第63回NHK杯 豊島将之 vs 西川和宏 (四間飛車急戦)

 NHK杯の3回戦も今日で最後、これでベスト8が出揃います。う~ん、この時点で羽生さんも渡辺さんもいないなんて信じられない。。A級棋士や強豪棋士が続々と敗退していった波乱の大会とはいえ、ここまで来るとさすがに強豪棋士しか残ってないですね。そんな中、4段で気を吐いているのが西川和宏さん。今期NHK杯での西川さんの将棋はちょっと面白くて、1回戦の上田女流との振り飛車も、2回戦の谷川会長との振り飛車戦も、劣勢からの逆転勝ち。どちらも、劣勢になってからの構想の立て直しが見事(特に谷川戦での構想は凄かった!!)、またそこからの終盤の寄せも素晴らしく、印象的でした。この2戦の棋譜を見返しているんですが…なるほど、上田戦は43戦法(というのかな?飛車を四間から三間に振り直す戦法です)、谷川戦は中飛車からやっぱり飛車を三間に振り直していますね。というわけで、個人的な印象としては、西川さんは振り飛車党で、しかもアマチュアの初段クラスではなかなか指されないような構想の将棋をガンガン指してくる感じ。いずれも、僕がネットで遊んでいる将棋ではあまり出くわした事のない戦法だし、その対策を勉強する時間も当面ないので、すごく楽しみ。

 先手は豊島さん、先手居飛車vs後手四間飛車になったんですが、豊島さんは穴熊を目指さずに船囲いに囲って、左銀を繰り出し、飛車を3筋に振り…あら?これって鷺宮定跡か??キタ━━(゚∀゚)━━!!!!いやあ、序盤定跡の勉強を始めたばかりの頃、最初に対策を迫られたのが対四間飛車戦でした。で、僕はその勉強を『羽生の頭脳 四間飛車破り』でやったんです。生まれて初めて、定跡本をまるまる一冊覚えたので、とにかく大変でした。今だったら「これは知ってる、これも知ってる…」って感じで、けっこう飛ばし読みできるんですが、最初の一冊って知っている事がひとつもないので、本当に一字一句飛ばせないんですよね。。で、羽生の頭脳の四間破りは居飛車穴熊ではなくて、急戦定跡なんです。結局、2カ月ぐらいかけて、毎日コツコツ必死に覚えたのに、今となっては急戦定跡を全く指さなくなってしまった(^^;)。せっかくあんなに頑張ったのに、忘れかけてしまって勿体ないとは思っていたので、今日は復習をする絶好のチャンス!!これは楽しみ!!

20140126_NHK63_23手(四間飛車急戦の序盤定跡)

 図は23手目、居飛車側が右銀ではなく左銀を57に繰り出したところ。おお~、懐かしい!!最初は右銀急戦ばかり指していたんですが(手数が少ないので覚えやすかった^^;)、王道はやっぱり左銀ですよね~。で、ここから振り飛車側の作戦によって先手の攻め筋が変わるんだったような…よしよし、まだかろうじて覚えてるぞ。人間の記憶力って馬鹿にできないかも知れないぞ( ̄ー ̄)。そうそう、この形にならず、振り飛車側が左金を41に保留し続けてきた場合は、左金を32に受けてくる可能性があるので、そうなったら▲46歩(後手の飛車先を受ける)~▲37銀~▲26銀で棒銀を狙うと良かったハズ。でも、後手の左金が53まで来て美濃が完成した場合は、対四間飛車急戦の王道に突入!って感じだったと思います。戦型は、46左銀戦法、▲45歩早仕掛け、鷺宮定跡、棒銀…あと、何かありましたっけ?やっぱりうろ覚えか、人間の記憶力はあてにならないな( ̄。 ̄)。で、西川さんの指し手は…

△43銀

 う~ん、既に相当なうろ覚えになって来たぞ…。△54歩を突かずに△43銀が先の場合って、振り飛車には玉頭銀の狙い筋があったんじゃなかったかなあ。たしかその説明は『羽生の頭脳』にはあんまり詳しく書いてなくって、渡辺さんの『四間飛車破り 急戦編』に出ていた気が。でもあれ、図書館で立ち読みしただけだから、全然覚えてないぞ。。…覚えてないものは仕方ありません、もし玉頭銀に来た時は、はやめに▲66歩を突くとかのアドリブでごまかす事にして、話を先に進めよう。。ただ、振り飛車側は飛車先に銀をあがるより先に△12香と躱しておくのが最善手じゃなかったっけか?その場合、居飛車は飛車を3筋に振って鷺宮定跡に行くと良かった記憶が。
 でも、西川さんが△43銀としたことで、居飛車の選択肢は▲46左銀戦法、▲45歩早仕掛け、棒銀の王道3点セットに広がったハズ。ちょっと、近いうちに対四間飛車を急戦で破る3点セットの狙い筋を整理しよう。で、今日の将棋の本譜は…

▲68金上△64歩▲38飛

おお!!飛車を38に振った!!鷺宮定跡だ!!…と思ったんですが、後手の銀が32にいないという事は、後手の飛車は3筋に振り直すことが出来ますよね?これって、鷺宮定跡にならないんじゃないのか?と思っていたら…

△32飛▲46歩△14歩▲37銀△12香▲26銀△54歩▲35歩

 すみません、冒頭で僕はウソをついてしまいました。これ、鷺宮定跡じゃなくって、棒銀です。。まあいいや、鷺宮定跡は振り飛車が32に銀を保留して、3筋に飛車を振れない時の定跡だったというのを思い出せただけでも収穫です。。しかし、僕が何となく覚えている定跡手順とはずいぶん違う経路をたどってここまで来たな。。きっと、相手の出方を考えながらの駆け引きがあったんでしょうね。そうそう、西川さんの指し手を見て思い出しました。振り飛車は、居飛車の対四間飛車棒銀に対しては、3筋に飛車を振って受けるのが定跡でした。で、居飛車も銀の進出経路になる3筋にいちど飛車を振るのだった気がします。きっとそうです(遠い目)。今日の場合、飛車振りが先だったというのが何となく目新しかったです。
 以下、将棋は激しい捻じり合いとなり、見ていてメチャクチャ楽しい。見ている分には、穴熊戦よりも捻じり合いとか叩き合いの将棋の方が楽しいなあ。。

20140126_137手(終盤の読みの凄さ)

 そして終盤戦、豊島さんは9筋の端を破り、飛車角交換をして得た馬を見事に活用して王手飛車を決め、これは先手優勢!!と思ったんですが、最終盤の西川さんの逆襲が凄かった!!劣勢なのは明らかなので、僕なら多少無理筋でも一気に攻めにいくところ。しかし西川さん、なんと受けながらの寄せを図ります!!いやあ、劣勢の終盤でこういう構想を出来るって、マジで凄いと思います。谷川さんとの将棋も全く同じ考え方でした。う~ん、これはマジで勉強になるなあ。盤面図は137手目、豊島さんが強烈な飛車の打ち込みをした所。即詰みはなさそうですが、もし受けに金駒を使っちゃったら、後手は先手の中段玉を寄せるのは難しくなりそう。で、ここからの西川さんの指し回しが驚異的。

△7一玉▲9一飛打△8一金▲8二銀△6二玉▲8一銀不成

まず、飛車を2枚打ち込まれ、ここで合駒に金を使わされます。ああ、即詰みは回避できた気がしますが、これで先手玉を寄せるのは難しくなったんじゃないかなあ。更に▲8二銀と打ち込まれてから▲8一銀不成で合駒に打ったばかりの金を取られ、寄せるための金駒が先手に渡りました。。更に悪い事に、飛車の空き王手があるので、後手はこの成らずの銀を切り取ることが出来ない。駒得されながら守りの金駒をベリベリと剥がされ…これは典型的な寄り筋ですわ。お疲れ様。と思ったら…

△5五金▲同 玉△8八角

△55金は理解できます。角を外せるし、同玉となれば54の地点には角が利いているので、裸玉となった先手玉を下に落とすことが出来る。しかしそうするんであれば、さっきの合駒は銀合にしておけば、▲54金~▲45角成と出来たんじゃなかろうか。と思ったら…△88角?!ええ~、こんなので寄るのか?!!

▲6六歩△5四歩▲5六玉△5五銀▲6七玉

あら?これは寄ったんじゃ…

△4九角成 ▲7八玉 △8七香成

うわああああ!!即詰みじゃないか!!以下は▲69玉△77桂不成▲68玉△76桂▲57玉△79角成▲68金△同馬なので、遡って考えると…19手詰めか!!う~ん、寄せていって最終的に詰んだというのであれば、それはヘボな僕でもある事なので理解できます。しかし、あの合駒問題のところで金合いを選んだ意味は、金合いにすると先手は手抜きが出来ないわけですよね。で、その順を選んだという事は…あの時点で、詰み筋を読み切っていたんじゃないだろうか。いやあ、30秒将棋になってから攻防の計算をしながら戦場選択をして、かつ19手詰を読み切るのか。プロって、4段でもこんなに凄いのか…啞然騒然、レベルが違いすぎますわ。。
 いやあ、中村太地と並ぶ若手最強棋士の豊島さんを破ってしまうとは、西川さん凄いです。これでNHK杯はいずれも逆転勝ち、しかもすべての対局で驚異の終盤力を見せつけています。う~ん、これをまぐれ勝ちと呼ぶことは出来ないんじゃないだろうか。

 さてこれで、NHK杯はベスト8が出揃いました。森内竜王名人、郷田さん、三浦さん、丸山さん、屋敷さん、大石さん、村山慈さん、西川Jrさんです。う~ん、個人的には、飯島戦でとんでもない角捨てを披露してくれた丸山さん、阿久津戦の横歩でこれまたとんでもない飛車切りから一気に寄せてしまった三浦さん、3連続でもの凄い構想力と逆転勝ちを見せてくれた西川さんの3人に頑張ってほしいです!


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54銀と玉頭銀を見せると角頭が弱くなるので、居飛車が早仕掛けのときに有力です
43銀の局面ではまだ居飛車が早仕掛けする可能性があるので54歩をつかないで43銀にした ということだと思います

なるほど~

おナンシーさん、書き込み有難うございます。

なるほど~、そういう事ですね。という事は、△54歩を見るまでは早仕掛けは危険という事でしょうか?
玉頭銀の勉強は、昔もしなかった気がするので、とても勉強になりました。

そうそう、昨日ブログを拝見させていただきました。タイムリーな事に、四間飛車急戦について書かれていましたね。そちらも勉強になりました。
また、良い記事をたくさん書き続けてください。いつも、読ませていただいて勉強しています!

ありがとうございます

そうですね 棒銀や鷺宮定跡は全て角頭を狙う戦法なのですが、早仕掛けだけは角頭を狙う戦法じゃないので玉頭銀が成立します

43銀と54歩型の四間飛車に対しては早仕掛けが有効なので、それらの手を見てから仕掛けるのが良いと思います
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駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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