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第42期女流名人戦リーグ 甲斐智美 vs 香川愛生 (力戦)

 昨日は、女流名人戦リーグの9回戦最終局の一斉対局。昨日の対局前には、清水さんと上田さんと香川さんに挑戦の可能性があったのかな?でもって、▲甲斐-△香川戦が、序盤に面白い事になってました。

20151118女流名人リーグ_甲斐vs香川_力戦8手 際序盤、先手の甲斐さんが三間飛車を匂わせてところで、後手香川さんがなんと△44角(8手目盤面図)!!おおお、香川さん、序盤で新しい戦型でも編み出したか?!僕は振り飛車をほぼ指さないので知らないんですが、相振り飛車にこういう指し方があるんでしょうか。しかしこれ、シロウト的には、角頭銀を狙われるとどうなるんだ…と考えてしまいます。先手は角を直撃しつつ自陣は綺麗に美濃に囲えそうですし。。僕がどちらかというと持久戦志向な棋風、序盤の桂頭と角頭はかなり気を遣う性格なもので(後手角換わりの桂跳ねですら嫌^^;)、ちょっとこれはデンジャラスな手に見えました。香川さん、急戦狙って早期決着を狙う方針かな?(追記:コメント欄から、手の意味を教えていただきました!曰く、「△4四角は向かい飛車にしますよという手で ▲6六歩と現状先手の角が使えないのと▲7五歩と三間飛車を匂わせる手に呼応した。この場合端の交換も後手の得になっていて美濃にも組みづらい。だから三間飛車VS向かい飛車になると先手が不利になる 」との事です。えっと、仮に△44角以下を先手三間飛車vs後手二間飛車で指し継ぐと…▲78飛△22飛▲74歩△同歩▲同飛△42銀▲54飛(短騎ですが飛車で攻めを繋ぐなら一歩得にもなるこれが自然な気がしますが、ここは色々ありそう)△53銀▲74飛…ああ、これ以上先手の攻めはつながりそうにありません。ここから後手が△24歩とかで反撃、仮に先手が美濃に組むとすると△44角が玉頭と端を睨んでいるという事か、なるほど~。相振り飛車は難しいなあ。。書き込みいただきましたtibigame様、有難うございました!)

▲48銀△84歩▲56歩△85歩▲57銀△53角
 対する甲斐さん、露骨に中央から角を咎めに行きました!しかしその咎め方が凄い。なんと左銀ではなく右銀で行ったあ!!飛車先突破を計算しなくてはいけないハズなのに、すげえなあ。かなり読みを入れてからでないと、ちょっと怖くて指せない順に見えました。里美さんは別格としても、清水さんや甲斐さんはやっぱり強いわ。しかし香川さん、いきなり角をそこに引くようでは、△44角の主張どころか、11~99の先手の角のラインがヤバくないかい?それとも、3手角が最初からの狙い?う~ん、シロウトにはわからん。。(追記:ここもコメント欄から手の意味を教えていただきました。「(三間飛車VS向かい飛車になると先手が不利になる)それを嫌って居飛車にして攻めるなら右銀ということで、振り飛車にしてみなさいと▲4八銀と繰り出した」。なるほど~。居飛車党の僕の感覚では、後手の飛車先の歩の交換は▲78金または▲77角で守り、▲66歩を指している以上▲78銀~▲67銀でまずは歩を支え、そのまま後手がしかけてこないようであればそのまま銀を伸ばして玉頭銀…じゃなくて角頭銀、みたいな対四間飛車戦で出てきそうな手が最初に見えてしまいます。でも、こういう抑え込み的な僕の感覚自体が振り飛車にそぐわないというか、居飛車党的なのかな?仮に「振り飛車にしてみろ」が右銀の狙いだとすると、相手が振り飛車メインの香川さんだからという駆け引きもあったのかも。じゃ、普通に居飛車で来られたら?やっぱり▲48銀は危険な手に見えたのですが…▲57銀以下、香川さんのように角を53に引かず、普通に後手が居飛車で飛車を活用しに来たとすると、△86歩▲同歩△同飛▲78金で、ここで角を53に引いては本譜とほぼ合流なので手を変えるとして、飛車先の歩を交換したことに満足して△82飛。ここで先手が場をおさめるなら▲87歩で一段落…かと思いきや、次に本譜と同じように後手の44の角を咎めて▲65歩で角をぶつけるのか!いやあ、右銀の攻撃参加は、振り飛車を誘発するどころか、後手が居飛車で指し継いだとしても先手満足の展開になるのかもしれません。先手が左辺を受けつつ44角を咎めに行く順しか考えていないのですが、他にも先手からは飛車を先に振るとか、振ってからら居玉を避けておくとか、色々とありそうですね。何となくですが、甲斐さんの指した▲48銀~▲56歩~▲57銀(もしかすると定跡?)は、44角を咎めるのであれば、後手が居飛車にしようが振り飛車にしようが先手不満なしの構想な気がします。この時点でやっぱり44角は作戦負け気味というか、既に負担にしかなっていないように見える…のは僕の形勢判断が甘いでしょうか(^^;)。。自然に33に引くようでは単なる手損、何やってるんだかわかりませんしね。つまり△53角は、良し悪しは兎も角、△44角の構想を貫いた手だったのかも。でもそれで悪いようなら、やっぱり△44角は作戦負けだよなあ…。)

▲65歩
 これはいずれ先手の攻撃の本筋となる手ですが、今やるのか!!次の△86歩が見えているというのに…。甲斐さんはかなり慎重な棋風という印象だったんですが、今日はかなり積極的。という事は、攻め合いになっても行けると見ているのでしょうか。

△75角▲58飛△86歩▲同歩△同飛▲76歩
 香川さん、明らかに攻めさせられてますね。しかし素晴らしいのは先手甲斐さんの▲76歩。一瞬なんだこれはと思ったのですが…ああああ、なるほどこれを△同飛として飛車筋が逸れてくれれば▲11角成が無条件に決まるのでほとんど先手勝勢というわけか!!いやいや、おっかねえええ。手なりで指したら最悪の事態になるところでしたね(^^;)。

△42角▲11角成△89飛成▲78銀△82龍▲21馬
 香川さんは冷静に角を引きましたが、それでも甲斐さんは角の成り込み、攻め合いを選びました!攻め合わないという手もあったと思うので、甲斐さんの読みを信じるとすれば、既に先手よし?実際、後手は龍を作ったとはいえ、馬のラインが利いていて、香も拾えずにすぐに自陣に引き上げました。いや~、序盤の香川さんの奇襲は失敗かな?

20151118女流名人リーグ_甲斐vs香川_力戦37手 少し進んで37手目盤面図。もっと超急戦、下手すると超単手数で決着するぐらいの将棋になる可能性すらあったんじゃないかと思ったんですが、意外といい勝負です(^^)。しかしここで香川さんが指した手は…

△52金右(38手目)
 うわ、手を戻しちゃったよ。。しかも、これはなんというか…僕には一手パスにしか見えませんでした。なるほど、意味としては▲55歩が案外厳しいと見たわけですね。しかし自陣に手を入れるなら中央で囲うよりも玉を寄せるべきの気がします。その前に、居玉のまま急戦を仕掛けた以上は、攻めの手から考えないとメチャクチャじゃないかい?▲55歩をケアしつつ攻めを継続するなら△44角以外にないというか、ひと目それしかない思いますが、そのあたりから考えないと嘘じゃないかい?なんかまずい筋があるのかなあ…。

▲77角
 あああ、先手に先に攻防の角を打たれてしまいました。えっと、これを受けるとすると…

△44角▲55歩△同角▲66銀△44角▲54飛
 いや~、先手から見れば変化の余地なしの一直線、これはもう先手良い気がします。だとしたら、ここで後手に違う変化があったかどうかという感じですが…ムズカシイ。すくなくとも、この順以外で▲33角成と▲55歩を同時に受ける筋があるようには思えません。だとしたら、やっぱり38手目で悠長に一手パスなんてやってる場合じゃなかったんじゃなかろうか。

 ここから先の香川さんの指し回しはなんというか…バラバラに見えました。僕はアマ3段程度なので、とても強いとは言えない棋力ですが、それでも僕と同じぐらいの棋力の人なら「これはちょっと…」とみんな言うんじゃないかと。結果、107手にて先手甲斐さんの勝ち!!

 う~ん、なんというのかなあ…。序盤で未開拓の戦型にチャレンジするのは素晴らしい事だと思います。この将棋、最初に△44角と指したときは、「おおお、これでどう攻めがつながるんだ?狙いは何だ?」と、ちょっと期待してしまいました。しかし終わってみると…香川さんの主張は何だったのか、僕にはちょっと分かりませんでした。細かい変化筋ではなく、こういう新戦型といってもいいほどの大きい所での新手って、中央の位と角筋を通すゴキゲン中飛車とか、居飛車に十分な形で組ませない形にできる藤井さんの角交換四間飛車とか、何らかの主張があってこそ、と思うんですよね。それであれば、その主張が成立するかどうかを精査するに値する棋譜となると思うんですが、こういう主張自体が何だったのかというものだと、ただこの1回の将棋だけのかく乱戦術にしかならないんじゃないか、と思ってしまいました。女流と言えどもお金を取って人に見せる将棋でこういう棋譜を残すって…。
 また、悪くなって以降の香川さんの指し手がちょっと…。龍を抜かれる順を覚悟しながら相手の角を抜きに行ったかと思ったら、それを取らずに受けの歩を打ったり、ふたつの戦場が一手を争う状況になっている時に、またしてもほとんど一手パスのような歩の突き出しをしてみたりという感じ。もしかすると複雑な局面を作り出そうとしたのかもしれませんが、しかし選択肢の増える局面を作るとか、相手が緩手を指したら速くなる順を用意するとかでないと、予想外の手を指したところで無意味なんじゃないかと。
 ひと月ほどまえも、香川さんは里美さんとのタイトル戦でいきなり奇抜とも言えそうな袖飛車を使ったものの、飛車を歩一発で止められ、単手数で仕留められてました。これも主張の見えない将棋のうえに、少し悪くなるとすぐデタラメに暴れに行っちゃってさらに悪くした将棋。ちょっとどうなのかな、と思いました。

 プロというのは、いくつかの意味があると思います。「その筋の達人」という意味と、「それでお金を稼いでいる人」という意味。将棋に限らず、スポーツでも音楽でも、プロというのは「その筋の達人」というのが絶対条件であって、「それでお金を稼いでいる人」という所は、絶対条件を満たした上での付加条件であると思っています。金物屋のプロが、ろくに切れもしない包丁を作っておいて、それを売ってお金を稼いでいたからと言って、だれもその人を「プロ」とは呼びたくないでしょう。音楽家だって、仮にその人がCDを売って生業にしていたとしても、彼の演奏がアマより下手だったら、だれも彼を「プロ」とは呼びたくないでしょう。AKBは音楽で稼いでいるという意味では、日本一のプロです。しかし、彼女たちの歌や音楽を「プロ」と思う人は少ないんじゃないでしょうか。では、将棋でお金をもらっている人は、どうする事がプロなのか。昔羽生さんが、「勝ち負けだけでいいならじゃんけんでもいい」なんて言ってましたが、これは至言だと思います。僕は、良い状況で終盤になだれ込んだ時の香川さんの将棋は凄いな、といつも思っています。でも、なんというかな…将棋なんて2回に1回は負けるのが普通のゲーム、負けてもいいと思うんですよ。また、勝ちに拘らないといけない大一番という対局も、中にはあるでしょう。しかし、そういう対局で、連続してこういう将棋を指されると…。
 羽生さんや康光さんみたいな手や順を発見出来ないとか、それは仕方がないと思います。しかし、もっと根本的な所…強い弱いではなく、プロは将棋をどう考えるべきか、というもっと大きなところを、もう少し考えて欲しいな、と思ってしまった一局でした。ああそうそう、この裏で、清水さんが渡部さんに完勝、里見女流名人への挑戦を決めました。おめでとうございます!!


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コメント

序盤構想 

△4四角は向かい飛車にしますよという手で
▲6六歩と現状先手の角が使えないのと▲7五歩と三間飛車を匂わせる手に呼応した
この場合端の交換も後手の得になっていて美濃にも組みづらい
だから三間飛車VS向かい飛車になると先手が不利になる
それを嫌って居飛車にして攻めるなら右銀ということで
振り飛車にしてみなさいと▲4八銀と繰り出した
それなら後手も居飛車で行くぞ飛車先を何で受ける?と問うたのが△8四歩
それに対して受けませんが何かと応えたのが先手という序盤の駆け引き
  • tibigame 
  • URL 
  • 2015年11月19日 23時27分 
  • [編集]
  • [返信]

Re: 序盤構想 

すばらしい説明、ありがとうございます!!


> △4四角は向かい飛車にしますよという手で
> ▲6六歩と現状先手の角が使えないのと▲7五歩と三間飛車を匂わせる手に呼応した
> この場合端の交換も後手の得になっていて美濃にも組みづらい
> だから三間飛車VS向かい飛車になると先手が不利になる
> それを嫌って居飛車にして攻めるなら右銀ということで
> 振り飛車にしてみなさいと▲4八銀と繰り出した
> それなら後手も居飛車で行くぞ飛車先を何で受ける?と問うたのが△8四歩
> それに対して受けませんが何かと応えたのが先手という序盤の駆け引き
  • ShougiX 
  • URL 
  • 2015年11月20日 11時51分 
  • [編集]
  • [返信]

 

コメントにもありますが△4四角は端攻めを睨んだもので
△3三桂〜△2五桂と2筋の飛車先の歩と相手から切ってきた7筋の飛車先の歩のニ歩を使って
一気に端を攻め潰そうという作戦です
▲7五歩△1四歩▲1六歩△5四歩▲6六歩△4四角のオープニングは
今年の第73期名人戦挑決-久保行方戦でも指されました
この対石田流△1四歩型はプロ棋戦で現在進行形で指されている戦型で
最近の棋書では『わかる!勝てる!!現代相振り飛車』『わかる!勝てる!!石田流』などでも紹介されています
2014年3月に放送された第64回NHK杯出場女流棋士決定戦-香川甲斐戦でもこのオープニングでした
今回とちょうど逆を持っていますね(その時はふつうに相振りになりました)
ちなみに相手から飛車先を切ってもらうときは▲7四歩には△同歩ではなく△6二銀として
▲7三歩成に△7三同銀とすれば次に▲7四歩で拠点は作られてもそれ以上は攻め手が続かなくなる寸法です
ただ飛車先の歩は先程書いたように端攻めの材料として逆用されてしまうので
相振りになった時は7筋の歩を簡単に切らないようにして且つ端攻めに強い金無双に構えるのが主流です
(先述の久保行方戦もそういう進行を辿りました)
今回のお二人の真意は分かりませんが△5三角は▲7五歩+居飛車であることを咎めに行ってるのかと思われます
仮にここで▲7八飛となっても端は睨んだままなので従来の進行に合流できますよね
(△5三角は従来の進行でも▲4五歩と角を追いにきた時に逃げ込む場所だったりします)

『聖の青春』では村山先生が何故女流の棋譜を並べるのか訊かれ
「これは趣味です」
「女流の棋譜は面白いんです。男のプロは手の殺し合いみたいな展開が多くて。
 ところが女流はやりたい手をすべてやる。攻め出すとどんどん手が伸びて、それが新鮮で」
と返答する場面が書かれています。
大きなお世話ではありますが
それはそれこれはこれともう少し緩やかに眺めてみてもいいのではないでしょうか
村山先生の言うように女流は女流で違った楽しみ方があると思います

余談ですが「▲8八飛」「△2二飛」は飛車が向かい合ってなくても向かい飛車と呼びます
  • 無記名さん 
  • URL 
  • 2015年11月22日 08時39分 
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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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