時間攻めについて

 竜王戦がはやめに終わってしまったので、しばらくタイトル戦がなくてつまらない(・_・、)。。今回の竜王戦を見ていて一番思った事は、持ち時間の使い方でした。切れ負けとか時間攻めというのは早指し戦だから起きる事であって、持ち時間が8時間も9時間もあるような将棋でそういう事が起きるとは思っても見ませんでした。しかし今回の竜王戦、第4局も第5局とも、森内さん優勢で終盤に入りながらも時間攻めに屈し、逆転負けした形。

 糸谷さんは、超早指しで有名。あれはある種の天才であって、ものすごい速さの思考速度でそうなるのだと思っていましたが、冷静に考えれば神経伝達物質の速度なんてそんなに誤差があるものとは思えません。違うのは、その情報処理の構造にあるんじゃないかと。あれは、思考そのものの速度ではなく、思考する対象を省略する事によって得られているんじゃないか、と。
 第5局、しばらく受けるしかない局面であると見るや、最善うんぬんよりも厚さを優先し、長手数になりそうな順を選んで即指し。「悪い時は、相手に間違えて貰うしかない。間違える要素は複雑であるか時間が無いかのどちらか。だったら、最善手云々よりも、複雑であり且つ時間攻めを狙う。手番が来たら、最善手よりも頓死筋が発生する形を狙いに行く」…勝手な私の想像でしかありませんが、まあこんな感じだったのではないかと。こう考えた時に、あの驚くべき早指しがレインマンのような異能が故ではなく、部分的な手筋を知っていれば指す事の出来る「時間攻め的な側面から見たタクティクス」であると説明できる気がします。

◆◆◆◆

 個人的には…僕みたいに遊びでやっている将棋では、指し手よりも勝負を優先してしかるべきだと思います。その一局が次に繋がろうが繋がるまいが、勝った負けたでオシマイにしても別にいいんじゃないかと。しかしプロ将棋に関しては、勝負よりも完全解に近づく一手を追及して欲しいと思う自分がいます。最善手の積み重ねを狙う将棋であれば、その対局の意味は「完全解にまた近づく」事であり、将棋の盤上のロジックに焦点が当たる事になります。しかし最善手よりも勝負を優先させてしまうと、その対極の意味は「勝敗」という事になり、盤上のロジックは二の次になってしまう。もし、その将棋が進化せず、例えばずっと横歩△45角戦法の良し悪しも研究される事がなく「勝った負けた」だけで同じ戦法が何十年と指し続けられるのだとしたら…それって「より良い手」「より良い戦略」が無いも同然になってしまうので、将棋の面白さの根本にあるものが消えてしまうと思うんですよね。というわけで、見る側の勝手な願望としては、プロ将棋は盤上のロジックを極めてほしいと思ってしまう部分があります。

 しかしプロ棋士は、将棋でメシを食っている人たち。羽生さんみたいな突出した人なら「勝負よりも完全解を…」なんて言っていられるかも知れませんが、他の人はそんな悠長な事を言ってられないのでしょうね。とすると、プロ将棋の指し方とは、「研究部分は即指し。研究から外れたら最善手と持ち時間の両方を見つめながら指す。研究から外れたら、良くなったら俗手で確実に仕留め、悪くなったら複雑な順を優先しての即指し時間攻め」という糸谷さんや渡辺さんのような指し方が行き着く先なのかも知れません。今回の竜王戦では、森内さんがそういう指し方をしなかったので時間攻めに屈する形となりましたが、もしプロ将棋全体がそういう指し方になったら、今回のような展開自体が成立しなくなる気がします。たんなる「勝った負けたの遊びに堕する時間攻め」はイヤですが、しかし「思考時間を必要としない研究手、思考時間を必要とする場合の最善手の選択/発見と時間のバランス」というのは、プロ将棋の構造自体によって既に発生する事になる指し方なのかも知れないなあ、と思わされました。
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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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