第64期王将戦 挑戦者決定リーグ 羽生善治vs三浦弘行 (角換わり相腰掛け銀同形)

 さて、竜王戦の裏では、羽生さんの通算1300勝のかかった一戦が行われていました。王将戦の挑戦者決定リーグで、つまり羽生さんには5冠へのステップでもあるわけですね(^^)。で、これがシロウトの僕にとっては驚愕の将棋で、特に終盤は鳥肌モノ。やっぱり羽生さんの終盤は剛腕すぎる…。

 とはいえ、定跡部分の掘り下げとなった中盤もすごかった!将棋は角換わり相腰掛け銀同形という、先手がいいんではないかという戦型に。ここに踏み込むという事は、後手の三浦さんにも研究があるんでしょうね。同形腰掛け銀と言えば、竜王戦の第3局でも森内さんが後手で同形に持ち込んでいたので、プロの間では、富岡流をはじめとする先手よしの定跡に対抗する手が水面下で進んでいるのではないかと。それとも、僕が無知なだけで、プロの若手の対局か何かで、有力な対策が既に出た、とかいう事があるのかなあ。

20141120王将リーグ64_羽生vs三浦_角換同形腰掛銀38手 盤面図は38手目、同形腰掛け銀になった瞬間です。ここから先手は「42173」と指して行けば富岡流まで一直線、それは先手よしのハズ。昔は「43172」の順での歩の突き捨てが本筋だったそうなのですが、しかしこれは途中で後手が6筋から反発できる機会を与える事になるので、そうなったそうで。しかし…後手から同形腰掛け銀にした将棋は、この半年ぐらいの間にも結構見てきたのですが、「42173」と普通に踏みこんだ将棋は、僕は渡辺さんぐらいしか見た事が無いのです(^^)。で、それはたしか▲渡辺さんが勝ったハズ。その時は、「定跡部分は考えずにどんどん指す」という渡辺さんらしいなと思い、しかも研究を用意してあるはずの後手を負かしてしまうのだからやっぱりすごい。でも、渡辺さん以外の先手は…「42173」を避けるんですよね。これはどういう理由があるんだろうか、やっぱり後手が何かを用意しているのは確実なので、それを避けているという事なんだろうか。で、本局は…

5歩△同歩▲5歩
 おお、羽生さんもやっぱり「42…」ではなくて「43…」と行きましたね。やっぱり42の順を避けるんだよなあ。ちなみに、竜王戦第3局での糸谷さんは、「41…」という、かなり変わった順で突き捨てに行ってましたね。あれは、歩の突き捨て順の理屈の勉強になりました(^^)。

△65歩▲同歩
 やっぱりか…。「43…」の順で突き捨てを入れてしまうと、ここでこの6筋からの反発があるんですよね。これは『これからの角換わり腰掛け銀』で勉強しました(^^)。本では、この反撃があるので、たしか2010年(あれ?2011年だったか?)以降はプロでは指されなくなった順だと解説してくれていたのですが、今年に入ってこの順に踏み込む先手を何回か見た気がします。しかし、こんなの羽生さんが分かってない筈が無いので、ここからの研究なり課題なりが羽生さんにも三浦さんにもあるんでしょうね。これは注目(^^)。

△86歩▲同歩△87歩▲同金
 おっと、△44銀じゃなくって△86歩なのか?!△86歩は、『羽生の頭脳4 角換わり』でしか見た事が無いぞ…。いやあ、羽生さんの1300勝の掛かった対局で、羽生さんの本の順で来るとは、三浦さんも粋ですね(^^)。

△75歩
 いやあ、この辺から記憶がボンヤリしていて覚えてないぞ。おかしいなあ、この変化は『羽生の頭脳』でかなり真面目に勉強したはずなんだけど…(^^;)。というわけで、ただ今カンニングしたところ、『羽生の頭脳』では△75歩に代えて△35歩でした。そりゃ覚えてるはずないな(^^;)。

▲66角
 つまり、僕が知っている範囲の定跡で言えば、先手持ちで言えばここから未知の領域という事になるわけですが…もうこの手からしてプロはすごいと思っちゃいます。だってこれ、後手が6筋から反発してきたわけですから、次は△65銀▲同銀△同桂、みたいな順を普通に想像しますよね。で、その時に銀を避けると角換わりの弱点である右桂に向かって自陣角を打ち込まれたら、先手潰れにしか思えません。そうではなく、仮に△65桂から入ったとしても、けっこう怖くないかい?というわけで、その瞬間に銀を見捨てて反撃するという事になると思うんですが…いやあ、駒がぶつかってまだ数手だというのに、こんな所からもう危険な所に踏みこんで勝ちに行っちゃうのかと思うと、やっぱりプロは凄いな、と(^^;)。

△44角
 うわあ、三浦さんもすごい…。先手の角のラインがやばい事になっちゃう順というのでも見つけちゃったんじゃないかと思うのですが(僕にはわからん(゚∀゚*))、すごい所に角を合わせました!いやあ、これもさっきと同じ理屈で、▲45桂と飛び込まれたらどうするつもりなんだろうか…

▲45桂△66角▲同銀△44銀
 あ、なるほど、角を消してから銀上がりでいいのか、アホだな俺…。要するに、場を収めようという手だったんですね。これでけっこう通常の角換わり腰掛け銀的な局面に落ち着いたように見えます。ただし手番が先手なので、今度は先手が後手の右桂を狙う自陣角とか、木村定跡に近い形での崩し方とか、ちょっと先手が先制しそうな気はします。というところで、…

▲24歩△同歩▲22歩△同玉
 歩を使って歩を吊りあげ、玉を引っ張り込んで…

20141120王将リーグ64_羽生vs三浦_角換同形腰掛銀59手▲46角(59手目盤面図)
 うわあ、弱点の右桂と吊り上げた2筋の割り打ちかあ…。構想は素晴らしいと思うんですが、角の位置がおっかなすぎ(^^;)。もう少し安全に▲34歩みたいな手だと…今度は後手から飛車取りの角の打ち込みが速いのか。一手遅いとすべてひっくり返るのか、ギリギリだな…。危なく見えて実はこの一手なのかも。で、ここからが凄い!

△51角
 三浦さんは、△62金みたいな手でまずは桂を守って…みたいなまどろっこしい事をせず、角打ち一発で73と24を同時に受けました。いやあ、指されてみれば手筋中の手筋、綺麗に受かったようにも感じたのですが、以降の羽生さんの攻めは全て手抜く事が出来ないので一直線。

▲25歩△同歩▲34歩△43金右▲33歩成△同桂▲同桂成△同金寄▲36桂
 う~~ん、ここで手番が後手に渡ったとはいえ、これはすでに先手がかなり良いんじゃなかろうか。よくあるのは△85歩からの反撃ですが、自陣角を打たされた分だけ、後手の攻めが細すぎる気がします。いやあ、ここまで三浦さんが何か悪い手を指したようにはまったく見えないんですが、わずかな先手の利を生かされ、それをぐいぐいと拡げられてしまったような…。これは素晴らしい中盤術だと思いました。すげえ…

20141120王将リーグ64_羽生vs三浦_角換同形腰掛銀78手 盤面図は78手目、先ほどの渡った手番で綺麗な反撃をした三浦さんですが、やっぱり少し足りない感じ。桂の打ち込みで金取りと玉頭への利きを作られたこの盤面図、僕的な常識では▲59金なり▲68金なりと金をかわす一手!他の選択肢なんてありえねえ!!しかし羽生さんの指し手は…

▲36桂
 うおおお~~、攻め合いが正着なのか!!!で、ここから芸術的な棋譜が…

△45歩▲64角△78銀▲68玉△34金▲53角成△65銀▲43銀(金取りの割り打ち)△同金▲同馬△69銀打(詰めろ?)

 いやあ、これはどちらも最善手を指し続けているんじゃないかと思うほどに綺麗すぎる…。しかし、△69銀打ちは次に△58銀成▲同飛△67金以下詰みそうなので、多分詰めろですよね?で、普通なら▲59金と下がって詰めろ逃れにしそうなものですが、羽生さんは…

▲65銀△同桂▲同馬△
 うおお、銀を渡してでも根元から刈るのか?!!いやあ、玉を銀でグルっと囲まれ、さらに金が質駒の状態で銀を渡す順を選ぶか?信じられん…

20141120王将リーグ64_羽生vs三浦_角換同形腰掛銀100手 そして、クライマックスです。盤面図は100手目、三浦さんは(僕の計算が正しければ、ですが^^;)詰めろを連発して追い込み、また銀を寄せる事で先手玉の右辺脱出を塞ぎはしたのですが、先手の馬が攻防に利きすぎていて、これは先手が良さそう。とはいえ、▲24歩の詰めろみたいな手だと、△76銀打で先に王手をされて馬を抜かれて紛れるし、いきなり勝つのは難しそう。こういう所こそ森内さんのように▲77金と盤石にしておいて安全勝ちがベスト、と思えるのですが…

▲23銀

 うそでしょ゜Д゜ヾ、王手から入ったああああ!!これ、もしかして必至なのか?

△同玉▲35桂△同金▲24歩△同角▲32銀△同飛▲同馬
 やべえ、マジで連続王手が入ってるぞ…

△34玉
 なぜ自然に見える△同玉でないのかというと…考えてみたんですが、▲24桂以下、手数こそ長いものの詰んでしまいます…

▲43馬△23玉▲22金

ここで三浦さんが投了。113手にて、先手羽生さんの勝ち!!

 以下、どうなるかというと、△同玉▲21飛と入って、(1)△13玉なら▲24飛成△12玉▲21馬、(2)△12玉なら▲24桂△13玉▲31角△22合駒▲22同飛成、までです。というわけで、本譜の寄せは19手詰めだったんですね、すげえ。でも、▲23銀は本当に必至だったのか、三浦さんに逃れるすべはなかったのか…いろいろ考えてみたんですが、一番粘ると31手ぐらい粘れる気がするんですが、自玉が詰む詰まないの状況、先に詰めろををかければ馬を抜かれるという所の先まで考えなければいけないという状況から、これが簡単な直線的な31手詰にはとても思えず、ムチャクチャ難解に思えます。だいたい、初手23銀自体が全く思いつかない…。時間がたっぷりあって、しかも相手の寄せだけを考えられる詰め将棋ですらこれを解くのは難しいと思うのですが、攻防一体の寄せ合いとなった本将棋の終盤で、しかも強引に寄せに行かなければならない状況でもない所からのこの踏み込みは恐ろしすぎる。
 アマチュアとはいえ、将棋をやってなかったらこれだけ凄いものを楽しむ事が出来なかったと考えると、将棋を趣味にしてよかったと思ってしまいました(^^)。しかし、羽生さんはちょっと神がかってるな、1300勝のかかった対局でこんな事やっちゃうんだから…。
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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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