『長岡研究ノート 相居飛車編』 長岡裕也・著

NagaokaKenkyuuNote_Ibisha.jpg 羽生研究会のメンバーである長岡裕也さんが書いた、相居飛車の最新形についての研究本です。全6章の構成で、うち約8割が横歩取り、残りの2割が角換わり腰掛け銀について書かれています。

(角換わり腰掛け銀)
 まず、第6章に書かれている角換わり腰掛け銀。この本は最前線の戦型に的を絞って書かれているので、角換わりの知識の無い人がいきなりこの本を読むのはちょっと無理筋な気がします。まずは『よくわかる角換わり』や『羽生の頭脳4 角換わり・ヒネリ飛車』あたりで基礎知識を身につけてからという方が良い気がします。その上で…
 プロ将棋で角換わりを見ると、その殆どが腰掛け銀です。しかも、△73歩を保留したまま指したり、はやい段階で飛車を右四間に振ったりして、みんな知っている有名な同形腰掛け銀の木村定跡なんかにはなりません。で、プロがそう指すものだから、ネット将棋でもみんなそう指してきてパニック状態(ボクもそう指してました( ̄ー ̄))。で、この本が出た頃、そういう最前線の指し方が書いてある本が無かったんじゃないかと。これが40ページ弱の分量で、ものすごく分かり易くまとめてあります!ただし、その後に出た吉田正和さんの『これからの角換わり腰掛け銀』とは内容がほとんどかぶっていて、しかも『これからの~』の方が10倍は詳しいですので、この戦型を本気で極めようと思うのであれば、吉田本をおススメします。ただし…この腰掛け銀の定跡というのは歩や金の位置が僅かに違うだけで全然違う将棋になっちゃうという驚異の難易度で、最初に勉強した時は一度挫折しました(T_T)。というわけで、吉田本に挫折した人や、あるいは横歩の為にこの本を買ったんだけど角換わりの勉強はまだしてない、みたいな人に、この本の6章は価値があるんじゃないかと。僕は、吉田本に一度挫折して、この本で本筋を覚えてから再トライする事で、ようやく何とかなりました(^^)。

(横歩取り)
 さて、この本を買う人は、これが目当てで買うんじゃないかと思います(^^)。いま横歩取りというと、、プロだと9割以上が△33角型という形が指されていると思います。アマだと△45角戦法なんていう戦型に出くわす事もあるんですが、これは『羽生の頭脳5 横歩取り』で勉強しておけば先手必勝です(^^)。で、本書は△33角型以外の戦型の説明はガッツリとカットして、この戦型の研究に集中しています。
 第1章は、この△33角型に進むまでの序盤研究。これが秀逸!ここは本のタイトルにある「相居飛車編」に繋がっていて、横歩に進む事を絶対視していません。相手の指し手によってどの戦型に進むのが有効か、なんて感じで実に細かく書いてあります。いや~、これは素晴らしかったです。しかしこの章を読むと、先手番で横歩を指すなら、いつかは相掛かりの勉強をしなくてはいけないという事を痛感させられます。そうですか、やっぱりサボれないのか…(T_T)。
 第2章は青野流。青野流というのは△33角型では先手番に戦型の選択権のある戦型なので、もしこれで先手が良くなるのであれば、先手番△33角型で他の戦型の勉強をしなくても良いという事になります。現時点ではどちらかというと本流ではない指し方だと思うのですが、先手番での横歩の勉強量をガッツリと減らしたいのであれば、この章は必読です!青野流は『よくわかる横歩取り』にも少しだけ書いてありますが、もう深さが全然違う感じです。
 本書の横歩の本領は4~5章で、△33角戦法で青野流以外の指し方をすると、次の戦型選択権は後手に移るんですが、後手の玉形を52玉の松尾流の中原囲いを本筋と見て、そこから△85飛戦法(4章)△84飛戦法(5章)という形にまとめています。う~ん、これは分かり易い。。特に、今の最前線である△33角84飛戦法に関しては、現時点でこれに変わる定跡書が見当たらない上に、ネット将棋なんかでもこの戦型に進む事が異常に多いので、横歩を指そうと思ったら本書は必読という事になると思います。
 で、先手は普通は後手が飛車を84なり85に引いた後で▲87歩と打って守るんですが、これを保留した場合にどうなるのかという変化が▲87歩保留型(3章)にまとめてあります。この章を読むと、やっぱり僕は▲87歩と打ちたいな…と思わされちゃいましたが、しかし後手番で横歩を指すならこの章も必読です。そうそう、後手の玉型が41の中原囲いなんかに関しては、本書では全然説明していませんので、『よくわかる横歩取り』とかの手助けが必要かも。

◆◆◆◆◆

 さて、先ほど書いたように、横歩を指すなら△33角戦法の勉強をする前にやっておかないといけない勉強があるんじゃないかと思います。たとえば△45角戦法なんかは、知らなければ瞬殺されると思います。というわけで、先に『よくわかる横歩取り』みたいな初心者本と『羽生の頭脳』での△45角戦法あたりは先に読んでおく必要があると思います。
 次に、この本は問題もある気がしました(いや、基本的にはメチャクチャいい本ですよ!あくまで、悪い点を挙げるとすれば、というハナシです)。この本って…「研究ノート」なんですよ。マジで最前線の戦型について書いてある感じなので、もうプロ間で結論が出た順について書いてあるわけじゃなくって、プロ間で結論の出ていないものも書いてあるんじゃないかと。それの何が問題なのかというと、ココセ的な指し手はまだしも(プロでも調べ切れていない最新形なのでこれは仕方ないと思います)、形勢判断自体があやしい所が結構あると感じてしまいました。もう単純に「後手よし」と結論している形でも、プロのタイトル戦なんかで似たような形が出てきて、その解説を読んだり、そこから自分で研究してみたりすると、結論が全く逆…なんて事がありました。しかも、大量にあります。それも、先手指せるか後手指せるかとかいう微差のレベルじゃなくって、「後手優勢」と言い切っているのに、実際には先手よしとしか思えない…なんていう所も幾つもありました。特に符号だけ書いてある変化の筋は、どうも長岡さんも深く考えているわけではなさそうなので( ̄ー ̄)、気をつけた方がいいです。というわけで、この本の形勢判断を鵜呑みにせず、読みながら、いかにもありそうだけど書かれていない変化とか、数手でもいいから結論された後の次の指し手を考えるとかいう読み方をした方がいいと思いました。

 とはいえ、横歩の△33角型を指すなら、これより詳しく書いてある本というのはなさそうなので、初心者本を過ぎら必読の本だと思います。横歩というのは、角換わり腰掛け銀や矢倉なんかと比べると、力戦に近い形と思うので、この本を読んで、横歩の部分的な手筋を自分の中にストックしていくだけでも、かなりの成果があるんじゃないかとも思いました。△85飛に対する▲75歩なんていう部分的な定跡は、知らなかったら絶対に指せないんじゃないかなあ。。



関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

新刊棋書
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブログランキング
ブログのランキングサイトに参加してみました。 よかったら、クリックしてくださいね!
QRコード
QR
これまでの訪問者数
アド