『中飛車破り 一直線穴熊 徹底ガイド』 高見泰地

NakabishaYaburiAnaguma.jpg 角道オープンの中飛車「ゴキゲン中飛車」対策の本です。定跡化されているゴキゲン中飛車対策というのは、現在主流となっている超速▲3七銀、最初の対抗策だった▲5八金右超急戦などがあるようですが、この本は居飛車の戦法を穴熊に特化しています。それだけに、内容を濃く出来ている感じです。本の構成は…

 序章:居飛車穴熊の簡単な講座
 1章:先手番でのゴキゲン中飛車対策
 2章:後手番でのゴキゲン中飛車対策
 3章:実践編

 という形です。で、私はまだ第1章しか読んでいないので、今回は第1章だけのレビューです(^^)。

 第1章の後手ゴキゲン中飛車対策の章は、大きく振り飛車側が美濃囲いで戦う場合と、振り飛車穴熊で戦う場合のふたつに分けて書かれています。ここで一直線に穴熊を目指す居飛車の指し方として、本書はふたつの点に注目して書かれているのではないかと思いました。ひとつは、どういう順で穴熊に囲いに行くのかという事。もうひとつは、いくつかある振り飛車からの仕掛け筋に、居飛車はどう対応するのかという事、です。で、この振り飛車からの仕掛け筋が丁寧に書かれていて素晴らしい!!振り飛車が銀を54に上げてくる指し方、64に据える指し方、飛車を7筋に振り直してくる指し方、飛車を54に浮いてくる指し方、51の定位置に構える指し方…振り飛車の構想は様々ですが、僕はネット将棋や道場で指していて、この本に出ていない振り飛車の狙い筋を食らった事は無い気がします。というわけで、対ゴキゲン中飛車戦では何を研究/対策しておけば良いのかが分かる、という点がとにかく素晴らしすぎると思いました。これさえ分かれば、後は自分次第で何とかなる気がする(^^)。

 そんなわけで、本全体のおすすめポイントから。まず単純に、「そもそも、ゴキゲン中飛車対策に穴熊が最良の選択なのか?」という所から。僕は現在、千駄ヶ谷で道場3段ぐらいのレベルの人間なので、この自問に明確な解答を出せる棋力がありません。しかし、羽生さんやA級棋士といったトッププロの人たちは、(少なくとも先手番では)居飛車穴熊ではなくて超速▲37銀で戦っている(という事は、トッププロは穴熊よりも急戦の方が中飛車を潰しやすいと考えているのではないかと思われる)、という事を知っておく必要があるかと思います。級位の頃、ゴキゲン中飛車に手こずってきた僕は、▲58金右超急戦→超速▲37銀→一直線穴熊、というように戦型を変化させてきました。「▲58金右急戦や超速▲37銀は、ある程度の棋力が無いととても指しこなせない!」と強く感じたのです。僕が対ゴキ中戦で一直線穴熊のようなものを使い始めたのは、37銀も58金右もあまりにやられまくるので、『羽生の頭脳2 振り飛車破り』に載っていた、角道を閉じるタイプの中飛車戦に対する居飛車穴熊をアレンジして使ってみたのが初。村山慈明さんの名著『ゴキゲン中飛車の急所』に出会ったのはその後です。そして、ネット将棋の81道場で、観戦者の方も含めて、ゴキゲン中飛車対策を色々と教えて貰った時に、一直線穴熊とこの本を推薦してくれた四段の方がいまして、それがこの本との出会い…となりました。きっと、中飛車に苦戦しておられる級位者の方は多いのではないかと思うのですが、そういう方には、僕も一直線穴熊をおススメしたいです。級位ぐらいだと、中終盤でどうしてももたついてしまうと思うのですが、超速▲37銀とかだと、攻めあぐねると損してしまうのは居飛車側のような気がします。しかし居飛車穴熊だと、もたつくほど得するのは居飛車…そんな感触があります。
 次に、振り飛車が先手番でも角道オープンの中飛車を指してきたら、居飛車はどう受けるべきか…という問題があります。この前の王座戦で、豊島さんが先手中飛車を採用、急戦で対応しようとした羽生さんを倒した一局がありました。振り飛車退治のエキスパートの羽生さんですら、先手中飛車を急戦で倒すのは難しいのかも、と思わされる一局でした。実際、現在のプロでは、角道オープンの先手中飛車に対しては、居飛車は穴熊で対応する事が多いそうです。というわけで、対中飛車用の穴熊は、どのみちいつかは勉強しなくてはいけない。だったら、色々な序盤定跡の勉強が間に合わないうちは、先後関係なく中飛車には穴熊だけで対応しておく、というのが最も効率的に思えるのです。そして、対ゴキ中で一直線穴熊を特化して扱った本はこれしかないと思うので、穴熊を指すなら選択の余地なくこの本を読むべし!…となった訳です(^^)。読みやすいし、振り飛車からの主な攻撃筋にはひと通り触れてあるし、ココセみたいな書き方はしていないし、説明は丁寧だし…というわけで、僕はこの本に対して、不満はありません。

 とはいいつつ、注意点も(^^;)。これはページ数の都合でどうにもならない事だと思うのですが…説明されている変化に関し、「ここ、振り飛車が4筋突破を狙ってきた場合はどうなるんだ?」とか、「あら?手順を入れ替えたら、振り飛車有利になるんじゃないか?」とか、「ここで桂を跳ね出されたら?」…みたいに、疑問に感じてしまう局面がそれなりにありました。思うに、この本はあくまで基本的な定跡筋の分岐を押さえていく感じの、ゴキ中vs居飛車穴熊戦の基礎を作り上げる本であって、『これからの角換わり腰掛け銀』みたいな、アマ低段レベルでは突っ込みどころすら見つけるのが困難なほどの重箱の隅まで配慮の行き届いた本、というものではないと思います。初段以上になった方でも、一直線穴熊を学ぼうと思ったらこの本以外に選択肢はないと思うのですが、しかし実践レベルで使える定跡を構築するには、この本に頼るだけではちょっと危険で、ある程度自分で研究する必要が出てくる気がします。僕はその研究に3~4か月を費やしてしまいました(^^;)。また、僕みたいに、プロ棋戦はタイトル戦とNHK杯とA級順位戦ぐらいしか見ない…みたいなライトユーザーだと、なかなかプロの一直線穴熊の棋譜を見る事が出来ないので、自分で研究するしかない…というのも、一直線穴熊を選択する場合のマイナス面かも知れません。超速▲37銀であれば、けっこうプロの指し回しを参考に出来るんですよね。そこは、マイナス面と言えばマイナス面かも知れません。
 もうひとつ。この本、振り飛車からの攻め筋が、流れで分岐していく感じに書かれていて、「△5三銀型」「振り穴△7二飛型」みたいな感じで名前が付けてあるわけではありません。僕は序盤定跡の勉強の時に、とにかく分岐図を頭の中に作り上げるのに苦労するタイプの人間でして(^^;)、綺麗にインデックスをつけて頭の中に分岐図を描いていかないと、うまく覚えられないのです…。というわけで、もうすこし覚えやすいように工夫して書いてくれたらより助かったな…とは思ったのですが、それぐらい自分でやれって話ですよね(._.〃)ゝ。

 色々書きましたが、対居飛車戦よりも対振り飛車戦に苦戦している居飛車党の僕ですが、この本を読み、またそこに少しだけ研究を加える事で、後手番ゴキ中戦に対してはメチャクチャ自信が出ました。対ノーマル四間飛車戦よりも自信があるかも。角道オープンの中飛車対策に苦慮していた自分には、救いの一冊でした!!大おススメ!



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お久しぶりです(^ ^)

こんばんは。毎回、記事を拝見し参考にさせて頂いております。もう千駄ヶ谷で三段レベルになられたのですね。私も中飛車に苦戦している居飛車党ですが、オススメのこの本は本当に良書だと感じました。組み方の注意点も大事ですが、大切なのは振り飛車側の狙いと居飛車側の攻めの構想。マスターすれば実戦でかなり使えると思いました。私は「遠山流 中飛車 持久戦ガイド」と「遠山流 中飛車 急戦ガイド」の2冊も読んでみましたが、この中にも一直線穴熊の変化が出てきます。変化手順や狙い筋は似たようなものでしたが、この本は若干ですが中飛車有利の変化が多いように思います。結局先手中飛車に対しては居飛車は穴熊しかないのだろうか。急戦は本当に不利となってしまうのだろうか。これが現在の私の中の課題です(^^;;

話は変わりますが「角交換四間飛車破り 必勝ガイド」(石田直裕四段)はもう読まれましたか!? この棋書は私の中で今年のNo.1でした。これは四間飛車というよりも向かい飛車からの逆棒銀に強くなれます。以前に記事で言われてましたね。逆棒銀には▲3六歩と。私もそうでしたが実は▲4七銀型が万能であらゆる変化に対応できることが書かれています。恐るべし奨励会三段陣の研究量ですね。長くなりましたが今日はこの辺で失礼します(笑)

ではお身体には気をつけて(^-^)/

Re: お久しぶりです(^ ^)

ZERO様、どうもお久しぶりです。書き込み、ありがとうございます!

> 私は「遠山流 中飛車 持久戦ガイド」と「遠山流 中飛車 急戦ガイド」の2冊も読んでみましたが、この中にも一直線穴熊の変化が出てきます。変化手順や狙い筋は似たようなものでしたが、この本は若干ですが中飛車有利の変化が多いように思います。

 なるほど、その本も気になっていたのです。実は僕も、後手中飛車が有利になるとしか思えない変化がありまして、ちょっとその辺りがモヤモヤした状態なのです。貴重な情報、ありがとうございました!

> 結局先手中飛車に対しては居飛車は穴熊しかないのだろうか。急戦は本当に不利となってしまうのだろうか。これが現在の私の中の課題です(^^;;

 戦場の近さが中飛車戦の嫌な所ですよね。これが四間や向かい飛車だと、と金を作られても居飛車の方が断然速いのですが(^^;)。豊島さんの先手中飛車の棋譜は研究する必要があると思っているのですが、時間が無い…。

> 話は変わりますが「角交換四間飛車破り 必勝ガイド」(石田直裕四段)はもう読まれましたか!? この棋書は私の中で今年のNo.1でした。

 ああ、それですか!!僕が角交換四間飛車の研究に着手した時には、この本はまだ出ていなかったんです。で、勉強がひと段落したところでこの本が出たという流れで、バッドタイミングでした(>_<)。というわけで、ずっと気になっています。私は門倉さんの本で勉強して、やはり▲47銀型を基本的な構えにして、向かい飛車に振り直された時は飛車先の歩も25で留め、いくつかの有名な筋は詰みまで研究済です( ̄∀+ ̄)=3。▲47銀型にして以来、勝率は悪くないです。
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駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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