第63期王将戦 第3局 渡辺明 vs 羽生善治 (矢倉急戦)

 羽生さん、まさかの2連敗で始まった今回の王将戦。羽生さんとしてはこの第3局が正念場、一方の渡辺さんとしては羽生さんが復調してしまう前に一気に畳み掛けたいところかと思います!

20140130_20手(5筋交換型の急戦矢倉 最初の分岐)

 さて、将棋は矢倉模様で進み、16手目に後手の羽生さんが△74歩と突いたところから急戦調に。しかし、渡辺さんは僕が知っている指し手とはちょっと違う差し回しをしました。後手の△55歩を▲同歩と取らないし、△85歩も▲77銀と受けない。う~ん、せっかくこの前の竜王戦で、5筋交換型の大筋を覚えたというのに、またまた新しい筋が出てきてしまった。。これも5筋交換型のバリエーションとは思うのですが、はやくも僕にはよく分からない形になってしまったぞ。。更に、羽生さんも飛車先の歩の交換の後、飛車を85に引くという、かなり攻撃的な形を選びました。解説の先崎さんに言わせれば「恐ろしくデンジャラスな手」だそうで(^^;)。たしかに、ただでさえスッカスカな急戦矢倉の後手陣から、飛車の横利きすら消えてしまうわけですからね。羽生さん、こんなんで大丈夫なんだろうか。これは、先制して一気に潰してしまわないと、後手はまずそうだぞ。。

(*1/30追記)最初の分岐は、21手目となるここ。竜王戦の1~3局では、20手目の△85歩の突き出しに対して▲77銀と受けていました。以下、△55歩▲同歩△同角▲79角△73角▲46角△64銀▲68角△55銀▲57銀△52飛▲56歩△44銀…みたいな進行。この進行は色々な矢倉の定跡書に載ってて、5筋交換型の矢倉急戦というのはこういう物だと思っていたんですが、今回の進行は…

▲25歩△86歩▲同歩△同飛▲87歩△85飛

 なんと、先手は銀で守らずに、▲25歩と自分も飛車先の歩を伸ばしました(・ω・)。まあ、▲77銀が普通だったところを手抜いたんですから、もし▲77銀としないのが悪いのであったら、とうぜん後手は△86歩ですよね。で、後手は先に飛車先の歩を交換する事になったんですが、その引き場所がなんと▲25飛だった、というわけです。しかし、これは今回初めて指されたわけではなく、おととし夏の渡辺vs羽生の王座戦で最初に指されたとの事。僕がプロ将棋を見るようになる前の出来事なのか。。で、その時は先後が逆で、▲77銀と守らなかった最初の新手を指したのが羽生さん、△85飛とデンジャラスな所に引いたのが渡辺さんだったそうで。同じ将棋を逆で持って指してるのか。こんな所にもドラマがあるとは。

20140130_26手 で、後手が85に飛車を引いた26手目の盤面図です。この中段飛車の狙いは、先崎さんが説明してくれてました。「狙いとしては▲2四歩△同歩▲同飛△3一玉▲2八飛と進んだら△4四角として、次に△2六歩~△2五飛とすれば△2七歩成が受かりません」…う~ん、なるほど。ひねり飛車狙いは分かるけど、△44角は鋭いなあ。これは知ってないと早指しでは受けられないかも知れん。。で、本譜は…

▲36歩△55歩▲46歩△56歩

 ▲36歩は桂の跳ね場所を作って2筋を守ろうという事ですね。で、後手は例によって5筋交換型の急戦を継続する△55歩に着手、と。で、ここでまた…先手がこの歩を取らない(゚ロ゚ノ)ノ。う~ん、わけが分からん。で、取らないで何をしたかと言えば、▲46歩。まあぶつけられた以上、後手の△56歩は予想できる手ですよね。で、この▲46歩がどういう意味かというと…

▲47銀△54銀▲56銀

 なるほど、意外とシンプルで、歩を切り取りながら銀が活用できるようになるわけか!で、以降は互いに右桂を跳ねた後に、またも羽生さんが変な手を指しました。

20140130_37手(後手、脅威の中盤構想)

 羽生さん、なんとこの局面から…
△62金

 エエエエ~~~(゚д゚ノ)ノ!!なんだこれ!!
俺が指したらボロクソに言われそうな手じゃないか!!ふつうなら、▲51金とか▲52金とかじゃないのか?しかし、紐もつけずに、まったく意味が分からん。。角交換を構想していて、その時に打ち込みしにくく構えた?飛車を1段目まで引いて、振り直そうとしている?いやあ、そんなんじゃないんだろうな、きっと。。で、次からの数手で、何となく理解。

▲65歩△88角成▲同玉△65歩▲77銀△66歩▲同銀

 …うわあ。先手の▲65歩は、角道を開けて飛角で後手の2筋を突破しようという訳ですよね。で、羽生さんはその筋が危険であると読んでいて、逆に先手が角道を開ける手を利用する仕掛けを作る。それが、先手が角道を開いた瞬間に自分から角交換の△88角成。それが王手になるから先手は手抜けないから、ここで手番は後手が握る。次の△65歩~△66歩は、後手陣を乱すと同時に6筋の歩も切るというふたつの狙いを持った手。更に後手は

△86歩▲同歩

これで、先手玉の玉頭まで乱しておいて、飛車を1筋に引いて振るのか。いやあ、すげえ…と思ったら…

△82飛

 (゚д゚ノ)ノ!!ここで金に紐をつけて、一転して守勢に回るのか。。じゃ、6筋の歩を切った意味は、単に、後手陣を乱しただけ?それだと、交換となった▲77銀は先手陣を堅牢にしてしまった事になるので、ちょっと損じゃないのか?…もしかして、底歩を考えていた?もし、この後で底歩が生きる展開になったら、羽生さん恐るべしだな…。いやあ、あまりに複雑な指し回し、しかし全ての手がひとつの線で繋がれているわ。。いやしかし、ここまでの構想がなかったら、あの△62金はありえなかったんじゃなかろうか。いいか悪いかは別として、急戦の後手番らしい差し回しというか、もの凄い構想力だわ。…というところで1日目は終了。封じ手となりました!

20140130_51手(ものすごい終盤術!)

 今回は序盤も勉強になりましたが、中終盤の両者の読みと構想もものすごかったです。正直言って、感動してしまった。盤面図はさきほどの△82飛の引きから、先手が▲55歩と守り、さらに▲77桂と跳ねた局面。この状態、どう見たって先手陣は堅いし、一方の後手陣は2筋からの攻撃を防げるとは思えない。しかしこの時、さっきの羽生さんの6筋からの崩しが効いていて、後手はここから寄せに入っていくとは。。ここから後手は…

△85歩▲同歩△86歩▲79玉△31玉

まず、手筋の叩きの歩からの垂れ歩。先手は桂も跳ねているので受けの拠点もあるし、嫌味ではあるけど大したこともないだろうな、と思ったんですが…。で、互いの玉の動きの交換を挟んで、ここから攻め合い!

▲45銀△85桂▲24歩△同歩▲83歩

 最後の▲83歩がすごい嫌な手。これ、連打の歩から▲95角狙いですよね。飛車道は止まるわ、桂は取られるわで、これにて後手の攻めが切れて終了、お疲れ様…というところですが、まあこういう時はまともにいかないで引きかえに別の駒を取る手とか、そういうのを狙う筋を考えるべきなんでしょう。しかし、連打の歩を打たれてからそんな事を考えるのは僕みたいなアマチュアであって、羽生さんの指し手はそんな生易しいものではありませんでした。これが見ていてあとからジワジワとくる見事な構想。

△同飛▲84歩△39角

 なんと、序盤での6筋の崩しはこれを狙ったものだったのか?!!
しかしこれ、先手が飛車の取り合いを選択するとどうなるんでしょうね。▲83歩成△28角成▲85桂△37馬…なるほど、後手は86の歩の拠点と37の馬の拠点が残って挟撃になるのか。これはいっぺんだわ。で、先手が仮に1段飛車を打ち込んで攻撃しようにも、例によって62の金の下に底歩を打てるのか。う~ん、信じられん。推理小説で、バラバラの伏線が一気に繋がっていく謎解きのクライマックスみたいじゃないか。いやあ、見事な伏線の回収だわ。。じゃ、先手が飛車を躱すと?…▲84飛で連打の歩を切り取って、あとは8筋突破で終了か。では▲38飛と角にぶつけると?…66角成で、もう後手よしだわな。。いやあ、6筋で切り崩しの時点で、実はもう後手よしだったんじゃなかろうか。というわけで、渡辺さんは飛車を躱しつつの攻めとなる手を選択!

▲24飛

しかし、羽生さんはもうこれに付き合わず、一気に寄せに行きます!!

△87歩成▲同金△86歩▲88金△84飛

 ここも細かい手筋ですが、先手の87の金をダンスの歩で88に移動させて88を埋めてしまい、受けの歩を打てなくしたわけですね。か、華麗だ。で、いよいよ△84飛と歩を切り取って、これで8筋突破が確定です!!渡辺さん、これはもう受からないので攻め合いを選択しますが…

▲34銀△77桂成▲同金上△87歩成▲23歩△77と(76手目)

 …これは1手差どころではありません。この後も指し手は続きましたが、76手目の時点で、シロウトの僕が見ても先手玉の詰みは明らか、結果82手にて後手羽生さんの勝ち!!

 いやあ、これはスゴイ将棋でした。あの序盤での△62金、またそれと連動した6筋の歩の突き捨て、8筋の叩きの歩からの引き飛車、ダンスの歩を使っての敵の歩の打ち場所を埋めた手順、角の打ち込みと6筋から崩された先手陣の関係性…。いやあ、これらがすべて繋がっているというのが凄すぎる、無駄な手がひとつもないじゃないか。。これで羽生さんは後手番で一発入れ返し、1勝2敗になりました。更に、渡辺さんにとっては不運な事に、2月からは棋王戦も始まっちゃうじゃないですか!渡辺2冠は、同時に羽生さんと三浦さんを相手にしなくちゃいけないのか…。う~ん、2月は将棋から目が離せなくなっちゃいそうだな。これは、今のうちに仕事をたくさんしておいた方が良さそうだぞ(^^;)。でも、後手を持ってこんな将棋は指したくないな。胃に穴が開いちゃいそうだよ。。

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及川さんの本って

ロプさん、書き込み有難うございます!

及川さんの本って、「すぐ勝てる!急戦矢倉」という本ですか?金井さんの本や羽生さんの本とどのあたりが違うのか、すごく興味あります。なにか情報がありましたら、ぜひ教えてください!

渡辺さんの棋譜並べは、すごく筋が良い感じで為になる気がしますね。羽生さんの棋譜は難しい手が多くって、難儀します。。

Re: タイトルなし

いえいえ、貴重なご意見、ありがとうござました!!

実は、羽生さんの『変わりゆく現代将棋』の急戦矢倉の解説があまりにハイレベルすぎて、及川さんの本か金井さんの本のどちらかも一度見てみようかと思っていたのです。

5筋交換型の急戦矢倉の勉強は3~4月ごろから始めようと思っていたので、とっても参考になりました。有難うございました!!
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(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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