『これからの角換わり腰掛け銀』 吉田正和・著

KorekaranoKakugawariKosikake.jpg この本、細かい変化まで、解説つきですご~く丁寧に書いてあります。この本に書いてある事をちゃんと身につける事が出来たら、角変わり腰掛け銀では、初段前後までなら無敵、3段ぐらいでも結構勝ちを稼げるようになるんじゃないかという気がします。もちろん、それはちゃんと身についたらというハナシで、実際には身につけるどころか理解するだけでもすごく大変、全部覚えるなんて相当の時間を要するんじゃないかと。僕の場合、序盤定跡の本は、1冊読み覚えるのに1ヶ月ペースになる事が多いのですが、この本は2ヶ月ぐらいかかりました。しかも、細かい変化を一度で覚えるのは途中で断念、狙い筋を覚えるので精一杯。例えば、70ページにある参考までの変化は、符号だけで22手進みます。こんなのが最初から最後まで続くので、棋譜並べをしないで読む方の場合、中級ぐらいでは難しいんじゃないかと。また、「7手詰めなら間違いなく解ける」というぐらいの棋力がないと、結果図以降の指し手が全く分からない、なんていうことも結構あるんじゃないかと。角換わり初心者の方がいきなり読むのは無謀、1級か初段ぐらいの棋力以上の方向けに書かれた本なんじゃないかという気がします。

◆◆◆◆◆◆

さて、この本の目次は以下の通りです。

序章:角換わりの概観
1章:同型腰掛け銀
   富岡流/△81飛/ツツカナ新手
2章:△74歩型
   △22玉vs…▲25桂/▲25歩/▲18香/▲68金右
3章:△73歩型
4章:△65歩型
5章:後手の桂頭攻め
6章:△42飛作戦
7章:先手の奇襲
   ▲45桂速攻/▲45銀速攻

1章:同型腰掛け銀
 まず、1章。腰掛け銀を指すなら、同桂腰掛け銀の知識は必要不可欠だと思うので(腰掛け銀の形しか知らない人が指したら、まずこうなると思うので)、必読。同型腰掛け銀は、他の本でも結構勉強できるんじゃないかと思うのですが、この本の特徴はふたつ。第1に同桂腰掛け銀の歩の突き捨て「4・2・1・7・3」の順が書いてある事と、第2にツツカナ新手が書いてある事です。僕の場合、同桂腰掛け銀を『よくわかる角換わり』で勉強したもので、歩の突き捨て順が「4・3…」だったのです。昔はこの順だったらしいのですが、この順だと後手から反撃の筋がある(!)という事で、知らない方はこれだけでもこの本を読むべきかも。このふたつを理解できている人は、1章は読まなくていいと思います。逆に言うと、同型腰掛け銀の大筋は理解できている前提で書かれているので、木村定跡とかの有名な筋は、『よくわかる角換わり』などの他の本で勉強する必要があります。

2~4章:△74歩型、△73歩型、△65歩型
 この本を買う人の殆どは、ここを目当てに買っているんじゃないかと思います。噛み砕いた言い方をすると、目次にされた戦型ごとに、同じような攻め筋のどれが通じてどれが通じないか、またそれらの攻め筋を潰すために、金は43が良いか42が良いか…みたいな、僅かな違いを検証していく感じです。(いや、あくまで大雑把な表現ですヨ^^)。
 例えば、腰掛け銀の仕掛けで一番多いのって、先手でいうと▲45歩(後手だと△65歩)だと思うのですが、この成立条件が僅かな違いでコロッと変わっちゃいます。後手の守りの右金が△43金か△42金か、また△74歩か△73歩かという僅かな違いで、成立する手としない手が全く変わってしまう。
で、狙い筋が同じ場合、手順を覚えるというやり方で覚えようとすると、すぐに「あ、あれ?さっきは桂で取ってはダメで銀で取るんだったのに、この場合は銀はダメで桂で取るの?!」とか、速攻で混乱状態に。僕は、そのたびに別の形に戻ってにらめっこ、しだいに混乱の極みに達し、一度挫折しかけました。…そして、どうやってこの本を読めば、僕ぐらいの棋力の人間でも覚えやすくなるだろうかと考えた結果、他の戦型の定跡以上に「ある攻め筋が成立する条件」というものを理解しながら読まないと、相当にしんどくなるんじゃないかと。桂頭攻め、2筋突き捨てからの十字飛車、▲45歩(後手なら△65歩)の仕掛け、銀の割りうち、▲45桂の位置からの▲71角の打ち込み…みたいな、角換わりの攻め筋の典型みたいなものを防ぎながらどう戦うか、みたいな読み方にすると、ちょっと読みやすくなる気がします。これは、この本がどうこうではなくって、角換わり腰掛け銀というものがそういうものなんでしょうね。
 そうそう、まったく別の話になりますが…プロ将棋を見ていると、角換わりで手待ち合戦になる事がありますよね。あれ、単なる手待ち合戦かと思っていたんですが、手待ちする場所の公倍数の都合で、自分にとってより指しやすくなる瞬間が発生するんですね。それを待っているとは…。…いやあ、この本の4章を読んで、そんなスゴイ事をやってたという事を初めて知りました。

5章:後手の桂頭攻め
 これは、「後手の桂頭を攻める」んじゃなくって、「後手が桂頭を攻める」という意味。腰掛け銀の場合、さっき言ったように典型的な狙い筋というのは限られているみたいなんですが、そのひとつが桂頭。ここは思いっきり急所なので、それだけを引っこ抜いて解説したのがこの章でした。で、戦型ごとの桂頭攻めの成立の可否を検証してある感じです。おお、これは分かり易い!ついでに、▲45歩の仕掛けも、▲71角も、こういう形でまとめてくれたら素晴らしかった。…そんな事やったら、1000ページぐらいになっちゃうか。。後手の桂頭攻めって、後手はアメフトのクウォーターバック・スクランブルみたいに、守りの銀をぐいぐい進めていくというデンジャラスな展開になり得るようなんですが、これもわずかな違いで成立する手としない手が入れ替わります。読むのは簡単ですが、覚えるのは成立条件から理解しないと、手順だけ丸暗記はやっぱり難しいんじゃないかと。

6章~7章:△42飛作戦、▲45桂速攻、▲45銀速攻
 これらは、本筋ではない指し方みたいですが、かなり使えそうです!というのは、横歩取りの△45角戦法みたいに、強力な手だが相手に正確に対処されると負け筋で後戻りできず、という手ではなく、強力な手でありながら、相手が正着を放ってきたらそこから本筋に戻す事が可能に思えるからです。矢倉で、先手が変な順で駒組みしてきたら、後手は右四間飛車で一気に潰せるじゃないですか。あんな感じで、常にこれを狙うというんではなくって相手が間違えて来たら一気に咎める狙い筋、みたいな感じ。僕なんぞはこれらの変化を全然知らずに指していましたが、もし相手がこれらの作戦を指してきたら、あっという間に潰されていたんじゃないかと思い、ちょっと戦慄してしまいました(^^;)。プロの棋戦に登場しないのは、プロがこの変化をケアしながら指しまわしているから登場しないというだけなんでしょうね、きっと。

◆◆◆◆◆◆

 そうそう、この本の初版には、著者が修正したいと思っている記述が幾つかあるようです。2版も一部修正はされたものの、全部の修正は出来なかったようなので、どの版を買おうが、正誤表は必要かも。以前の記事に書いておいたので、この本を読まれる方は、ぜひ参考になさってください。
http://shougix.blog.fc2.com/blog-entry-220.html

 さて、最初に書いたように、既にある程度角換わりを知っていて、また棋力もある程度ある人を対象に書かれていると思うので、まだ棋力に自信がないという方にはムズカシイと思います。初段以上ならいけると思いますが、そうでない方は、もう少し基礎的な本を先に読むことをオススメします。さっきも書きましたが、同型腰掛け銀は、『よくわかる角換わり』など、他の本の基礎知識が必要。また、△74歩型に対する必殺の▲28角などには触れられていないので、『羽生の頭脳4 角換わり・ヒネリ飛車』などの手助けが必要です。それから『長岡研究ノート 相居飛車編』は、この本の2~3章の本筋と相当にダブって書かれています。比較でいうと、『長岡ノート』は本筋限定で変化の筋の説明は少ないのですが、級位の方にはむしろその方が分かりやすいかも。もし、横歩取りの勉強のために『長岡研究ノート』を持っていらっしゃるようなら、そちらを先に勉強する事をおススメします。結論がひっくり返っている部分はありませんでした。僕の場合は、この本を読む前に、『長岡研究ノート』の角換わり腰掛銀の項と、プロ将棋を結構がんばって観戦していたので、かろうじてついていく事が出来ましたが、それがなかったら、この本を理解するのは厳しかったかも知れません。 
 しかし、初段前後の棋力があって、角換わりを得意戦法にしたいという方には、これは最強の本なんじゃないかと思います!角換わり腰掛け銀を得意戦法にしたいのであれば、この本にかわるものはないんじゃないかと思えました。それに…実は、今まで読んだ序盤定跡の本で、この本が一番すごいと思いました。


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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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