第62期王座戦 第5局 豊島将之 vs 羽生善治 (横歩取り)

 羽生さんの圧勝で終わるかと思った王座戦ですが、豊島さんが見事な反撃でタイに持ち込み、ついに最終戦にまでもつれ込みました!!おそるべきは第4局で羽生さんを破った豊島さんの先手中飛車。豊島さん、先手中飛車ではなんと負けた事が無いそうで…。いやあ、これは振り駒で豊島さんが先手になると、もしかしてもしかするぞ…と思ったら、振り駒の結果、羽生さんの先手。いやあ、この振り駒はかなり大きい気がします。そして、将棋は横歩取りへ。これが、超絶に面白い将棋になりました!!

20141023王座62-5_羽生vs豊島_横歩23手 まず、お互いの囲いが面白かったです。先手の羽生さんは、玉を58ではなく68に!これは山崎流なんかの解説が詳しく書いてるちょっと古めの定跡書でよく見ましたが、玉が戦場に近づいてしまうし、今では下火になった囲いと思っていたのですが。そして、豊島さんも…

△72銀
 美濃狙いか?!しかし、いきなり△62玉とせずに△52玉~△72銀という手順になったという事は、先手の▲68玉を見ての方針転換?この形で美濃にすれば、玉頭から潰される危険は少なそうだし、そうであるなら左辺からのサイドアタックに対しては中原囲いよりも美濃の方が守りやすいという大局観…なのかな?しかし、電王戦以来、横歩の後手が美濃を狙う事が増えましたね。このために、僕が一生懸命勉強した横歩の定跡の半分が使えなくなってしまった(・_・、)。ソフトの奴め…

▲48銀△94歩▲16歩△23銀
 先手▲48銀は、68玉型中原囲いに行くのか、それとも銀を繰り出して攻撃に使うのか。しかしその方針が見える前に端歩の突き合いになり、かつ大流行の△23銀へ。これは先手は色々な所で手が間に合わない感じ、飛車ぶつけが見え見えなので、はやくも右銀の方針が問われる展開かも。

▲36歩
 おおお~、やっぱり右銀を攻撃に使いますか!!プロは強い手を選ぶんだよなあ。しかしこれ、先手は玉形の整備を狙う順を探しながらの展開が確定となりそうですが、それはかなり辛い将棋になりそうな気が…。

△24飛
 ぶつけてきたああ!!!これは▲25歩で受かりますが、それは後手の注文通り。▲同飛が通るなら取ってみたい。仮に▲24同飛△同銀▲38金なら?…だったら▲36歩を突かない方が良かったのか。じゃ、▲24同飛△同銀から角交換の▲33角成△同銀は?…いやいや、これは先手が右辺も左辺も整備しなくてはならなくなって忙しすぎる。

▲25歩△74飛
 というわけで、ここは辛抱の▲25歩でしたが、後手はこの当たりを打たせてからの△74飛。これは次の△76飛を受ける▲35歩の一択、これは完全に豊島さんの注文通りの展開なになったな、と思ったら…

▲37銀
 うおお、羽生さんが反発、受けずに銀の進出を優先させたああ!!!いやあ、これはどういう事だ?…そうか、36の歩に紐をつけておいて、いかにも飛んで来そうな△76飛に対しては、飛車の横利きが切れた瞬間の▲24歩の突き出しか?!

△62玉
 全然違った( ̄ii ̄)ハナジ。。仮に△76飛としてどうだったのかは分かりませんが、後手の豊島さんはそれを危険と見たか、一転して玉を美濃囲いの中に入れに行きました。まあどこかで玉型の整備に着手したいので、悪くないタイミングとも思えたのですが…

 この後、豊島さんは美濃囲いに成功、しかし羽生さんは壁形のまま。これで豊島さん十分と思ったのですが、豊島さんはそこから踏み込むことが出来ない。これは、羽生さんの守りが上手いのか、豊島さんが攻めあぐねているのか…。検討しているプロ棋士さんたちの見解では、「後手の方が手段が多いが、良くするのも大変」という感じ。この時に思い出していたのが、昔に羽生さんが言っていた言葉でした。羽生さんが若い頃、谷川さんと竜王位(?)をかけて戦った時に、「駒が全然前に進まなくなってしまった」事があったそうで。あの羽生さんですら、大一番のプレッシャーで、全く踏み込めなくなってしまうぐらいに、タイトル戦のプレッシャーというのは大きいそうで、もしかしたら今日の豊島さんもそうなのかも。そして、受け一方の手しか指す事の出来ない羽生さん、53手目についに壁形を解消!!71手目で攻めの右銀が遂に始動!!いやあ、早期決着の横歩取りで、勝負形に持ち込むまでに70手超か…。辛抱に辛抱を重ねた苦節70手、ようやく勝負できる形を築いてからの、ここからの羽生さんのまくりが凄かった!

20141023王座62-5_羽生vs豊島_横歩74手 盤面図は74手目、これが横歩取りの盤面図と言われても誰も信じないような居飛車vs振り飛車の形になっていますが(^^;)、これは先手不満なしまで来ているんじゃないかと。それどころか、既に逆転している?ひと目、先手からは角筋を通しての端攻めが決まりそうですが、後手はそれこそ角道止めての振り飛車的なカウンター狙いしか攻め筋がなさそう。そして…

▲14歩△同歩▲56歩△24歩▲12歩△同香▲13歩△25歩▲12歩成

 うわあ、端攻めが思いっきり決まっちゃいました。それにしても、露骨に▲14歩から入ったなあ…。しかしこれを防ぐ手だてが後手にはない。となれば、破られる間に反撃筋を用意しておきたかったところですが…これはなす術なしなんじゃないだろうか。

△33桂
 なるほど、桂を逃がしながら中央に跳ね出して、というところですが、せめて後手の飛車が5筋にいれば。しかし今から5筋に振り直したら▲45銀で終了。羽生さん、勝負形にしてからの踏み込みが凄すぎる。。

▲55歩
 いやあ、延々と決められていた5筋の位をここで解消!4~5筋の位こそが豊島さんの主張であったのに、これで後手の桂の跳ね出しも怖くなくなってしまいました。いやあ、この終盤での羽生さんの指し回しは絶品でしょう…。この前の竜王戦での森内さんの中終盤術もすごかったけど、これもすごいな…。

△57歩
 う~ん、これは「間違えたら寄せますよ」というひっかけかとは思うのですが、裏を返すと、こういう手を指さざるを得ないぐらいに豊島さんは自分が悪いと感じているんだろうな。それにこれ、▲同角でなんでもないような気が…。

 というわけで、ここから豊島さんは根性の寄せに行きますが、羽生さんはこれを寄せ合いに行かずに全部面倒を見て受け潰し。これにて羽生さんの勝ち…かと思ったら、羽生さん、最後の最後で手抜いて攻め合いに行った?!うおお、これはまずくないかい?羽生さん、受け間違えた?!で、このあたりでお互いが持ち時間が少なくなっての早指し戦に突入!!ここから、とんでもない寄せ合いの将棋が始まってしまうとは…。

20141023王座62-5_羽生vs豊島_横歩106手 まずは、終盤が紛れる事になってしまったと思われる、(10/25修正:その後、非常に強い方を含めて長時間に渡って検討したのですが、実はこれが素晴らしすぎる踏み込みだったのではないかという事になったので訂正させていただきます)羽生さんの107手目。豊島さんは、アマチュア弱小の僕から見てもはっきり悪い感じ、しかし攻めを止めた時点でオシマイなので、無理攻めや、強引な手作りを連発。タイトル獲得へのすさまじい執念ですが、この106手目は、さすがに強引な歩の突き出しというか、これを手抜いて攻め合いに来てくれれば、△47歩成で飛車を追うなり、△45飛で角道も通して面白い筋になりそう、という事なんでしょうが、▲同歩で完封負け、と思ったのですが…

▲95歩(107手目)
 おおっと、羽生さん、ここで攻め合いに行った?!いやあ、こういう信じられない踏み込みが間に合っちゃうのが羽生さんの怖さですが、しかしこれ、大丈夫なのか??これ、シロウトなら絶対に▲同歩なので、強い人ならではの読み抜けがあったんじゃないかと思うのですが…(10/25追記:これも同じ理由で、相応しくない見解だったと思いました。というのは、この踏み込みが素晴らしかったかどうかは、ここで手抜いての攻めから後手玉が寄るかどうかにかかっていると思うのですが、先手のほうが速いみたいです。この根拠は、恐らく最善であったと思われる豊島さんの112手目△56角の王手を合駒した瞬間(羽生さんは桂合を選択。しかしこの状況で桂を渡すというのは相当に怖いと思うのですが、しかし香を残すという意味からの選択であったとすれば、これも秒読みの中でものすごい判断力と戦慄してしまった…)が何手空きになるのかという所に掛かってくると思うのですが、その次に後手から王手が無く、1手空けての詰めろもない(例えば114手目の△92歩の守りに代えて△57金みたいな寄せでは、その瞬間に▲93銀から寄り筋、王手となる△67角成も▲同玉で継続手なし、△68金も▲同銀で金損の上に合駒に銀の紐をつけられてしまう、△88金から馬を作る手も▲同玉△87角成の瞬間が王手にならないというのがミソで、その瞬間に▲93銀が入ってしまうのでアウト)。というわけで、受けに対する読み筋は、攻防手さえ気をつければ、先手はここ迄の読みで充分、先手は受けの検討を打ち切ることが出来ます。そこまで読めれば、1手空きを継続して後手玉を追い込むことが出来るのかどうかという攻めに対する終盤問題だけに頭を使うことが出来る、というのが羽生さんの計算手順だったのではないかと。で、羽生さんの場合は、それが出来ると判断できたので(アマチュアの僕が天才のアタマの中は理解できるはずもないのですが、この後に続く分岐筋から判断するに、それでも羽生さんが寄せを読み切っていたとは信じられません。だから、この段階でも「詰み筋はあり、少なくとも2手空きの自陣よりも後手玉の寄りのほうが速いだろう」ぐらいの感覚的な判断だったのではないか)、この踏み込みにつながったのではないかと。「1手でも速い寄せ」と「安全勝ち」のどちらを評価するのかは、僕は難しい問題であると思うのですが、これって現在大流行の、コンピュータ将棋のような「数字で表す評価」という仕方が相応しくない事項と思えます。谷川将棋以降の「現代将棋」的な感覚でいえば、勝ちが見えた瞬間に踏み込んで勝ってしまうのがより価値が高いという判断基準から選択したと思われる今回の羽生さんの踏み込みは、その基準では「最善」なんだろうな、と思います。しかし安全勝ちを狙って自分の負けを消せるのであれば(実際、106手目△46歩に対して単に▲同歩と取った場合、有段者の方と相当色々と考えたのですが、後手の豊島さんの攻め筋は殆ど途絶え、完全に受け潰しとなったようにしか思えませんでした)、それが鋭い踏み込みよりも悪いのかというと、とてもそうは思えません。これは、数字で「こっちは+1000でこっちは+1100」とか、そういう平面的な評価の出来る事項では無いのではないかと。しかし、「凄さ」という事でいえば、羽生さんは「寄るだろう」「少なくとも、自玉の寄りよりもこちらのほうが速いだろう」という見当が立ったから踏み込んだわけで、その見当が立ったという時点で「凄い」としか言いようがないと思いました)

△45飛
 これはちょっと紛れちゃったんじゃないかい?▲95歩と突きだした以上は手抜いて▲94歩の詰めろと行きたい所でしょうが、それは△35角が角を抜きながら玉の逃げ道も用意、攻め筋まで用意する絶好手になっちゃいそう。これは▲71角成で王手をかまして手番を渡さずに行きたいところですが、こういう複雑な局面にしちゃうなら、受け潰しの安全勝ちを狙った方が良かったんじゃなかろうか…。

▲94歩
 うあああ、▲71角成までスルーして踏み込んだああ!!…序盤定跡の勉強が停滞気味の僕ですが、詰め将棋や終盤術の勉強は毎日コツコツ続けていて、終盤は結構自信がついてきているのですが…これが寄るとはどうしても思えない。羽生さん、最後の詰めの段階で、連続して間違えたか?信じられない、この前の竜王戦の挑戦者決定戦といい、去年までの羽生さんでは、こういう崩れ方は見た事が無かったぞ…。(10/25訂正:訂正だらけで申し訳ありませんが(^^;)、これも「速い寄せ」という観点から言えば、ほとんど最善手に近い手かと。)

△35角▲同飛△56角▲67桂
 あら~、完全な寄せ合いになっちゃいました(^^;)。いやあ、これはどっちが勝ったか分からないなあ。▲67桂の合駒も、秒読みに追われて放り込むように指したとの事なので、これは既に早指し戦に変わってますね(^^;)。

△92歩
 おっと、今度は豊島さんがタダの飛車を取らずに受けた?!受けないと寄っていたのか?これは秒読みならではの怖さなんでしょうね、すげえ将棋になったな…。(10/25追記:この豊島さんの着手は見事としか言いようがありませんでした。というのは、ここで△35飛で飛車を外してからの△39飛成は決まれば即死ですが、93の地点への先手の攻めが強力すぎて、▲93銀を指されてしまう事になるので、△39飛成を指せる日は永遠に来ない事になります。これが見えていなかったら、そもそも羽生さんは危険な後手からの攻め筋を手抜いてまで9筋攻めに踏み込んではいないわけで、ここでは豊島さんは何らかの方法で9筋を攻めを1枚減らす必要がある。本当なら9筋のどこかに中合してから王手香取りと出来る筋でもあれば良かったのですが、それはなさそう。結局は△92歩が最善と思えるのですが、悪いとみて攻め合いに踏み込んで、しかも持ち時間もなかった(既に1分将棋になっていた?)という状況で、ここで手を戻して受けに回ることが出来るという冷静さが凄い。)

 このとんでもない大混戦の寄せあいから、さらに20手以上の斬り合いが続き、いよいよ本局のクライマックスに!!いやあ、この寄せが凄すぎた!!!

20141023王座62-5_羽生vs豊島_横歩136手136手目盤面図、先手は手番ですが自陣がまたもや壁形、今日の羽生さんは壁に祟られてますね(^^;)。それだけに、全ての筋を読んでいる時間のない1手1分の早指しでは、一気に寄せに行きたいところだと思うのですが…(10/25追記:136手目盤面図の直前、ここに至るまでの経過は、先手の龍が93にいる状況から、△82銀と銀を貼って龍を追い返そうとし、しかしそれを羽生さんが▲88同龍と龍捨てで弾き飛ばして△88同玉という展開。この▲88同龍の踏み込みを、渡辺明さんをはじめとしたプロが絶賛しているのですが、僕には当然ありうる一着と思っていて(^^;)、ブログには書かなかったわけです。▲88龍の凄さというのは、「龍を切るのは良いが、それで次にどういう寄せ筋があるのか?」という所にあるんだと思います。で、多くのプロの方が指摘していた龍引きは、それでも先手玉が寄らないという計算が出来ている、というのと「88同龍からの寄せが見えなかった」というふたつから導かれているのではないかと。僕みたいなアホが「龍切りは普通」と思ってしまうのは、1分将棋の中で、自玉が「何手空きで危険なのか」が計算できていないので、手が続くかどうかも漠然としたまま連続王手から考えてしまい、且つもし連続王手なら▲88同龍が最善であるから。僕と同じように、▲88同龍から考えたアマの方も、それなりにいたんじゃないかと。しかし、高段の方になればなるほど、その凄さがわかる、という事だったんじゃないかと。それでも僕ぐらいの棋力の人が「龍引きは怖い」と感じるのにも理由はあって、仮に龍を94(or 95 or 96。97は蓋をする事になるので怖いので、攻めを考えれば94あたりが自然?当たりまで読むなら95の方が良いという事もあり得る?)に引いた場合、後手には△57桂成があって、これが△67成桂以下の詰めろ。この詰めろを解くには6筋に駒を投資する必要があり(▲68銀引でも受かる?しかし、受けに手を回すとその手と引き換えに△59歩成や△47歩成と、後手からどんどん攻め駒を増やされて相当危険になるように見えるので、読み切れなければ1枚駒を投資して置きたくなるのが自然に感じる…)、それこそこれは1手差の寄せ合いという状況になってしまう。というわけで、実は龍捨ての踏み込みというのは、▲91銀を含めた王手をしながらの寄せが見えているのであれば、実は2手空き以上をキープしたままの安全策…という計算だったんじゃなかろうか。それが、あの▲91銀につながった気がします。)

▲91銀
 アアアアア!!!なんだこりゃ~~~w(゚д゚* )w
!!!いやあ、△同玉と取らせてから、歩の連打で引っ張り出す?…いや、全然無理だな。△同玉から頭を押さえる?いやあ、まったく分からないぞ…
(10/25追記:この銀打ちを見た時の衝撃は忘れられません…。しかし、感想戦での羽生さんの「▲93銀のほうが明解」という発言も、相当に深い…。ここでの先手の寄せの考えは、「2手空きをどう活かすか」に絞られるんじゃないかと思います。必至筋は無いので、連続王手から詰めろ、が理想だと思うのですが、ここで王手をするには横に聴く駒を用いるしかないので、銀打ちから入るしかない。ここで一手空けて9筋に香を貼る手だと?いきなり△57桂成?それとも中合の歩で呼んでおいてから成り込む?先手は寄せに行くなら▲93銀△71玉▲82銀打△同香▲91飛△82香…みたいな感じで寄せ切れず、というわけで、9筋に香を利かすのは、詰めろになってない事になり、一方の△53桂成は先述の通り詰めろ。というわけで、△53桂成が入るより先に後手詰めろに追い込むのが理想で、結局それが通るのであれば銀打ちから入るのは最善。で、▲91銀か▲93銀の2択という事になるわけですが、変な手が先に見えてしまう僕の理解としては、要するに以下に続いた「変則ダンスの歩」みたいな順が見えていたのであれば、用は玉を引っ張り出す事が出来て82に利きを作れれば良いので、91の場合は香の成り込む場所が残されている分だけ徳、みたいな見え方をしたのかも…というのは甘い考えで、▲91銀以下の寄せは、豊島さんの受け次第では93に来る駒が銀がと金に入れ替わる事になる筋が発生して(実は本譜がそう)、これがオソロシイ狙い筋になる。これに関しては後述しますが、ここの寄せでは、同時に先手は1手空いた瞬間に△51金や△52金上や△52金右という脱出路を開けられる事も計算しないといけない。これも後述。)

△同玉▲93歩△82玉▲92歩成△同玉▲94歩
 すげええええ!!!なんだこの歩の連打の打ち直しは?!!!
こうやって敵玉の位置と自分の歩の位置を1段ずらすのか…。秒読みでこんなのを思いつくって、化け物じゃなかろうか、こんな順見た事ないぞ。。いやあ、生まれて初めてダンスの歩を知った時には感動してしまったのですが、それぐらいの感動でした。すげえええ。。

△82玉▲93歩成
 うああ、更に歩の成り捨てか…。しかしこれ、後手は悩ましいです。△同玉と行きたいところですが、明らかに玉を引っ張り出されてるよなあ。そうなると、もう1回▲94歩と叩くのか、あるいは▲91飛の打ち込みが通るなら決め手になっちゃいそう。かといって△71玉は即詰みはなさそうですが、思いっきり角のラインに入ってしまう上に、今度は後手が壁形に追い詰められる。左辺に逃げ出せるかどうかを読み切らないと△71玉は選べないと思うのですが…1分ではさすがの豊島さんでも読み切るのは無理だろう…。こうなると一種の勘に頼る事になるのか。。

△71玉
 こういう所に棋風が出るのでしょうね。羽生さんや佐藤康光さんなら△93同玉だったんじゃないかと思うのですが、森内さんや豊島さんは△71玉なんでしょうね…。長い目で見ると、△71玉を選ぶような棋士の方が強くなると思うんですが、早指しだと△同玉みたいな棋士の方が強いんだろうなあ。そして、驚異の歩の使い方から続く羽生さんの寄せが完璧。(*10/25追記:ここもアホな分析をしていますが、アマなので勘弁してくださいm(_ _)m。。ここ、△93同玉の場合どうなるかというと、問題の▲91銀に代えて▲93銀とした場合の△同玉に形は合流します。違いは歩を2枚余分に渡しているかどうかという点なのですが、歩を5枚持っていた羽生さんとしては、ほとんどそれが問題にならなかった、というわけです。で、△同玉と取ると何が起こるかというと、僕が考えていた▲94歩や▲91飛は超緩手。なんと▲71銀という手があるみたい(これを発見したのは僕じゃなくって、一緒に検討してくれた方です^^)。そんなのただジャン…と思いきや、これが絶品で、▲71銀を△71同金と取ってしまうと、その瞬間に9筋に香を貼られ、玉を引っ張り出された後に91(92でも大丈夫)から飛車をべチャッっと貼られて退路封鎖、これで即詰み。というわけで、△93同玉▲71銀に対して後手は退路を作る事が出来ず、こうなると飛香歩というタテの駒だけでも後手行は寄ってしまう。じゃ、その瞬間に先手玉を寄せようと思っても…手駒となった銀を活用しても、実は先手陣の堅さはさっきから全然変わってない。詰めろ状態の現状から後手は王手をかけるには△67角成、△68飛、△69銀しかありませんが、前者2つは「ただジャン」なので、残る△69銀▲同玉△67角成が唯一の反撃筋、しかもこの馬が94にも利いてきて攻防手か?!とも思ったのですが…それでも▲94歩から入れば、△同馬▲85銀で馬取り詰めろ。結局、棋風がどうとかではなく、どうにも豊島さん選択の△71玉が最善手だったのではないかと。いやあ、この状況でよくぞ…。)

▲91飛△51金▲54香△57桂成▲62角成△同玉▲53銀

 うああ、△57桂成は唯一の反撃筋かと思いますが、▲62角成の時点で必至ですね。。まで、153手に及ぶ激戦の末、羽生王座が防衛です!!!
(追記:一連の羽生さんの寄せの中で、先手が読み切らなくてはいけない項目のひとつが、退路封鎖であると思います。連続王手からの寄せがない以上、脱出口を開けられた時にどうするか…は、考えておかなくてはいけない事項。棋譜中継では△52金上の検討が載っていて、要約するとこれで▲53銀を消す事が出来るというのが大きい。ただ、飛車の横利きを通されているというのに、玉の退路を1段に限定してしまうように見える△52金上を選択しろというのは、将棋というのは恐ろしいゲームというか…。△52金上の前に、先に利かした▲54香の退路封鎖以下、戦場が中央の脱出口の攻防の末投了という事になったのですが、では中央に追い出す側の8~9筋からはどう追い出すかというと、これはどシンプルに▲82銀。飛車の横利きを活かした▲91飛の打ち込みなので、これを△同香と取る事が出来ずに△61玉の一手。で、ここからどう追うのかというと…待ち駒の筋はとりあえず置いておくとして(というか、追ってからではなく、先に▲54香が正着で、ここでも羽生さんの指し手は最善手にしか思えない)、ここで▲83とという手が成立してしまいます。これ、△同銀には▲82飛成があってほぼ終了なので取れず、かといって攻め合いは例によって間に合わないので△52玉。これ、仮に△83角とと金を外す手を選ぶと▲81銀不成△同銀▲同飛成で先手勝勢。しかしこの順はけっこう怖い推論が成り立つことになっちゃって、例の▲91銀に代えて▲93銀から入ると、93にいた駒がと金ではなくて銀という事になるので、この寄せ筋が発生しない事になる。羽生さんはこの金銀の入れ替えを計算していたという事に…まさかね(^^;)。で、△52玉まで行ってしまうと、それでも先手からの寄せがありそうな気がしますが、しかしこれは完全な「王手は追う手」となるので、やっぱり先に▲54香が明解なんじゃないかと。では、問題の△52金上は?これこそ、先手は先に▲82銀から王手から先に入る事になって、これをプロの検討通りに、▲8二銀△6一玉▲8一銀不成△同銀▲同飛成△7一香(実はこれが詰めろになってる!!)▲6八銀(という訳で、先手はここで一度受ける必要がある)△5七桂成▲同銀△6九銀▲7七玉△7八飛▲8六玉△6七角成▲7六歩と進めると…いやあ、手数こそ長くなってますが、要するに2手空きvs1手空きの構造は変わらないまま追いかけているというだけで、先手玉は結局△52金上でも先手の勝ちは動かないように見えます。で、本譜と同じような寄せを考えるなら、▲62角成△同金としてから▲54香とすれば同じ待ち駒からの寄せもあるし、そんな派手な寄せ方をしなくてももっと堅実な寄せもありそうです。)

 いやあ、勝った方が王座という大一番にふさわしい大熱戦でした!!序盤と終盤ではまったく違った趣になった将棋、面白かった!!しかし今日の将棋、さっきも書きましたが、これが「タイトル奪取の掛かった大一番」でなかったら、勝ったのは豊島さんだったかも知れません。序盤から中盤の入り口にかけては、完全に豊島さんの作戦勝ちに見えましたし、序盤で平然と飛車を切った電王戦の時の豊島さんだったら、あそこで躊躇なく踏み込んでいたという気がします。豊島さんは、この王座挑戦をかけた一番の丸山戦でも、今までとは全く違った借りてきた猫のような指し方になってしまった。やっぱり、勝負師というのは肝の太さというのも重要なんじゃないかと。裏を返せば、豊島さんというのは、場馴れしたらとんでもなく強い、森内さんみたいな棋士になっちゃうかもしれません。

 この王座戦といい、開催中の森内-糸谷の竜王戦といい、世界交代の闘争が続いています。この王座戦は紙一重の差で羽生さんが勝ちましたが、来年もう一度豊島さんと番勝負を戦ったら勝てないかも知れない。竜王戦も、森内さんが糸谷さんに先勝されたしなあ。しかし、素晴らしく面白い将棋でした!!
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ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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