第3回電王戦 第3局 豊島将之 vs YSS (横歩取り)

 出場棋士の中でガチで強いのは、今日の豊島さんじゃないかと思っています。この1年、豊島さんの棋譜は結構見てきましたが、羽生さんや渡辺さんのような異常な終盤力にこそ届きませんが、序中盤ではこのふたりに勝るとも劣らないんじゃないかというぐらいに強い!化け物じみて強い!今この瞬間だけでいえば、屋敷さんよりも強いんじゃないかと思えます。つまり、この対局は人間強豪vsコンピュータ強豪。これは、現段階での人間vsコンピュータのパワーバランスを知るに最も適した対局と思っていました。将棋のような性質のゲームの場合、コンピュータ有利である事は分かり切っていますが、それでも人間将棋の好きな僕の心情としては、やっぱり豊島さんに勝って欲しいと思っちゃいます。

 さて、将棋は豊島さんの先手で、横歩取りになりました。実は先週まで、プログラム相手にはがっちり固めた持久戦の方がいいと思ってました。ところが持久戦になると、コンピューターは少しでもリードすると、その僅かな差を徐々に徐々に、しかも着実に広げていく。プログラムによって違いはあるんでしょうが、しかし玉の堅さに拘る所は、プログラムに共通する特徴なのかも。玉の堅さ、つまり詰みまでの速度計算というのは「計算」なので、これはコンピュータの得意分野なんでしょうね。というわけで、実はプログラム相手には持久戦よりも急戦の方が良いのかも。手が広すぎてとてもすべての変化まで計算する事が困難な序盤が狙い目になりますからね。その意味では、横歩は人間にとって意外と良い戦型かも知れません。定跡も整備し切れていませんから、定跡のプログラミングだけではカバーしきれないだろうし、その段階で演算しようとすると…。もしプログラムの形勢判断というものが、手空き計算の発生しない段階では、駒の損得とか玉の堅さとかを重要視しているのだとしたら、序盤で大駒を切った方が得というような将棋になった場合は、けっこう形勢判断を誤るんじゃなかろうか。そして横歩とか角換わりって、大駒を叩き切ってでも駒の働きをよくしたほうが優勢になっちゃうような大局観の戦型だと思うので、人間にチャンスが出てくるような気もする。

2014032922手 さて、その最序盤から、コンピュータが怪しい手を指しました。22手目、玉を62にあがるという、見た事のない手。ウハ、なんだこれ…。いやあ、コンピュータの強さをさんざん見せられてきたものだから、コンピュータの指し手が全部すごいものに見えちゃう。これもとんでもない新手/有力手が生まれたのかとも思ったんですが…しかし本当にそうなんでしょうか。江戸時代からある横歩という戦型で、中住まいにしても中原囲いにしても、なんで紆余曲折の末に52玉型に就縛していったのか、そこには理由がありますよね。ソフトの狙いは左辺に飛車を振って右辺に玉を囲うという事なんでしょうが、横歩の後手の急所って、なにせ一番が3筋と、僕は教科書で覚えました。これ、その一番の急所の3筋攻めをされても大丈夫なんでしょうか??

▲33角成△同桂

 豊島さん、いったあああ!!いやあ、やっぱりそうですよね。僕みたいなグダグダのアマチュアですら、ここは角交換から桂頭攻めとか、3筋に手をつける一手。いや、コンピュータはこれで大丈夫と判断してるのか?これで後手受かるんだったら、横歩の歴史が変わっちゃうぞ…

▲21角

 うおおお!!豊島さん、一番激しい順で行ったあああ!!!
いやあ、25手目ではやくも角捨てか、スゴイ踏み込みです。後手は攻め合いなんて全然無理な段階だから、受けか攻防でしょうが、△42金だと▲22飛成か。これは先手勝ちですね。玉寄りは?…そうか、62にいっちゃったから届かないか。△23金だと▲43角成か。これはきついけど、まあり得る手か。△25歩だと?おお、これは受かりそうだな。先手が飛車を逃げてくれば、受かるどころか後手優勢に出来るかもしれない。じゃ、飛車取りを手抜いて▲32角成?それで先手いいのか?いやあ、豊島さん、おっかない順に飛び込んだものです。と思ったら、コンピュータの指し手は…

△31銀

 えええ?これは…コンピュータの悪手、キタ━━━d(゚∀゚)b━━━!!
いや、これこそ角切りから龍を作って先手優勢だろ…。

▲32角成△同銀▲22飛成

 そうですよね、やっぱり。。角金交換でも、囲い切れていない後手陣に龍を作れれば、さすがに先手良い気がします。しかしあの踏み込み、豊島さんはプログラムが△31銀と引く事を知っていたんじゃなかろうか。△25歩とされたらけっこう怖い変化でしたよね…。(*追記:局後の野月さんと久保さんの解説によると、△44角の打ち返しでかなり難しい将棋であったとの事。また、事前の練習対局では、この△44角が一番多い手だったそうです。)別の見方をすると、このプログラムの形勢判断の基準というものを知りたいです。それが分かれば、けっこうプログラム攻略の戦略が立てやすいかも。でもそうなると、もう将棋じゃなくって、ファミコンの裏ワザ探しみたいだな。。解説の久保さんも、ゲストで出てくる糸谷さんをはじめとしたプロ棋士の方も、みんな先手よしという判断です。

 そして、今は夕方の4時半ぐらい。YSSが投了しました!豊島さん、時間を余しまくり、しかも大差勝ちです!!やっと横歩のスペシャリストの野月さんが解説に来た時には、大差過ぎて解説するところがありませんでした(^^;)。野月さんの解説、異常に分かり易くて大好きなので、ちょっともったいない気がしました。僕は横歩取りの勝率が他の戦型より少しだけいいんですが、それは8割がた野月さんのおかげだと思っています。

 しかし、あの豊島さんの踏み込み。局後のインタビューでは、「練習ではプログラムが△31銀と引く手は少なかった」「今日の棋譜は初めての局面だった」との事。さんざん言っておきながら、僕の想像は大外れでした、ゴメンナサイm(_ _)m。。なんと嵌め手ではなく、ガチの勝ちだったとは。いやあ、豊島さん、凄い。。
 まあそれでも、先にソフトを貸して研究アリとしてしまうと、研究手に嵌めるという事態があり得るわけですね。作為的な棋戦の気が…。2枚舌なんて使わずにありのままに言うか、「人間vsコンピュータ」と言い切るなら、どんなに人間が苦しくても公平性を保つよう努力すればいいのに。炎上商法に2枚舌にバランス調整か。。何やってもいいんですかね。この主宰者、嫌いだなあ。

 豊島さん、、この一戦に向けて練習対局を1000番以上指したのか!しかも、直前にやった本番と同じ持ち時間に設定した練習対局は全勝だったのか。す、凄い…。この勝利は偶然ではなく、勝って当然だったのか。強い人には、強いなりの訳があるんだなあ。尊敬しちゃいました(^^)。
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豊島さんの練習対局は1000番以上でなく、3桁台だと御本人が言っていましたよ

Re: タイトルなし

書き込み有難うございます。

> 豊島さんの練習対局は1000番以上でなく、3桁台だと御本人が言っていましたよ

あれ、そうでしたか。局後インタビューで損なような事をいっていたと思ったのですが、勘違いでしたでしょうか。
申し訳ありませんでした。
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Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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