第28期竜王戦 第4局 糸谷哲郎 vs 渡辺明 (力戦)

 この将棋は特に序盤が面白かったです!最終的には先手の糸谷竜王が飛車を中央に振り、後手の渡辺さんが居飛車で玉を矢倉気味の囲いに入れたので、先手中飛車の対抗形なんでしょうが、そこに行くまでの駆け引きや順が、僕の知っている中飛車戦の定跡とは全然違うので、いちおう力戦扱いという事で(^^;)。

20151119竜王28-4_糸谷vs渡辺_力戦6手 6手目盤面図、横歩か角換わりになりそうという所で、後手の渡辺さんが△94歩!いや~、これは得意の角換わりで、糸谷さんが用意していない順に誘い込もうという事でしょうか。

▲56歩
 糸谷さんは7手目(!)のこの一手に50分を使いました。まず▲56手がいい手かどうかの前に、▲96歩と素直に応じるかどうかという悩ましい選択があったと思います。▲96歩なら、(仮に△94歩が渡辺さんのブラフじゃないとしたら)渡辺さんの研究順になる。そして、糸谷さんの選択は渡辺さんの注文に応じない手。ただ、注文に応じない力戦系の場合は、序盤に難のある(もちろん、トッププロの中では、という意味^^;)糸谷さんが間違えやすい可能性があるという渡辺さんの計算である気もするし…。そう感じるのは、「序盤の定跡研究では渡辺さんが上」と僕が感じてるからなんでしょうね。だって、糸谷さんが研究に自信があれば、何も力戦を選ばずに普通に指せば「自信あり」のはずなんですものね。

△34歩▲55歩△85歩▲77角△62銀▲68銀△74歩
 後手は飛車先に歩を伸ばし、△74歩とハッチを開けて右銀の進出を狙ったので、たぶん居飛車確定。では先手は?5筋の位を取りましたが、玉の態度を保留。普通なら中飛車に行きそうな気もしますが、最初に角換わりか横歩取りの相居飛車のつもりで行ってしまったもので、2筋の歩がひとつ上がってしまっています。となると、美濃に行くにしても銀冠狙い?いやいや、右玉すら使いこなす糸谷さんですからね、ちょっとまだ分かりません。

▲57銀△73銀▲56銀△64銀
 おお~っと、先手は左銀を中央から繰り出しました!中飛車にして中央から襲い掛かるか、それとも角頭を狙いに行く?これは先手の方針の分かれ道だった気がします。それに呼応するかのように、渡辺さんも攻撃の銀を繰り出し自陣整備よりも反撃筋を間に合わせる事が先、という事かな?この辺りは、ちゃんと手数を数えないと分かりません。力戦系の怖さって、定跡形だとそこまで考えなくても済むところでも、けっこう深く考えないといけないところですよね。序盤にして、中盤なみのむずかしさ。。

▲58飛△41玉
 先手、中飛車に行ったああああ!!!いや~、あまりに序盤過ぎて、形勢なんて全然わかりませんが、糸谷さんの得意形を指させず、自分は馴れた居飛車で将棋を作りに行けるというだけでも、渡辺さんの作戦は成功したと言える…かな?

▲45銀
 糸谷さん、玉を囲わないまま、攻めに行ったああああ(*^-^)o゙!!
いや~、一手前で「渡辺さんの狙いは成功」と言っておきながら、次の▲54歩や▲34銀を後手はどうやって受けるんだ?なんか、先手が良いような気もしてきたぞ…(。・ω・)。。仮にここが受かるとして、次の△75歩からの角頭攻め&飛車先突破の反撃でソロバンは合うという事なのでしょうか。ここは後手間違えるとヤバい局面なんじゃないかい?

△42銀▲48玉△33銀
 先手は仕掛ける順から考えたい所かと思ったんですが、いきなり中央で開戦しちゃうと、中央がら空きの戦型で居玉はさすがに危険…ですよね。糸谷さんは冷静に居玉を解消しました。そして…

20151119竜王28-4_糸谷vs渡辺_力戦28手▲54歩△同歩▲同銀△62金(28手目盤面図)
 開戦だああああ!!!いや~、この場面、僕は自分が5級ぐらいのころを思い出してました。今は中飛車戦は、先手でも後手でも居飛車穴熊で戦うんですが、級位の頃は超速とか、自己流とか、色々やってたんですよ。居飛車穴熊では中央での折衝でこういうデンジャラスな受けの局面にはなりにくいんですが、それ以外だと、少しうっかりするといきなり致命傷、みたいになるんですよね。まあそんなわけで、僕はどうしてもこの盤面図を居飛車側から眺めてしまいます。ここで糸谷さんは…

▲45銀
 銀を引きました。もしかしたら、攻めあぐねたのかも。しかし28手目盤面図を後手側から眺めると…いや~、自分が居飛車党だから、常に居飛車サイドで悲観的な観方になってしまうのかもしれませんが、28手目盤面図は後手の方がまとめるのは難しいんじゃないかと感じてしまいます。まず、角の働きによって、後手陣だけに強い制約がかけられてしまっているように感じます。先手は囲おうとすれば、最善形にはできないまでも、玉を深くする、銀で蓋をする…などなど、許される手数の範囲で、分かりやすく固められる。攻めのポイントは見ての通りで、しかも敵陣の玉に近いところが戦場。しかし居飛車側は、33の銀を動かし、その時に角交換されるといきなり壁金の形に追い込まれるから…と、駒組みにも構想にも相当制限されているように見えました。僕程度の棋力だと、単純に「次の指し手が難しい」という程度のみでいって指しにくい。糸谷さんが▲45銀と銀を引いたのはめっちゃくちゃ自然な手だとは思うんですが、実は苦しくてもギリギリまで銀で睨んでおいて、後手に手順に△44歩を指させないようにしたまま指し進める順を探した方がよかったんじゃないかと思いました。な~んて勝手な事を言っていますが、じゃそれでは具体的にどういう構想があり得るかというと…分かりません(&p゚ω゚*)。。この局面、難しいよおおお。。

 というわけで、気がつくとこう着状態、その間に後手渡辺さんが綺麗に駒組みをして、どちらかという先手の方が駒の連結が良くない感じに。まずい手があったわけではないのかも知れませんが、後手にまとめさせたのは最初の分岐点だった気が。そして次に、いよいよ形勢が傾いたように見えたのは、糸谷さんが駒組みで差をつけられたところで、それを挽回しようとしたのか、大駒を打ち込んで攻めに行って先手を取りに行ったところで、渡辺さんがその手を全部消したときなんじゃないかと。受け潰してから、着実な手をひとつひとつ丁寧に成立させて反撃!!しかも、糸谷さんは相居飛車のつもりで序盤で指した飛車先の歩の突き出し▲26歩にまでつけこむという、よくぞそんな小さい所にまで咎められるなというほどの、渡辺さんの見事な指し回し。結果、98手にて後手渡辺さんの勝ち!!

 将棋自体は高度すぎて、文句のつけようがないというか、めっちゃくちゃ凄かった!面白かったです。勝敗の行方は、今日の対局の指し手そのものというよりも、もっと前のところにあったのかも。この竜王戦を見ている人はみな感じている事だと思うのですが、序盤の駆け引きのところでリードするのは、すべての対局で渡辺さん。糸谷さんは常に定跡形を避けようとしているように見えます。これって、「定跡形で進むと渡辺さんの研究にハマるから避けよう」という考えが背景にあるんでしょうね、きっと。しかしその理屈だと、糸谷さんは、プロ棋士が積み上げてきた棋譜や研究の結果、最善手のはずである定跡を序盤で選択できない。プロ将棋の場合、序盤はやっぱり研究できるところまでは研究して、課題局面で自分が最善と思う手を指して善悪を問う…というふうにしないと、毎度毎度その時限りの棋譜になっちゃうかも。序盤で差をつけられてそのまま離されて完封、という将棋がこれだけ続くと…糸谷さんは、盤の前に座る以前のところで、方針を変えないといけないのかも知れません。


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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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