第64回NHK杯 広瀬章人 vs 森下卓 (矢倉急戦 右四間飛車)

 仕事がヘヴィーになってきたので、NHK杯はオモシロそうなものだけ見ようという気分になってはや2ヶ月。ところが…今週もまたまた面白すぎて、全部見ちゃいました(^^;)。正直言って、サッカーより面白いわ。。それにしても、電王戦以来、森下さんって変わったなと思います。
 なにが変わったかといって、心構えだけじゃなくって、将棋の内容まで変わったという所が凄い。受け将棋の代表格みたいな人が、なんと攻めが切れた瞬間に負けという右四間飛車を採用なんて、ありえない。昔はこの戦型にさんざんやられたので、広瀬さんがこれをどうやっつけるのかを見たかったんですが…いやいや、とんでもない事になってしまいました。

 一時は右四間飛車対策に追われまくった事もありまして(81dojoには初段付近に右四間ばかり指す人がいます。この人に勝たない事には初段になれないという状況で、死に物狂いで研究したのはいい思い出です^^)、所司さんの『矢倉急戦道場 棒銀&右四間』とか羽生さんの『変わりゆく現代将棋 下』とか金井さんの『対急戦矢倉必勝ガイド』あたりを読みまくっていた事があります。中川流とか、右四間にも色々あるんですよね。僕は何を中川流というのかよく分かっていないんですが(^^;)、とにかく多いのが、後手が△54歩を突かずに△64歩~△54銀と腰掛け銀にしていく形。逆に言えば、△54歩を見たら右四間は消えたものとばかり思っていました。ところが今日の将棋はちょっと違いました。

20140622NHK64_広瀬vs森下_右四間19手 昨日の羽生棋王3冠vs森内竜王の棋聖戦のように、矢倉戦で後手が早めに△53銀を決めた格好になりました。対して、先手の広瀬さんがはや目に▲67金右とあがって矢倉の形を決めたところが19手目の盤面図。▲67金右は不急の一手と覚えていたのですが(昨日の棋聖戦でも後回しにしていた気がする)、こう指すプロも多いので、特に問題はないのかも、なんて思い直していました。が…

△64歩
 うおお、右四間飛車か?!しかし、プロで右四間なんて、北浜さんか中川さんが指したのしか見たことが無いぞ。だいたい、腰掛け銀ではなくて△53銀からでもいけるのか?後手の右銀が攻撃に参加しにくいように思えるんですが…

▲26歩△62飛▲25歩
 右四間飛車だあああああ!!…しかし、解説の阿久津さんはこれを右四間飛車と呼んでいなかったので、正確にはちょっと違うのかもしれません(^^;)。なんでも、塚田さんの得意戦法だったそうで(ここにも森下さんがこの戦法を採用した理由がありそうな気が)。

△65歩
 うおお、桂も跳ねず、銀も攻撃参加しないまま、いきなり行ったああああ!!
単に飛車先の歩を交換しただけかもしれませんが、もしこれで成功するなら恐るべしという事になっちゃうぞ。

▲同歩△同飛▲66歩△61飛
 とりあえずは、飛車先の歩の交換でおさまりましたね。ここで先手に手番が渡って…

▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛
 今度は先手が飛車先の歩を交換しておさまりました。しかし、最後に▲28飛とせずに▲34歩として横歩を取りに行ったらどうなるんだろうか。後手の反撃でもう一度△65歩から仕掛けられたら、▲同歩△同飛▲66歩に△85飛がまずいという事かなあ。う~ん、ちょっと分かりません。

20140622NHK64_広瀬vs森下_右四間35手△74歩▲57銀(35手目盤面図)△73桂▲68銀左(37手目)

 ここからは第2次駒組み。後手はようやく右桂の攻撃参加を準備、先手は37手目に▲68銀左と銀を引いて、右四間の受けの形である雁木に組み直しました。しかし…

 もう過程が全然違うので何とも言えないのですが、右四間対策に追われまくっていた頃、色んな本をめぐり廻ってもぜんぜん受け切れずに負けまくり、羽生さんの『変わりゆく現代将棋』に辿り着いたところで、ようやく右四間を破る事に出来るようになったという苦い思い出があります。あの本の何が良かったって、けっきょく右四間を受け切るってムズカシくって、つまり攻めを切らせていよいよ反撃…というのは現実的に難しい構想で、攻め合いに行って後手玉の形の悪さを咎めないといけない。だから、手が間に合うようになるために、一手で攻め合いに行ける反撃の筋までは作っておかないとシンドい。で、その反撃の筋の最有力候補として、先手は右銀を繰り出して34の歩を狙いに行っていたのが、羽生本の主旨だったと思います(他には、81dojoで右四間の73の桂を的にして咎めるのが巧い人がいて、後手の飛車の位置次第ではそれも狙える時がある気がします)。それを受けるべく△33銀としてくれれば角道が止まるので、そうなれば右四間の恐怖のひとつである角のラインが止まって、先手成功。もし後手が間違えて△33角なんて受け方をしてくれれば▲34銀で先手の勝利、お疲れ様です( ̄ー ̄)。その前提で言うとですね…37手目に、先手からの反撃が一手で間に合う▲46銀ではなくって、先に守りの雁木を完成させる▲68銀左を優先したというのは、ひとつのターニングポイントだったような気がします。これはもちろん結果論で、じゃ代えて▲46銀~▲35銀なら先手が良かったのかというと全然わからないんですが、以降の森下さんの見事な攻めを見ると、ここが分かれ目だったのかなという気がしました。

20140622NHK64_広瀬vs森下_右四間53手 進んで53手目、森下さんは攻めと守りのバランスを取った駒組みに数手を使い、広瀬さんは守りを固めてから遅ればせながらいよいよ右銀を攻撃参加させたという状況。しかし、ここからの森下さんの攻めが鋭すぎました。この盤面図で、既に後手よしだなんて信じられん。

△86歩
…いやあ、何でもない一手に見えるんですが、阿久津さんの解説を聴いていると、もう先手に受ける方法が無いんじゃないかとしか思えませんでした。手抜いたら後手勝ちなので問題外ですが、▲同角は?…△45歩▲35銀△65歩▲24歩△同歩▲同銀△66歩、これは後手が速いな。という事は、▲同歩しかなさそうですが…

▲同歩△85歩
 連打の歩か!これ、手抜いて▲24歩はさっきと同じで後手が速いので、これも▲同歩しかなさそうですが…

▲同歩△95歩
 …いやあ、5手一組の歩の手筋ですが、これは先手参ったようにしか思えません。▲同歩なら△98歩以下、典型的な端攻めが決まっちゃうし、手抜いて▲24歩はやっぱり間に合わない。こう考えると、やっぱり先手は右銀の繰り出しが遅れたのが全てだったんじゃないかという気がしてしまいます。ここで広瀬さん、さすがA級棋士!という曲線的な指し回しに出ます!!

△86角
 …いやあ、これは見事。端を受けつつ、後手の玉頭を直撃しています。すぐにどうという訳ではないですが、右辺でごちゃごちゃと戦いを起こせば、手順にこの角のラインを活かしたうまい攻防手が発生しそうな気もします(^^)。しかし…森下さんは辛かったです。。

△96歩▲98歩△65歩▲55歩△45歩▲54歩△同銀直▲55歩△66歩
 広瀬さん、突き違いの歩なんかを駆使して攻め合い、速度計算の難しい局面を作り出します。こんな指し方されたら、アマならみんな騙されちゃうだろう。。しかし…森下さんの指し回しが見事すぎる。いやあ、これは素晴らしかった!

 ここからの寄せも急ぎ過ぎず慎重になりすぎずで綺麗に寄せ切り、114手にて森下さんの勝ち!いやいや、若手で一気にA級まで上り詰めた今が旬の広瀬さんが一回戦で消えるとは…。

 それにしても、森下さんの指し回しが見事すぎました。もう全盛を過ぎた人かと思っていましたが、攻め将棋でA級棋士を攻めつぶすなんて、とんでもない強さじゃないですか。しかし、やっぱり右四間飛車は怖いな。これで右四間使いが増えたりしたら嫌だなあ。
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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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