藤井さんが先手良しと解説する局面すらあったほどの大熱戦の終盤!!しかし、その瞬間に今度は良くなったはずの上田さんが安全に行こうと銀を惜しんで逃げてしまい、これが痛恨の一手で勝負あり。…と思ったら、粘る上田さん必死の攻防の受けに数の攻めで被せすぎた里見さんが攻撃速度を落としてしまい、その一瞬を突いて今度は上田さんが美濃崩しの王道の香打ち…と、目まぐるしい終盤の攻防の末、202手という大熱戦で後手里見さんの勝ち、女流名人防衛です!

 いや~、今日の将棋は面白かった!良くなったと思った次の手とか、凌いだと思った次の手が一番怖いなんていいますが、今日はお互いにそんな感じ。人間って、追い込まれた時はギリギリまで考えて最善を見つけに行けるんだけど、自分がいい時は楽しようとしてしまうという事なのかも。将棋って、心を動かさずにどこまでも冷静に指さないといけないんでしょうね。この間、身内の集まりの将棋大会で、準決勝で焦ってやらかして勝ち将棋を負けにしてしまったボクとしては、学びの多い、しかし観ていてメッチャクチャに面白い将棋でした!(^^)。



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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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