『注釈 康光戦記』 佐藤康光・著

ChuushakuYasumituSenki.jpg 昔より、少しは強くなったんじゃないかと思っています。道場でも、総本山の千駄ヶ谷でも思っていたよりも勝てる!プロ棋士の方や奨励会の方に指導対局をつけてもらっても「とても将棋歴1年半とは思えない」なんて言ってもらえる( ̄∀+ ̄)!!しかしですね…「不思議な手を指す」とも言われるのです。これは、前に女流の方にも言われたし、奨励会の方からは指し手の意味を逆質問される始末(>.<)。プロ的には破門レベルの構想をしちゃったりしてるんでしょうね。。
 こんな感じで、プロ棋士の方と、まったく読みが合いません。タイトル戦を見ていても、解説のプロ棋士の方々が「プロなら当たり前」的に説明する読み筋を、僕はかなり早い段階で検討から外していたりするのです。「プロと違った将棋の考え方をしてしまっているのではないか」「プロならみんな知っているようなことを僕は知らないんじゃないか」という疑念が拭い去れないのです。プロと同じ手を選べないなんて当たり前なのですが、それが僕の読みが浅いとか、手が見えないとかなら(いつか克服できるという意味で)いいんですが、形勢判断や指し手の根拠となっている考え方自体が間違っているのだとしたら、中終盤力においては、僕はこれ以上の上達は望めない事になってしまいます。プロが対局中にどうやって形勢を判断して、どういう根拠から指し手を選んでいるのか…最近、この手の本ばかりを読んでいるのは、そんな理由があります。そしてこの本は、超トッププロのひとりである佐藤康光さんの自戦記です。

 この本は、14の対局を、佐藤さん本人が解説してくれています。とくに、「この時に自分が何を考えて、どういう判断基準から指し手を選んだのか」という姿勢が貫かれて書かれています。これですよ、これ!!!こういうのを知りたかったのです。で、要所要所に、僕にとってはものすごく参考になる言葉がさりげなく書かれています。プロが伝えたい事とアマが知りたい事には差があるのかも知れませんね。個人的には、これがすごく良かったです。
 「調子」について書いてあるところがありました。「有力手が3つあるとして、調子がいい時はそれぞれ十分考えたところで決断できるが、調子が悪いともう1回ずつ考えないではいられなくなる。こうやって持ち時間がどんどん削られる。決断は大事な要素だ」。おおお、まさに俺じゃないか!ネット将棋では、大体僕の方が先に持ち時間を使い切っちゃいます。リアル対局をしても、たいがいは僕の方が長考。自分の読み抜けが不安で不安で、たしかに一度読んだ順をもう一回読んじゃってるわ。そうか、決断力か。。
 「新手を食らったとき」という所もすごく勉強になりました。ようやく序盤定跡の勉強が最低限のところまで追いついてきた戦型が出てきました。そうなると、自分が予想しうる範囲の指し手は全部研究済みになるわけで、その範囲内で将棋が進めば全部勝ちになる。ところが、いざ対局となると、自分が想定もしてなかったような手を指されたりする。実際にそれが新手であったかどうかは兎も角として、当事者としては「新手」とまったく同じ状況になるわけです。で、こういう時に佐藤さんはどう考えるかというと、「"おかしい"という気持ちと"なるほど"という気持ちが同居するが、その手が成立するかどうかは別として、対局中はとにかく否定してかかる」との事。いやあ、言われてみれば当たり前の事なんですが、僕は「やべえ」とか「すげえ」と思っている事の方が多い気がします。この間の竜王戦トーナメントでの▲中村太-△深浦戦で、中村さんは新手を指され、しかしそれを咎めに行くのではない順で指してしまっていました。負けてもいいので、あの瞬間は咎めに行くのが重要だったのかも知れませんね。これも勉強になりました。
 「現代的な指し手」という所も面白かったです。複雑な局面、難しい局面で妥協してしまわずに、踏み込んで、その局面がいいのか悪いのか、とにかく決着をつけて白黒をはっきりさせてしまう。いや、これは僕が佐藤さんの言わんとしている事を少し捻じ曲げて解釈しているのですが…たしかに、僕みたいなアマチュアの対局は、その対極に勝つかどうかという事よりも、負けてもいいから課題局面を白黒をはっきりさせてしまうという指し手を選んだ方が、次には繋がるよなあ…。
 「プロ的な強さ」という章は白眉。▲佐藤-△久保のゴキゲン中飛車での丸山ワクチン戦なのですが、互いの指し手が凄い。佐藤さんですら久保さんの手を評して「どこがと聞かれてもうまく説明できないが、うまいと感じた」なんて書いてます。振り飛車御三家の中でも、久保さんって指し手が鋭いというか、ものすごい切れ味だと感じてしまいます。こういう振り飛車相手に指すのって、嫌だろうなあ。。
 「天才少年と戦う」という最終章も面白かったです。天才少年とは、現在の渡辺2冠の事です。これがNHK杯での相掛かり戦で、僕がこの戦型に明るくないから余計にそう感じるのかも知れませんが、佐藤さんの説明なしには理解できないような駆け引きがものすごい!「間合い」というやつですが、アマチュアにはとても真似できない感覚で、ただただため息。。

 さて、こんな感じの本なので、捉え方は色々あるかと思います。まず、純粋に何かを教えるといったような内容ではないので、この本を読んで棋力アップを図ろうというのであれば、それは読む側に工夫が必要なんじゃないかと思います。しかし、前述したような感じで、僕的にはかなり勉強になりました。そうそう、本文には、もっと具体的な指し手の読み筋や、分岐点での佐藤さんなりの形勢判断なんかがかなりたくさん書いてあります。この部分は形勢判断力養成講座みたいな感じなので、間違いなく勉強になります!!
 棋力アップではなく、一種の将棋観戦みたいな「楽しむ」ための読み方をしても、相当に面白い本です。実際に駒を並べず、アタマの中だけで動かすだけで読むなら、1日あれば読み切れます。というか、面白すぎて、僕はあっという間に読んでしまいました(^^;)。マジで面白いです。
 しかし、佐藤さん本人による気になるひと言も。「トッププロの中では、僕が一番筋が悪い。」そ、そうだったのか。。たしかに顔面受け上等のヘンタイ将棋だしな、でもタイトルをバンバンとって、44歳の今でもA級棋士なんだから、不思議な指し手でもいいんじゃないかなあ。…あれ、このセリフ、どこかで聞いたような気が。。
 そんなわけで、買わなくてもいいので、図書館とかで見かけたら、ざっと目を通してみるのもいいかもしれません。「私はアホですか?」という見出しが出てきたときには、図書館で声を出して笑ってしまいました。僕みたいに、夢中で最後まで読んでしまう人もいるんじゃないかと思います(ああ、最後まで立ち読みしたという事をばらしてしまった^^;)。。


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最近

81に来てませんね。
俺がいないときにいるのかな?
千駄ヶ谷では何段に認定されたんですか?

Re: 最近

 こんにちは、ご無沙汰しています。毎日暑いですね~。

> 81に来てませんね。

 序盤定跡を何とかしないとこれ以上は無理と感じ、なるべく対局を控えて、序盤定跡を必死に勉強しています。81には週に1度ぐらい覗くんですが、対局がつかなかったりで、タイミングも悪いみたいです。

 81dojoには、どうしても倒したい人がいるんです。ムチャクチャ強い。何も出来ないまま、赤子のようにひねられました(>_<)。でも、序盤さえ何とか互角で乗り切れれば、もう少し何とかなりそうな気がするんですよね。

> 千駄ヶ谷では何段に認定されたんですか?

 3段です(*^ー゜)v!僕としては大満足なんですが、時間をかければもう少し上に行けるかもしれません。それにしても道場に行くなら、駒落ち定跡を勉強しないとどうにもなりません。

 関西では何段まで行っていますか?いまコールセンターさんと指したら、僕はボコボコにやられるんだろうなあ。。少し前に棋譜を見せていただきましたが、細い攻めをつなぐのがうまい!凄いと思いました。

関西では

いきなし、三段かぁ~、凄いな。
自分は最初、4級認定だったから。
じゃー、近い将来の奨励会員とも指してるわけですね。
自分は最近は連盟道場には行ってなくて新世界にはまってますw
新世界って知ってますか?
昔、ふたりっこという朝のドラマをやっていたところです。
連盟道場と違って、昼から飲んだくれの浮浪者と指すのも面白いですw

新世界って

こんにちは、レス有難うございます!

> いきなし、三段かぁ~、凄いな。

いきなりといっても、1年半独学してからのデビューですからね。純粋な新人とは言えないと思います。
コールセンターさんも関西で3段認定でしたよね?たぶん、互角ぐらいなんじゃないかと思います。
でも、千駄ヶ谷で3段以上の人と対局すると、知らない定跡に踏み込まれたら、ほぼ100%負けです。
そんなわけで、「ああ、今は中終盤よりも序盤定跡力を学ぶべき時期なんだな」と感じてしまいました。


> 自分は最近は連盟道場には行ってなくて新世界にはまってますw

おお!「じゃりン子チエ」の舞台になった繁華街ですか?通天閣とかが見えるところでしたよね。
行ったことはないですが、写真で見るとど派手で、ものすごく魅惑的な空間な気がしますね。
いってみたいなあ。。
そういえば、「じゃりン子チエ」の中でも、よくブラブラしているおっさん達が縁台将棋をしている描写があったなあ。。
プロフィール

ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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