第65回NHK杯 阿部光瑠 vs 久保利明 (後手藤井システム)

 またしても久保さんは藤井システムを使いました!最近、久保さんは藤井システムを多用してますね~。王将リーグでの対渡辺戦(勝ち)、糸谷戦(勝ち)、順位戦での佐藤康光戦(負け)。つまり、藤井システム全盛期にプロ棋士として指し盛りだった佐藤康光さん以外にはすべて勝ち。その康光戦だってシステムが敗れたというよりも、康光さんの受けが凄すぎたという感じだったし。面白いのは、居飛車側が藤井システム相手でも穴熊を狙いに行き、しかも負ける展開が多い事でしょうか。

 そして今日の阿部光瑠さんも、やはり久保さんの藤井システムの餌食に。中盤の右辺の戦場も押し込まれ、玉頭位取りも決まらずに先に振り飛車に穴熊に囲われ、自玉を穴熊にトランスフォームしようとするもそこで戦いを仕掛けられて囲い切れず。以降は穴熊戦でよくある、先に寄せに手をつけられて防戦一方からの敗戦。

 これで、またしても居飛車が藤井システムの餌食に。藤井システム側はどのあたりに活路を見出して、最近リバイバルしてきたんでしょうか。居飛車側はほとんど穴熊に行ってるんですが、急戦でヤバい筋や構想が発見されたとか?

 こうなると気になるのは、王将戦のプレーオフでの羽生-久保戦です。ファンの興味としては、猛威を振るう久保さんの藤井システムが、本人も藤井システムを指していた羽生さんに通じるかどうか。気になるなあ。



第74期順位戦A級 5回戦

 A級順位戦も、もう5回戦。1年ははやいなあ。そろそろレース展開が見えてきた頃合いなので、マジメに見始めています(^^)。今年は、去年のような団子レースにはならなそう。優勝戦線は、唯一の全勝である天彦さんを誰が止めるか、そして1~2敗勢の棋士がどこまで生き残るか。降級戦線はすでにヤバめの人が出ていて、特に順位が下の人ははやめに2勝目、3勝目をあげておきたい所じゃないかと。

郷田真隆 ○-● 広瀬章人
 昨日の対局です。現在のA級で現状タイトル持ちは渡辺さんと郷田さんだけですが、しかしこの両者が調子が悪い。渡辺さんはそれでも前半で貯金を作ったので何とかなりそうですが、郷田さんはこれに負けると、順位的に言っても降級レースの一番手に(>_<)。対する廣瀬さんもここ数年の好調さはなく、1勝3敗と苦戦気味。これは生き残りをかけた1局となりそうですが…相掛かり!!相掛かりになると郷田さんの強さは半端じゃないですね(^^)。この前の王将リーグでの羽生-渡辺戦よりもよく見る形の相掛かりになったんですが、しかし相掛かりは大駒の捌き方が凄い。飛車を自陣に打ち込んで受けに使って成り香を抜く→その飛車を角の打ちこみで狙う…激しいっす。ほとんど急戦みたいなものなので、角銀交換とか、駒の損得関係なしに駒の利きを優先して互いに一気に寄せに行くところが、横歩や相掛かり戦を見ていると「ああ、この感覚を持っていないと指せない戦型なんだな」と思わされました。結果は郷田さんの勝ち!郷田さんはなんとか王将のメンツを保った形、一方の廣瀬さん、ヤバいかも。。

佐藤天彦 ○-● 屋敷伸之
 11/19の対局、これがA級5回戦の最重要カード。A級がもつれる為にはとにかく天彦さんが転ばないと始まりません。これに屋敷さんが勝てば屋敷さん自体も1敗のままなので暫定トップもありうる状況、この対局の勝敗がA級のレース展開を大きく変える事になりそう。そしてこの将棋、なんと屋敷さんは角換わり後手棒銀にいきました!屋敷さん、デタラメすごいです…。深い研究があるというよりも、「こんな手で行ったら可能性があるかも」ぐらいの感じで飛び込んでいる気がするんですが(完全に僕の妄想です^^;)、これで一局の将棋にしちゃうのはやっぱり屋敷さんの腕力が凄いからなんでしょうね。しかしその屋敷さんを弾き返した天彦さんはやっぱり強い!天彦さんの全勝は止まらず、屋敷さんは2敗目。

久保利明 ●-○ 佐藤康光
 11/20の対局。先手久保さん、藤井システムです!ノーマル四間飛車や藤井システムがリバイバルしてますね。若手が結構餌食になっている気がします。糸谷さんは王将リーグで久保さんのシステムに破壊されましたが、康光さんは藤井システム全盛期を将棋界のトップ集団として生き抜いてきたひとり、ツボを心得ている人に通じるか…。いや~、藤井システム相手に穴熊、そして狙いの端攻めを喰らいながらも、康光さんの受けが凄すぎ!33手目から83手まで続いた久保さんの猛攻だったので、延々中盤の50手を受け凌ぎ!必殺の顔面受けも出ました(^^)。そして受け切ってからの反撃がまさに光速!カッコいい勝ち方だなあ。これで康光さんは3勝2敗、久保さんは1勝4敗。久保さん、王将戦で勝っているツケが順位戦に来ちゃってるのか…。

森内俊之 ○-● 渡辺明
 永世位を持つ両者の対局。しかも現在の先手矢倉を窮地に追い込んだ渡辺さんが後手で、矢倉の名手森内さんとの対局という事で、僕は注目していたんですが、森内さんが凄い、凄すぎる。早囲いではあるものの、▲46銀型から△45歩と銀を押し戻される展開。まさに先手矢倉がまずくなった展開のハズなのに、この順を踏襲したまま森内さん押し切り!!後手は受けるのに手いっぱいで反撃のチャンスすらなし。森内さん、完勝です!う~ん、これは先手矢倉復権の重要な棋譜になるかもしれないのでちゃんと研究しようと思っていたんですが、まだちゃんと見れてないなあ。正月にでも分析してみようかしら。。また、順位戦的にも、渡辺さんは痛恨の2敗目。なんとか1敗で天彦さんに次ぐ2番手をキープしておきたかったかと思うんですが、これは痛い。

行方尚史 ○-● 深浦康市
 11/6、2敗の行方さんと3敗の深浦さんの対局。行方さんは負けたら優勝戦線から脱落気味、深浦さんは負けたら降級レースに参加してしまうという、実は双方にとって大事な一局。横歩取りになったのですが、行方さんは玉を62にあがり、飛車を56に構える構想。これは古い指し回しかと思ったんですが、もしかしたら最近の後手の左辺から端歩や飛車ぶつけをしてくる将棋に対しては玉も遠くなるし、意外と有効なのかも。そして将棋は飛車角総交換に叩き合い!激しいうえに、めっちゃくちゃ面白かった(^^)。終盤は行方さんが飛車を切って寄せに踏み込んだところで、深浦さんが怒涛の王手ラッシュ、しかしこれが届かず。行方さん勝って3勝2敗、なにせ天彦さんとの直接対決を残しているので、2敗で踏みとどまっていれば行方さんはまだチャンスはありそう。一歩の深浦さんは1勝4敗。これはマズイ展開。。

 というわけで、天彦さんが負けず、唯一の全勝!次に続く1敗棋士はナシなので、さすがにこれは天彦さんが一歩リードでしょうか。とはいえ、去年以上に強豪しかいない今期のA級棋士なので、ここから天彦さんの連敗だって十分ありそう。天彦さんから見て意外と嫌なのは、A級唯一の振り飛車党である久保さんと、急戦を平然と仕掛けてくる郷田さんでしょうか。いや~、個人的には1度でいいから羽生vs渡辺の名人戦を見てみたいので、渡辺さんにも頑張ってほしいっす。。


第65期王将戦挑決リーグ 羽生善治 vs 渡辺明 (相掛かり)

 王将リーグが佳境!羽生さんのプレーオフ進出のかかった大一番の相手は、よりによって現役ナンバー2の渡辺さん。今期初の羽生-渡辺戦です(^^)。羽生さん先手ですが、戦型選択が悩ましそう。最近は矢倉は先手苦戦してるし、そもそも先手矢倉を苦戦に追い込んだ新手を指したのが渡辺さんですし。。かといって角換わりも、渡辺さんの大得意形の上に、今の渡辺さんは竜王戦用に角換わりは相当に研究しているでしょうし。そうなると、横歩か相掛かりに誘導できれば御の字かな…おお、相掛かりだあああ!!いや~、この辺りは渡辺さんも角換わりと横歩取りの研究は竜王戦に温存しておきたいでしょうし、お互いに良い選択だった気がします。

 渡辺さんが先にちょっかいを出す展開。軽い攻めに見えますが、渡辺さんの攻めは軽そうでも怖いんだよなあ(^^;)。後手渡辺さんの飛車が9筋に回っていて、先手羽生さんの角が56で後手の中住まいの両端を睨む筋違い角。これは既にどちらかが良さそうな気が(^^)。いや~、メッチャクチャ面白いのでこのまま観ていたいけど、もう出かけないと(T_T)/。仕事サボっちゃおうかな…いやいや、年越しのためにちょっと稼がないと。。

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 やっと帰ってきましたが、朝の10時過ぎか…眠い。しかし結果だけでも…おおお、羽生さん、勝ちました!!これで久保さんと羽生さんのプレーオフですね、やっぱり今期の王将戦は面白かった。注目してて良かった。。そして、この将棋、凄いです!面白すぎて結果だけでなく、棋譜に魅入ってしまいました。。

20151125王将リーグ_羽生vs渡辺_相掛12手 私は居飛車党ではあるのですが、相掛かりはほとんど指しません。指すとしても、横歩から相手が相掛かりへの変化に飛び込んできた時だけ。というわけで、プロの指す相掛かりはどれもこれも新鮮で、すごく楽しい(^^)。12手目盤面図は後手が角道を開けたところ。僕が子供のころは、これに代えて△86歩からの飛車先の歩の交換が普通でした。後手が飛車先の歩を切らずに角のハッチを開ける手は、そういえば今期の棋聖戦での▲羽生-△豊島戦で見た気がします。

▲38銀△94歩▲96歩△72銀▲27銀
 先手の棒銀狙いは、相掛かりで引き飛車にした時の常套手段。対する後手は、9筋の歩を伸ばす展開。相掛かり戦って、後手はこの端歩から手を作っていくのをよく見る気がします。後手は飛車先の歩、角のライン、9筋、銀と桂の進出…このあたりからという印象がありますが(将棋は何だってそうか^^;)、この順番が初心者には複雑。先手は端を受けない手もあったかと思いますが、、受けました。

△86歩▲同歩△同飛▲87歩△85飛
 先手が棒銀を見せた所で、後手は飛車先の歩を交換した後に△85飛。いや~、86の方がオーソドックスなイメージなんですが、85に構えるのは相掛かりでも横歩取りでも襲い掛かる気満々というか、強い人じゃないと飛車を的にされそうで、指せない手という気がします(^^)。これは先手が端歩を受けたからかな?

20151125王将リーグ_羽生vs渡辺_相掛27手▲76歩△74歩▲36銀△52玉▲46歩(27手目盤面図)
 ここで先手は角道をオープン。なるほど、そろそろ開けておかないと、先に仕掛けられると開けている暇がなくなるかもしれませんしね。これで角交換のタイミングも睨みながらの将棋に。一方の後手の△74歩は、桂跳ねの準備かな?横歩でもそうですが、△85飛と△73桂は相性が良い気がします(^^)。▲46歩は「おっ?」と思ったんですが、これは腰掛け銀を構想しているのかな?相掛かりって、先手の右銀の動きが多彩。でも、こんなのまだ定跡の範囲内なんだろうなあ。手順や端歩の関係などは違うかもしれませんが、この盤面図、何となく見た事あります。いや~、将棋の序盤って、定跡の勉強をしている時が一番楽しいです(^^)。

△75歩▲同歩△同飛▲22角成△同銀▲88銀
 おっと、ここで渡辺さんがつっかけた!!後手が7筋の歩の交換で飛車筋の変わった所で、先手から角交換!そして…

△35歩▲47銀△95歩▲同歩△96歩
 渡辺さん、飛車を8筋に戻さないまま仕掛けました!なるほど~、△85飛のメリットって、先手の棒銀の進出を防げるところもメリットなのか。いや~、勉強になるなあ。。さて、この端での後手の手作りは軽めというか、これで端が破れるというわけではなさそうなので、利かせぐらいの感じでしょうか。と思ったら…

▲77銀△95飛▲86銀△94飛
 なんと羽生さん、銀を前に出して飛車を追いに行った!!いやあ、この端を放置せず、羽生さんの方から戦場にしてしまいました(^^)。放っておけばそれほどの傷とも思えませんでしたので、羽生さんは勝算があって咎めに行ったのかと。

20151125王将リーグ_羽生vs渡辺_相掛43手▲56角
 羽生さん、反撃だあああ(゚∀゚)!!!いやあ、これは素晴らしい、単純な狙いとしては▲73歩で、△同銀なら▲83角成、△同桂なら▲84歩か!!これは後手が一気に忙しくなったんじゃないでしょうか、まともには受からないので反撃に行きたい所ですが…

△33角▲77銀
 渡辺さんも反撃だあああ(゚∀゚)!!!これでバランスが取れているなんてことはないでしょう、既にどちらかが良くなってるんじゃないかという気がしますが…そしてここからが双方凄かった!!

△97歩成▲同桂△74歩▲66歩
 まず、後手からの端の攻撃に対する▲97同桂に軽くびっくり!桂で取ると歩で頭を叩かれるんじゃないかとなんとなく思ってたんですが、それだと飛車先が重くなってしまう上に▲85桂が絶好となってしまうので叩けない。矢倉や角換わりばかり指していた時期があるもので、こういう時は香で抜くものとばかり思ってました。先入観というのはオソロシイ。
 次に、渡辺さんの「敵の打ちたい所に打て」の△74歩が絶品。仕掛けた以上一気に行くと思ったんですが、ここで相手の手を消せるところがプロ。これは指せないなあ。先手の▲66歩も、相手の手を消す手。仕掛けた直後のタイミングで一気に勝負をつけに行く前に、双方が互いの手を消しに行ったのは凄かった。

△84飛▲86歩△73銀▲93歩△同香▲92歩
 後手が9筋の端を利かせたつもりが、ここまで進んでみるとまったく逆。一気に勝負をつけるというよりも、羽生さんがこれで少しだけポイントを挙げた気がします。

20151125王将リーグ_羽生vs渡辺_相掛64手 以降は、この9筋の垂れ歩がと金になって大暴れ。少しのポイントどころか、先手よしまで行ってしまった感じ。そして中終盤、羽生さん驚異の指し回しが炸裂!これは感動的でした。少し進んだ64手目盤面図からの指し回しがそれ。と金で拠点を作ったものの、これは▲85歩から少しずつ後手の飛車を狭くしていくしかないし、そうなると案外いい勝負なんじゃないか…と思ったら、なんとここから羽生さんが踏み込みました!

▲85桂△99香成▲73桂成△同金
 羽生さん、桂を跳ねてあっさりと成香を作らせた上に香損!後手の守りの桂を1枚抜いたところで、攻めが続かないと思ったんですが…

▲34桂△31銀▲22歩△24香▲同飛△同歩
 これはすごい、凄すぎる…。こんなの指せたら相当な高段者だわ…。もしかするとプロだってこの順に踏み込める人は少ないんじゃなかろうかとすら思ってしまいました。
 だって、まず3手で駒損の上に成香を作らせて桂交換を構想する所で、僕なら読みを打ち切るかも。しかし角頭が空いているのでそこから手を作るところを考えていたら、桂を補充してからの▲34桂まではなんとか読むかもしれません。しかし、その後で銀を引かれるところで読みは絶対に打ち切ります。だってさらに追撃すると、本譜のように渡した香で飛車を抜かれてしまうんですから…。しかし、羽生さんはこの順に踏み込みました!!

▲21歩成
 ▲21歩成としたところで桂を取り返して実質的に先手は飛車損、左辺は崩壊状態ですが…これは後手が結構厳しくないかい?考えてみたら飛車香交換といっても、先手だってその香を後手の飛車の頭に打ち込めば飛車確保。気づいてみたら、壁形で後手は玉が異常に狭い。金銀も守りに役立っているというよりも、玉の逃げ道を防いでいるだけの格好です。しかしすぐに寄る形ではないので、ザックリ見てこの盤面図で先手が良いという判断が出来るかどうかという事ですよね。ここの構想は凄かった、感動してしまった。。

 結局これで先手優勢になった模様、数手先の83手にて渡辺さんが投了、先手羽生さんの勝ち、羽生さんはプレーオフ進出です!!

 いや~、徹夜明けだというのに、面白すぎて魅入ってしまった(^^)。こんな将棋を指せたら、将棋が楽しくて仕方ないんだろうな。なんかいい夢見れそうです、それではおやすみなさい(・ω・)/。


第65期王将戦 挑戦者決定リーグ 森内俊之 vs 羽生善治 (矢倉)

 やっぱり王将リーグがめっちゃくちゃ面白いです(^^)。久保さんが1敗でフィニッシュしたため、既に2敗以上した人は脱落なので、久保さんに追いつけるとしたら羽生さんのみ。しかし羽生さんは、よりによって森内さんと渡辺さんという超強豪に連勝しないといけません。でもって、今日は▲森内-△羽生戦。これがすごい!!いや~、やっぱりプロ将棋はこうあってほしい、序中盤の森内さんの構想と、中終盤の羽生さんが凄すぎ。僕は森内さんの方が良いと思って観ていたのですが、一体どこでひっくり返ったんだ?ちょっと異次元でした。

20151120王将65リーグ_森内vs羽生77手 この将棋、序中盤は僕には高度すぎ。特に、森内さんの構想が凄かったです。課題の定跡勉強のために続けているこのブログでは、間違っていても笑われてもいいから、自分なりの見解をまとめておこうと書き綴っているんですが、駒組み自体も両者あまりに独創的、ちょっと自分の定跡勉強の範囲を超えてます(*゚∀゚*)。とても書けません。それは終盤もそうだったのですが、最後の羽生さんの寄せがこれまた強烈だったので、その感動だけでも残しておこう、そうしよう。えっと、77手目盤面図から…

△67銀▲88玉
 取れば次に王手飛車なので玉を躱す一手ですが、その後に後手がどう攻撃を繋ぐか。

△38角▲26飛△47角成▲68金△66歩
 いやあ、この角打ちも絶品。飛車が横に逃げれば自玉が少し安全になり、縦に逃げれば本譜の通り金取り。また、銀取りがかかった後の△66歩、これも素晴らしすぎる。いやあ、勉強になるなあ。。

▲51角成△86歩▲同歩△68銀成▲同銀△69馬▲78金
 先手森内さんは、ここで受け切りは不可能と見て攻め合いに行きますが、羽生さんこれを相手にしません。それにしても、△86歩から入るって、すごくないですか?普通は△56馬から数の攻めを考えそう。で、この順を見ると…いやあ、やっぱりすごいわ。。

△67金
 まで、後手羽生さんの勝ちです。いやあ、ここで投了した森内さんもすごいな、僕にはまだ粘れそうに見えるよ(^^;)実はここからの寄せがまだ見えてません。寄るには寄るんでしょうが、しかし後手玉が先に寄りそうな気もしたりして。。

 考えてみれば、角が成り込まれたら後手陣は一手一手なので、本譜のような受けずに攻め合いに踏み込むには速度計算が必要。そうしないなら73に合駒しておく手もあったと思うので、△67銀での時点で、羽生さんは既に読み切っていたんじゃないかと。そして以下はこの順です。飛車の逃げ場所や金の逃げ場所なんかもけっこう選択肢があって、読まなければいけないところはかなり多いと思うんですが、全部読み切っていたわけですよね。あそこで投了した森内さんといい、どちらも尋常じゃないわ。。

 表でやっていた竜王戦が夕方になる前に終わってしまったので残念に思っていたんですが、あれがはやく終わってくれなければ、この凄すぎる将棋は見れませんでした。タイトル戦じゃないので、今日見なかったら一生みなかったと思うと、むしろはやく終わってくれた竜王戦に感謝です(^^)。さて、これで羽生さんは最後の渡辺さんに勝つとプレーオフ進出、マジで5冠の可能性が出てきました。こうなると…糸谷さん、もうちょっと頑張って、竜王戦で渡辺さんの研究手を引き出しておいてくれ~!!


第28期竜王戦 第4局 糸谷哲郎 vs 渡辺明 (力戦)

 この将棋は特に序盤が面白かったです!最終的には先手の糸谷竜王が飛車を中央に振り、後手の渡辺さんが居飛車で玉を矢倉気味の囲いに入れたので、先手中飛車の対抗形なんでしょうが、そこに行くまでの駆け引きや順が、僕の知っている中飛車戦の定跡とは全然違うので、いちおう力戦扱いという事で(^^;)。

20151119竜王28-4_糸谷vs渡辺_力戦6手 6手目盤面図、横歩か角換わりになりそうという所で、後手の渡辺さんが△94歩!いや~、これは得意の角換わりで、糸谷さんが用意していない順に誘い込もうという事でしょうか。

▲56歩
 糸谷さんは7手目(!)のこの一手に50分を使いました。まず▲56手がいい手かどうかの前に、▲96歩と素直に応じるかどうかという悩ましい選択があったと思います。▲96歩なら、(仮に△94歩が渡辺さんのブラフじゃないとしたら)渡辺さんの研究順になる。そして、糸谷さんの選択は渡辺さんの注文に応じない手。ただ、注文に応じない力戦系の場合は、序盤に難のある(もちろん、トッププロの中では、という意味^^;)糸谷さんが間違えやすい可能性があるという渡辺さんの計算である気もするし…。そう感じるのは、「序盤の定跡研究では渡辺さんが上」と僕が感じてるからなんでしょうね。だって、糸谷さんが研究に自信があれば、何も力戦を選ばずに普通に指せば「自信あり」のはずなんですものね。

△34歩▲55歩△85歩▲77角△62銀▲68銀△74歩
 後手は飛車先に歩を伸ばし、△74歩とハッチを開けて右銀の進出を狙ったので、たぶん居飛車確定。では先手は?5筋の位を取りましたが、玉の態度を保留。普通なら中飛車に行きそうな気もしますが、最初に角換わりか横歩取りの相居飛車のつもりで行ってしまったもので、2筋の歩がひとつ上がってしまっています。となると、美濃に行くにしても銀冠狙い?いやいや、右玉すら使いこなす糸谷さんですからね、ちょっとまだ分かりません。

▲57銀△73銀▲56銀△64銀
 おお~っと、先手は左銀を中央から繰り出しました!中飛車にして中央から襲い掛かるか、それとも角頭を狙いに行く?これは先手の方針の分かれ道だった気がします。それに呼応するかのように、渡辺さんも攻撃の銀を繰り出し自陣整備よりも反撃筋を間に合わせる事が先、という事かな?この辺りは、ちゃんと手数を数えないと分かりません。力戦系の怖さって、定跡形だとそこまで考えなくても済むところでも、けっこう深く考えないといけないところですよね。序盤にして、中盤なみのむずかしさ。。

▲58飛△41玉
 先手、中飛車に行ったああああ!!!いや~、あまりに序盤過ぎて、形勢なんて全然わかりませんが、糸谷さんの得意形を指させず、自分は馴れた居飛車で将棋を作りに行けるというだけでも、渡辺さんの作戦は成功したと言える…かな?

▲45銀
 糸谷さん、玉を囲わないまま、攻めに行ったああああ(*^-^)o゙!!
いや~、一手前で「渡辺さんの狙いは成功」と言っておきながら、次の▲54歩や▲34銀を後手はどうやって受けるんだ?なんか、先手が良いような気もしてきたぞ…(。・ω・)。。仮にここが受かるとして、次の△75歩からの角頭攻め&飛車先突破の反撃でソロバンは合うという事なのでしょうか。ここは後手間違えるとヤバい局面なんじゃないかい?

△42銀▲48玉△33銀
 先手は仕掛ける順から考えたい所かと思ったんですが、いきなり中央で開戦しちゃうと、中央がら空きの戦型で居玉はさすがに危険…ですよね。糸谷さんは冷静に居玉を解消しました。そして…

20151119竜王28-4_糸谷vs渡辺_力戦28手▲54歩△同歩▲同銀△62金(28手目盤面図)
 開戦だああああ!!!いや~、この場面、僕は自分が5級ぐらいのころを思い出してました。今は中飛車戦は、先手でも後手でも居飛車穴熊で戦うんですが、級位の頃は超速とか、自己流とか、色々やってたんですよ。居飛車穴熊では中央での折衝でこういうデンジャラスな受けの局面にはなりにくいんですが、それ以外だと、少しうっかりするといきなり致命傷、みたいになるんですよね。まあそんなわけで、僕はどうしてもこの盤面図を居飛車側から眺めてしまいます。ここで糸谷さんは…

▲45銀
 銀を引きました。もしかしたら、攻めあぐねたのかも。しかし28手目盤面図を後手側から眺めると…いや~、自分が居飛車党だから、常に居飛車サイドで悲観的な観方になってしまうのかもしれませんが、28手目盤面図は後手の方がまとめるのは難しいんじゃないかと感じてしまいます。まず、角の働きによって、後手陣だけに強い制約がかけられてしまっているように感じます。先手は囲おうとすれば、最善形にはできないまでも、玉を深くする、銀で蓋をする…などなど、許される手数の範囲で、分かりやすく固められる。攻めのポイントは見ての通りで、しかも敵陣の玉に近いところが戦場。しかし居飛車側は、33の銀を動かし、その時に角交換されるといきなり壁金の形に追い込まれるから…と、駒組みにも構想にも相当制限されているように見えました。僕程度の棋力だと、単純に「次の指し手が難しい」という程度のみでいって指しにくい。糸谷さんが▲45銀と銀を引いたのはめっちゃくちゃ自然な手だとは思うんですが、実は苦しくてもギリギリまで銀で睨んでおいて、後手に手順に△44歩を指させないようにしたまま指し進める順を探した方がよかったんじゃないかと思いました。な~んて勝手な事を言っていますが、じゃそれでは具体的にどういう構想があり得るかというと…分かりません(&p゚ω゚*)。。この局面、難しいよおおお。。

 というわけで、気がつくとこう着状態、その間に後手渡辺さんが綺麗に駒組みをして、どちらかという先手の方が駒の連結が良くない感じに。まずい手があったわけではないのかも知れませんが、後手にまとめさせたのは最初の分岐点だった気が。そして次に、いよいよ形勢が傾いたように見えたのは、糸谷さんが駒組みで差をつけられたところで、それを挽回しようとしたのか、大駒を打ち込んで攻めに行って先手を取りに行ったところで、渡辺さんがその手を全部消したときなんじゃないかと。受け潰してから、着実な手をひとつひとつ丁寧に成立させて反撃!!しかも、糸谷さんは相居飛車のつもりで序盤で指した飛車先の歩の突き出し▲26歩にまでつけこむという、よくぞそんな小さい所にまで咎められるなというほどの、渡辺さんの見事な指し回し。結果、98手にて後手渡辺さんの勝ち!!

 将棋自体は高度すぎて、文句のつけようがないというか、めっちゃくちゃ凄かった!面白かったです。勝敗の行方は、今日の対局の指し手そのものというよりも、もっと前のところにあったのかも。この竜王戦を見ている人はみな感じている事だと思うのですが、序盤の駆け引きのところでリードするのは、すべての対局で渡辺さん。糸谷さんは常に定跡形を避けようとしているように見えます。これって、「定跡形で進むと渡辺さんの研究にハマるから避けよう」という考えが背景にあるんでしょうね、きっと。しかしその理屈だと、糸谷さんは、プロ棋士が積み上げてきた棋譜や研究の結果、最善手のはずである定跡を序盤で選択できない。プロ将棋の場合、序盤はやっぱり研究できるところまでは研究して、課題局面で自分が最善と思う手を指して善悪を問う…というふうにしないと、毎度毎度その時限りの棋譜になっちゃうかも。序盤で差をつけられてそのまま離されて完封、という将棋がこれだけ続くと…糸谷さんは、盤の前に座る以前のところで、方針を変えないといけないのかも知れません。


第42期女流名人戦リーグ 甲斐智美 vs 香川愛生 (力戦)

 昨日は、女流名人戦リーグの9回戦最終局の一斉対局。昨日の対局前には、清水さんと上田さんと香川さんに挑戦の可能性があったのかな?でもって、▲甲斐-△香川戦が、序盤に面白い事になってました。

20151118女流名人リーグ_甲斐vs香川_力戦8手 際序盤、先手の甲斐さんが三間飛車を匂わせてところで、後手香川さんがなんと△44角(8手目盤面図)!!おおお、香川さん、序盤で新しい戦型でも編み出したか?!僕は振り飛車をほぼ指さないので知らないんですが、相振り飛車にこういう指し方があるんでしょうか。しかしこれ、シロウト的には、角頭銀を狙われるとどうなるんだ…と考えてしまいます。先手は角を直撃しつつ自陣は綺麗に美濃に囲えそうですし。。僕がどちらかというと持久戦志向な棋風、序盤の桂頭と角頭はかなり気を遣う性格なもので(後手角換わりの桂跳ねですら嫌^^;)、ちょっとこれはデンジャラスな手に見えました。香川さん、急戦狙って早期決着を狙う方針かな?(追記:コメント欄から、手の意味を教えていただきました!曰く、「△4四角は向かい飛車にしますよという手で ▲6六歩と現状先手の角が使えないのと▲7五歩と三間飛車を匂わせる手に呼応した。この場合端の交換も後手の得になっていて美濃にも組みづらい。だから三間飛車VS向かい飛車になると先手が不利になる 」との事です。えっと、仮に△44角以下を先手三間飛車vs後手二間飛車で指し継ぐと…▲78飛△22飛▲74歩△同歩▲同飛△42銀▲54飛(短騎ですが飛車で攻めを繋ぐなら一歩得にもなるこれが自然な気がしますが、ここは色々ありそう)△53銀▲74飛…ああ、これ以上先手の攻めはつながりそうにありません。ここから後手が△24歩とかで反撃、仮に先手が美濃に組むとすると△44角が玉頭と端を睨んでいるという事か、なるほど~。相振り飛車は難しいなあ。。書き込みいただきましたtibigame様、有難うございました!)

▲48銀△84歩▲56歩△85歩▲57銀△53角
 対する甲斐さん、露骨に中央から角を咎めに行きました!しかしその咎め方が凄い。なんと左銀ではなく右銀で行ったあ!!飛車先突破を計算しなくてはいけないハズなのに、すげえなあ。かなり読みを入れてからでないと、ちょっと怖くて指せない順に見えました。里美さんは別格としても、清水さんや甲斐さんはやっぱり強いわ。しかし香川さん、いきなり角をそこに引くようでは、△44角の主張どころか、11~99の先手の角のラインがヤバくないかい?それとも、3手角が最初からの狙い?う~ん、シロウトにはわからん。。(追記:ここもコメント欄から手の意味を教えていただきました。「(三間飛車VS向かい飛車になると先手が不利になる)それを嫌って居飛車にして攻めるなら右銀ということで、振り飛車にしてみなさいと▲4八銀と繰り出した」。なるほど~。居飛車党の僕の感覚では、後手の飛車先の歩の交換は▲78金または▲77角で守り、▲66歩を指している以上▲78銀~▲67銀でまずは歩を支え、そのまま後手がしかけてこないようであればそのまま銀を伸ばして玉頭銀…じゃなくて角頭銀、みたいな対四間飛車戦で出てきそうな手が最初に見えてしまいます。でも、こういう抑え込み的な僕の感覚自体が振り飛車にそぐわないというか、居飛車党的なのかな?仮に「振り飛車にしてみろ」が右銀の狙いだとすると、相手が振り飛車メインの香川さんだからという駆け引きもあったのかも。じゃ、普通に居飛車で来られたら?やっぱり▲48銀は危険な手に見えたのですが…▲57銀以下、香川さんのように角を53に引かず、普通に後手が居飛車で飛車を活用しに来たとすると、△86歩▲同歩△同飛▲78金で、ここで角を53に引いては本譜とほぼ合流なので手を変えるとして、飛車先の歩を交換したことに満足して△82飛。ここで先手が場をおさめるなら▲87歩で一段落…かと思いきや、次に本譜と同じように後手の44の角を咎めて▲65歩で角をぶつけるのか!いやあ、右銀の攻撃参加は、振り飛車を誘発するどころか、後手が居飛車で指し継いだとしても先手満足の展開になるのかもしれません。先手が左辺を受けつつ44角を咎めに行く順しか考えていないのですが、他にも先手からは飛車を先に振るとか、振ってからら居玉を避けておくとか、色々とありそうですね。何となくですが、甲斐さんの指した▲48銀~▲56歩~▲57銀(もしかすると定跡?)は、44角を咎めるのであれば、後手が居飛車にしようが振り飛車にしようが先手不満なしの構想な気がします。この時点でやっぱり44角は作戦負け気味というか、既に負担にしかなっていないように見える…のは僕の形勢判断が甘いでしょうか(^^;)。。自然に33に引くようでは単なる手損、何やってるんだかわかりませんしね。つまり△53角は、良し悪しは兎も角、△44角の構想を貫いた手だったのかも。でもそれで悪いようなら、やっぱり△44角は作戦負けだよなあ…。)

▲65歩
 これはいずれ先手の攻撃の本筋となる手ですが、今やるのか!!次の△86歩が見えているというのに…。甲斐さんはかなり慎重な棋風という印象だったんですが、今日はかなり積極的。という事は、攻め合いになっても行けると見ているのでしょうか。

△75角▲58飛△86歩▲同歩△同飛▲76歩
 香川さん、明らかに攻めさせられてますね。しかし素晴らしいのは先手甲斐さんの▲76歩。一瞬なんだこれはと思ったのですが…ああああ、なるほどこれを△同飛として飛車筋が逸れてくれれば▲11角成が無条件に決まるのでほとんど先手勝勢というわけか!!いやいや、おっかねえええ。手なりで指したら最悪の事態になるところでしたね(^^;)。

△42角▲11角成△89飛成▲78銀△82龍▲21馬
 香川さんは冷静に角を引きましたが、それでも甲斐さんは角の成り込み、攻め合いを選びました!攻め合わないという手もあったと思うので、甲斐さんの読みを信じるとすれば、既に先手よし?実際、後手は龍を作ったとはいえ、馬のラインが利いていて、香も拾えずにすぐに自陣に引き上げました。いや~、序盤の香川さんの奇襲は失敗かな?

20151118女流名人リーグ_甲斐vs香川_力戦37手 少し進んで37手目盤面図。もっと超急戦、下手すると超単手数で決着するぐらいの将棋になる可能性すらあったんじゃないかと思ったんですが、意外といい勝負です(^^)。しかしここで香川さんが指した手は…

△52金右(38手目)
 うわ、手を戻しちゃったよ。。しかも、これはなんというか…僕には一手パスにしか見えませんでした。なるほど、意味としては▲55歩が案外厳しいと見たわけですね。しかし自陣に手を入れるなら中央で囲うよりも玉を寄せるべきの気がします。その前に、居玉のまま急戦を仕掛けた以上は、攻めの手から考えないとメチャクチャじゃないかい?▲55歩をケアしつつ攻めを継続するなら△44角以外にないというか、ひと目それしかない思いますが、そのあたりから考えないと嘘じゃないかい?なんかまずい筋があるのかなあ…。

▲77角
 あああ、先手に先に攻防の角を打たれてしまいました。えっと、これを受けるとすると…

△44角▲55歩△同角▲66銀△44角▲54飛
 いや~、先手から見れば変化の余地なしの一直線、これはもう先手良い気がします。だとしたら、ここで後手に違う変化があったかどうかという感じですが…ムズカシイ。すくなくとも、この順以外で▲33角成と▲55歩を同時に受ける筋があるようには思えません。だとしたら、やっぱり38手目で悠長に一手パスなんてやってる場合じゃなかったんじゃなかろうか。

 ここから先の香川さんの指し回しはなんというか…バラバラに見えました。僕はアマ3段程度なので、とても強いとは言えない棋力ですが、それでも僕と同じぐらいの棋力の人なら「これはちょっと…」とみんな言うんじゃないかと。結果、107手にて先手甲斐さんの勝ち!!

 う~ん、なんというのかなあ…。序盤で未開拓の戦型にチャレンジするのは素晴らしい事だと思います。この将棋、最初に△44角と指したときは、「おおお、これでどう攻めがつながるんだ?狙いは何だ?」と、ちょっと期待してしまいました。しかし終わってみると…香川さんの主張は何だったのか、僕にはちょっと分かりませんでした。細かい変化筋ではなく、こういう新戦型といってもいいほどの大きい所での新手って、中央の位と角筋を通すゴキゲン中飛車とか、居飛車に十分な形で組ませない形にできる藤井さんの角交換四間飛車とか、何らかの主張があってこそ、と思うんですよね。それであれば、その主張が成立するかどうかを精査するに値する棋譜となると思うんですが、こういう主張自体が何だったのかというものだと、ただこの1回の将棋だけのかく乱戦術にしかならないんじゃないか、と思ってしまいました。女流と言えどもお金を取って人に見せる将棋でこういう棋譜を残すって…。
 また、悪くなって以降の香川さんの指し手がちょっと…。龍を抜かれる順を覚悟しながら相手の角を抜きに行ったかと思ったら、それを取らずに受けの歩を打ったり、ふたつの戦場が一手を争う状況になっている時に、またしてもほとんど一手パスのような歩の突き出しをしてみたりという感じ。もしかすると複雑な局面を作り出そうとしたのかもしれませんが、しかし選択肢の増える局面を作るとか、相手が緩手を指したら速くなる順を用意するとかでないと、予想外の手を指したところで無意味なんじゃないかと。
 ひと月ほどまえも、香川さんは里美さんとのタイトル戦でいきなり奇抜とも言えそうな袖飛車を使ったものの、飛車を歩一発で止められ、単手数で仕留められてました。これも主張の見えない将棋のうえに、少し悪くなるとすぐデタラメに暴れに行っちゃってさらに悪くした将棋。ちょっとどうなのかな、と思いました。

 プロというのは、いくつかの意味があると思います。「その筋の達人」という意味と、「それでお金を稼いでいる人」という意味。将棋に限らず、スポーツでも音楽でも、プロというのは「その筋の達人」というのが絶対条件であって、「それでお金を稼いでいる人」という所は、絶対条件を満たした上での付加条件であると思っています。金物屋のプロが、ろくに切れもしない包丁を作っておいて、それを売ってお金を稼いでいたからと言って、だれもその人を「プロ」とは呼びたくないでしょう。音楽家だって、仮にその人がCDを売って生業にしていたとしても、彼の演奏がアマより下手だったら、だれも彼を「プロ」とは呼びたくないでしょう。AKBは音楽で稼いでいるという意味では、日本一のプロです。しかし、彼女たちの歌や音楽を「プロ」と思う人は少ないんじゃないでしょうか。では、将棋でお金をもらっている人は、どうする事がプロなのか。昔羽生さんが、「勝ち負けだけでいいならじゃんけんでもいい」なんて言ってましたが、これは至言だと思います。僕は、良い状況で終盤になだれ込んだ時の香川さんの将棋は凄いな、といつも思っています。でも、なんというかな…将棋なんて2回に1回は負けるのが普通のゲーム、負けてもいいと思うんですよ。また、勝ちに拘らないといけない大一番という対局も、中にはあるでしょう。しかし、そういう対局で、連続してこういう将棋を指されると…。
 羽生さんや康光さんみたいな手や順を発見出来ないとか、それは仕方がないと思います。しかし、もっと根本的な所…強い弱いではなく、プロは将棋をどう考えるべきか、というもっと大きなところを、もう少し考えて欲しいな、と思ってしまった一局でした。ああそうそう、この裏で、清水さんが渡部さんに完勝、里見女流名人への挑戦を決めました。おめでとうございます!!


第65期王将戦挑戦者決定リーグ 久保利明 vs 糸谷哲郎 (四間飛車 先手藤井システム)

 王将リーグ、混戦です(^^;)。全員が強豪なので、リーグだというのに捨て試合がひとつもなく、見事な棋譜の連続です(^^)。今日は久保vs糸谷戦がありました。どちらも一敗同士の暫定首位なので、ここでどちらかが一歩後退するのか、これは大一番!

 将棋は先手久保さんの藤井システム。最近、角道を止める四間飛車がリバイバルしてますね。僕は対藤井システムには「急戦を見せて、相手が美濃に入ってくれればそこで穴熊、入ってくれなければそのまま急戦」という、いちばんありがちな古い手を使っておりますが(・ω・)、糸谷さんはお構いなしに穴熊に行きました!いや~、これは勉強になりました。

20151116王将65リーグ_久保vs糸谷_先手藤井システム26手 26手目盤面図、きっと居飛車党の人なら、級位の頃に、ここから▲45歩△同歩▲同桂という四間飛車の典型的な手口に50回ぐらい負けたことがあるんじゃないかと思います(^^;)。僕的には、これは既に中盤の超重要ポイント、ここはプロがどう指すのか見て見たかったっす。やっぱり、トップ棋士に振り飛車党の人が居てくれると、こういうのを観れるからありがたいなあ。

▲45歩△42角
 うわあ…玉のコビンを開ける手だけはないと思っていたんですが、開けてしまう?!これ、先手が角道を開けるといきなり嫌な縛りをつけられちゃうんじゃないのか?

▲65歩△33桂
 いや~、桂でコビンを閉じても、玉を角のラインに入れられている限り、この桂を跳ねられませんよね。これは、居玉のまま端から居飛車陣を崩す藤井システムのツボに入ったんじゃ…

▲44歩△同銀▲45歩△同桂
 最後の△45同桂は重要なところで、△45同銀は問題外としても、銀を引いても▲25桂あたりがひと目嫌な感じ。居飛車は囲い切るまで凌げるかどうかが最初の山になりそうです。

▲同桂△55歩
 さいごの△55歩の合駒で何とか角のラインが止まり、後手居飛車は四間飛車の典型的な攻め筋を凌ぎました。いやいや、中盤の入り口で先に猛攻を喰らう状況になってでも穴熊に行くんですね。ノーマル四間飛車相手で、わざとこの筋を見せておいて居飛車から角交換する、振り飛車から角交換させる、攻めを督促しておいて受け潰して大きく駒損させる…な~んて手もやった事がありますが(初段ぐらいの頃かな?)、それが成功するよりも、しくじって取り返しのつかない事になる事が多かった記憶があります。う~ん、藤井システムに対していきなり穴熊は自分では指さない順なので、すごく勉強になりました(^^)。

 しかし、ここからの久保さんが凄かった!捌きのアーティストというよりも、捌かせて逆に自分の大駒を捌いた…みたいな格好、さらに藤井システムの典型的な端攻めを絡めての挟撃!この中終盤戦、互いにさすがはプロ将棋という絶品の指し回しで、凌ぐ糸谷さんも攻める久保さんも、どちらもすごい!!しかし久保さんの攻めが強烈で、後手に反撃する暇を与えないまま、一気に寄せてしまいました。結果、先手久保さんの勝ち!!

 現在僕は、タイトル戦プラス少ししかプロ将棋を見れない状況になっています。トップ棋士のほとんどが居飛車党であるために、必然対抗形の最前線をあまり見ることが出来ていないんですが、それでも最近は角道を止める四間飛車をチラホラ見かけます。今日の、藤井システムに対してそれでも急戦を見せずに熊りに行く将棋は、すごく興味深かったし、面白かった。勉強にはなったんですが、やっぱり最後まで穴熊に組ませて貰えずに、そのまま寄せられてしまいましたから、居飛車の作戦負けに見えたのも事実。やっぱり僕は、古いと言われようとも藤井システム相手には急戦を見せつつ慎重に駒組みでいいや(゚ω゚*)。

 さて、これで王将リーグの1敗は久保さんと羽生さんのみ。久保さんが5勝1敗でフィニッシュしたので、この両者以外の挑戦の目は消えました。しかし羽生さんはまだ2局も対局を残していて、その相手は森内さんと渡辺さん。いや~、これに連勝したうえで、プレーオフで久保さんにも勝たないといけないというのは、如何に羽生さんと言えどもちょっとハードすぎ…ですが、羽生さんはこういう事をやっちゃいそうだからおっかないんだよな(^^;)。。


ああだめだ

 忙しいです。めっちゃくちゃ忙しいです。今でこれだと、12月はどうなってしまうんだ(>_<)。自分の職業は、大好きで、一生懸命頑張って、ようやくなることが出来た職業なので、忙しいのは有り難く思わないといけませんよね。それは分かってるんです。でも…将棋指したいいいい!!!

第74期順位戦A級 森内俊之 vs 渡辺明 (相矢倉先手早囲い)

 うああああ、渡辺さん、負けたああああ!!!これからすぐ仕事に行かなくてはいけないのでちゃんと見れていないのですが、森内さんが先手早囲いに出て、▲46銀と出た所を後手が△45歩と押し返す、最近これで矢倉が後手有利と思われた形で押し返されたんですが、ここから先手森内さんが勝ち!1分ぐらいでババッと見ただけですが、先手完勝に見えます。

 やっぱり矢倉最強は森内さんだろうか。渡辺さん、これで痛恨の2敗目を喫してトップ集団から陥落、一方の森内さんは渡辺さんを引きずり降ろして3勝目、名人挑戦の目は十分にあり。いや~、今日は早く仕事を終わらせて、この将棋の棋譜を自分なりに研究したいけど…帰って来れるかなあ。


第65期王将戦 挑戦者決定リーグ 糸谷哲郎 vs 深浦康市 (角換わり)

 A級順位戦よりも過酷なんじゃないかというほどのメンバーとなった王将戦の挑戦者決定リーグが面白いです(^^)。全勝は久保さんと糸谷さんだけ。その糸谷さんが深浦さんと対戦だったのですが、この凄すぎるメンバーの中では深浦さんと言えども比較的倒しやすい相手かと思ったのですが、とんでもありませんでした。

20151109王将65リーグ_糸谷vs深浦35手 35手目盤面図、角換わり相腰掛け銀から後手が9筋の歩を突き越したところ。相腰掛け銀はどうせ手待ちになるのだから、端の位は取れるものなら取っておいた方が良い、な~んて個人的には思ってました。定跡書でも、そういう説明をしていたものがありましたしね。しかしここからの後手深浦さんが凄かった!!

△62飛▲67金右△84角
 いや~、先手での自陣角はよく見るし、自分でもやっていたのであまり違和感がなかったのですが、後手から自陣角か!しかしこれ、桂頭を守るために打ったのだとしたら、少し勿体ないような…

▲68金寄△65歩
 なんと、後手が先着!!いや~なるほど、9筋の位を明け渡す事と引きかえに、先手は9筋で2手使うから、手数が逆転するのか。

▲同歩△同桂▲66銀△73角
 そしてここで角筋を変えたああああ!!いやあ、最初のありふれた盤面図から10手も進んでませんが、これは先手厳しくないかい?次の△46角がとにかく受けにくいです。▲47銀では4筋の歩を突かれて受けになってないし、▲48飛でもやはり4筋の歩を突かれたら馬を作られるところまで一直線、やはり受かりません。という事は他に代償を求める事になりそうですが、これは如何にプロ将棋が長時間と言えど、1日で結論を探すのは難しいんじゃないかと。深浦さんこれは見事、あまりに鮮やか過ぎて研究じゃないかと思いました(^^)。

 そしてここからも深浦さんの指し回しが素晴らしく、まるで絶好調時の森内さんかと見間違えるぐらいに、相手の手を全部消していく激辛の指し回し。先手にグスッとも言わさず潰してしまいました。結果、136手にて後手深浦さんの勝ち!!

 渡辺さんだけでなく、深浦さんも角換わり研究で素晴らしい実績のある人で、たしか角換わりを原動力に羽生さんからタイトルを奪った事があるほど。角換わり相腰掛け銀は研究がものをいう所があって、知らない筋に入り込むとコテンパンにやられてしまう事も。現在の竜王戦やこの将棋を見ると、糸谷さんは、渡辺さんや羽生世代のA級棋士という一流どころと正面から当たると、序盤研究では大体負け。また、自分が良さそうでも悪そうでも、逆転将棋を狙うような、かなり妖しい手を放ってくる気がします。この将棋でも、かなり難しい手を指していて、僕はどう応手してよいか分からなかったんですが、深浦さんが見事に切り返して「あ、なるほど」という感じで、むしろその妖しい手を放ったがために形勢を更に悪くしたように見えました。いかに豪腕と言えども、相手が間違えてくれないと将棋は逆転できないと言いますから、やっぱり序盤攻略は課題なんでしょうね。ここを克服しないと、本当に強い人にはなれないんだな…な~んて、糸谷さんの将棋を見て自己反省するのでした(^^;)。あ、そうそう、王将リーグのもうひとつの対局では、久保さんが羽生さんに敗れ、全勝がいなくなりました。う~ん、今期の王将リーグ、やっぱり面白いっす(^^)。。


第28期竜王戦 第3局 渡辺明 vs 糸谷哲郎 (一手損角換わり)

 1勝1敗のイーブンに戻った竜王戦。第3局は糸谷さんが後手番、ということは…きたああああ、一手損角換わりだああ!!一手損角換わりの勉強をちゃんとしようと思いつつ、機会がないままここまで来たんですが、この竜王戦こそその機会。これは糸谷さんに感謝です。

20151105竜王28-3_渡辺vs糸谷_一手損角換21手 とはいうものの、一手損から序盤は▲棒銀-△腰掛け銀or右玉的な展開。最近のプロ将棋だと、先手早繰り銀よりも、先手棒銀を見る機会が多い気がするのは気のせいでしょうか、これだと早繰り銀ばかり研究している自分の定跡勉強とリンクできないぞ(^^;)。。さらに序盤も序盤、21手目盤面図の局面で早くも糸谷さんが趣向を凝らしてきました。

△44歩
 えええええ、△14歩で棒銀を受けないのか?!
いや~、角換わり棒銀は後手が△14歩と受けておくと、大体後手は受け潰しが利くもんだと思ってるんですが、先手の主張を全部通させる?

▲15銀△22銀▲24歩△同歩▲同銀
 先手、棒銀の第1段階は成功。そうそう、矢倉棒銀の受けでも△22銀みたいな受けは出てくるんですよね、懐かしいなあ。そして△23歩と受けて取りあえず一段落…

△42飛
 うあああ、今度こそ信じられない、またしても糸谷さん受けず!!糸谷さんは、同形腰掛け銀で歩の突き捨てを変な順で入れたり、序盤で驚くような構想を見せる時がありますが、これはさすがにどうなんだ?▲23歩と打ち込まれると痛すぎる利かされ、▲23角なんてたぶん破れかと思うんですが…

▲36歩
 いや~信じられない、渡辺さんいったん見送りました。これは嫌なものを感じたか、何かハメ筋があると警戒したのかも。無責任な観客としては、打ち込んでどういう罠があったのか、見てみたかった(^^;)。

 さて、1日目の午前から波乱含みの展開、これはどうやら序中盤は渡辺さんペースで展開しそう、問題は糸谷さんの終盤力で逆転があるかどうか、かな?

◆◆◆◆◆◆
 結局、糸谷さんは初心貫徹で△23歩を打たず、打ったのは渡辺さんでした。意地の張り合いなのか、「最初のチャンスは見送る」というやつなのか、アマでは分からない何かがあるんでしょうね。しかしここから将棋が二転三転、僕の棋力ではまったく理解できないグッチャグチャの展開に(^^;)。▲23歩は大きな利かしかと思ったんですが、別の見方をすると飛車先が重くなったとも言えそうで、先手は攻めの飛車銀がうまく捌けず。この右辺での攻撃を通すために先手は3筋の歩を突きあげたんですが、これが複雑な局面を作り出します。僕の理論では、早繰り銀の長所はいきなり角頭ズドンで短所は飛車のコビンが空く事、棒銀の長所は飛車のコビンを閉じたまま攻撃できる点で短所は銀が捌けなくなることが結構ある事、なんですが(テキトウ)、これで攻撃はつながったが後手にも反撃筋が発生。さらに、渡辺さんがはやい段階で88に入城したものだから、これで△55角の両睨みという反撃筋が生まれる展開に。なんで渡辺さんは88へはやめに入城したか。これが分からなかったんですが、答えは57手目以降の指し手にありました。

20151105竜王28-3_渡辺vs糸谷_一手損角換56手 56手目盤面図、後手が△55角の両取りから19の香を素抜き、中央に戻ってきた後に先手陣の小競り合いがあった後の局面です。先手はまるまる香損、しかも馬を作られ、これが攻防にも利いてきそうだし、玉のラインに入れられてもうるさいし、とにかく威張られそう。この局面、ひとめ▲34桂と打ち込んで飛車に当てつつ22の地点を突破できるか考えたい所ですが、△32飛や△36馬が見えているだけに、通るかどうかはちょっと微妙、破れば決め手になりそうですが、この戦場に負けると敗着にもなりそう。さて、渡辺さんはここでどう指したかというと…

▲22歩成
 単刀直入、飛車交換に行ったあああ!!!
いや~、飛車交換したからといって、次の▲32飛の打ち込みの王手は飛車合いされてむしろ敵玉を固めさせちゃうだけだと思うんだけど…交換したとして、本当に先手得するのか?

△同飛▲同飛成△同銀
 糸谷さんは、シンプルに飛車交換に応じました。この飛車交換に応じるかどうか、糸谷さんは30分以上考え、さらに昼食休憩を挟んでの決断。ご飯を食べながらも考えていたでしょうから、実質的には1時間半ほど使った決断だったと思います。この次に、今回の竜王戦第3局の記憶に残るだろうとんでもない手が…

▲55桂
 うあああああ、なんだこれは(゚д゚ノ)ノ !!!えっと、解説によると、「△5五同馬でタダだが、▲4一飛が金桂香の3つの駒取り」だそうで。う~ん、そこまで説明されても、ちょっとピンとこないな、そうなったとして、先手はどの駒を抜きに行く?

△54桂
 いや~、これも指された瞬間に唸ってしまいました。プロはやっぱりすげえ。▲55桂もまったく見えなかったし、この△54桂もまったく見えなかったよ(゚ω゚*)。普通は一番抜かれて嫌な43の金を守りに行きそうなもんだけど、その金を抜かれた後の飛車を寄せる順を考えているのか。。これ、めっちゃいやらしい手じゃないかい?いったん受けようにも受ける手がないじゃん…

▲43飛成△66桂▲77金上△28飛▲68歩△52銀▲42龍△41香
 渡辺さん、糸谷さんの要求する筋にそのまま乗った!!すげえ、これは「僕が読み勝ってますよ」ということでしょうか?アマの僕には、あそこまで苦労して捌いた飛車を確保される順なんて、選べません(゚∀゚*)エヘヘ。。でも…ほかに違う手もなさそうか、ここは一直線だったのかも。

20151105竜王28-3_渡辺vs糸谷_一手損角換73手▲95角(73手目盤面図)△73歩▲74歩
 いやあ、この角打ちもすごい。王手と同時に62の歩に紐をつけてる攻防手なのか。。△94歩の一手が入れば追われるわけですが、その前に白黒つけるという事ですね。これは渡辺さん、勝ち筋が見えたと見た( ̄ー ̄)。

△42香▲73歩成△同金▲74歩△51玉▲66金左△45馬▲73歩成
 いや~、右玉を右辺から崩しました、渡辺さんの駒が躍動しまくってます(^^)。しかし、飛車を抜かれ、右辺は止め駒が少なすぎ。。こうなると、入玉を阻止できるかどうかという将棋になってしまいそう。。これを止めるのは僕にはとても難しそうに見えたんですが、しかしこれをものの見事に仕留め(これがまたすごかった!!糸谷さんが紛れを求めて指した手をまったく相手にしなかったのがカッコよかった^^)、123手にて先手渡辺さんの勝ち!!

 実は途中、渡辺さんの手に一貫性がないんじゃないかと思ってみてました。しかし飛車交換に行ったときに全てが氷解。一貫性がないどころか、渡辺さんは棒銀から飛車を捌くという構想を首尾一貫させていたんじゃないかと。だから、△55角なんていかにも危険そうな手を喰らう筋が見えているのに、飛車の打ち込みに備えて矢倉に入城。飛車交換を果たした後は、とんでもない桂捨てをしてでも飛車の打ち込み筋を作る。桂香ぐらいの駒損と引きかえに敵陣への飛車の打ち込みが成立するなら、右玉相手なら自分が良いだろうという大局観が最初からあったのかも。さらに、矢倉入城は、堅く囲ってから攻め潰すという自分の棋風とも合っていたと。アマからすると、ちょっと思いつかないような色々な奇手を織り交ぜながらの強引な模様のはり方、これはとても真似できる将棋ではないなあ(^^;)。

 さて、これで渡辺さんが2勝1敗で一歩リード。この竜王戦は3局とも中盤までに渡辺さんが作戦勝ちになっている印象があります。第1局こそ持ち前の終盤力でひっくり返した糸谷さんでしたが、相手はトッププロなので、そうそう毎度毎度ひっくり返すのは難しいかも。糸谷さんは戦型も限られているので、渡辺さんみたいな用意周到な棋士には対策が立てやすいのかも。糸谷さん、なんとか序中盤を互角で乗り越えるよう対策しないと、この竜王戦は厳しいかも。


第65回NHK杯 行方尚史 vs 藤原直哉 (向かい飛車)

20151101NHK_行方vs藤原_向飛車72手 今日のNHK杯は行方さんが凄かった!将棋は居飛車穴熊vs振り飛車美濃の対抗形になったんですが、72手目盤面図なんか、後手が抑え込みにほぼ成功、先手ジリ貧の完封負けかと思ってました。いくら4枚穴熊に囲えたからと言って、大駒も桂香も全部抑え込まれていて、攻め駒が全然ないじゃん。。しかも大駒を抜かれ無条件で抜かれそう。ここから行方さんがどうしたかというと…

▲同飛△36銀▲17飛
 飛車をぶつけて飛車交換狙い!なるほど、飛車でも角でもいいから、とにかく大駒を捌かないと先手は勝負になりません。逆に言えば後手は捌かせたくないのでこれを拒否。そして飛車を1筋に回して1筋突破を狙う、と。「穴熊に囲ったら、多少駒損しても大駒を捌きに行け!」というのは、僕が渡辺さんの本で勉強した金言でした(^^)。

△47歩成▲75歩△27歩▲74歩△64角
 う~~ん、ここでの行方さんの方針の立て方も凄く勉強になりました。△27歩ですでに飛車または角の詰めろですが、ここで大駒を取らせる代償に、後手陣に攻めの拠点を作ります。いやあ、なるほどなあ、さすがは今期のA級1位だわ。

▲39角△45銀▲37歩△38歩▲14歩
 今度は、角を渡す代償として1筋突破を請求。大局観としては、大きく駒損しますが、玉頭に攻めの拠点ができ、大駒が捌けた自分と、駒得はしているが4枚穴熊を崩さなくてはいけないあなたのどちらが良いですか?という事ですよね。いや~、あのジリ貧一直線に見えた状況からわずか数手でここまで持ってくるか…。う~ん、行方さん、やっぱり強いわ。居飛車穴熊を指す僕なので、この構想力はものすごい勉強になりました。逆に言うと、これは先手に望みが出てきた状況なので、この局面で藤原さんはもう少し良い指し回しが必要だったかも。でも、そんな指し回しがあったかどうか分かりませんが(^^;)。

 そして、飛車を捌いてからの行方さんの指し回しが驚異!!持ち駒は桂と歩だけ、攻め駒はまだ捌き切れていない飛車だけだったというのに、歩と桂の打ち込みだけで相手陣を翻弄して敵玉を美濃から引きずり出し(!)、これまた歩の突き出しだけで飛車交換を成立させて飛車を捌き、そこから飛車の打ち込みで王手をかけて手番を握ります。極端な言い方をすれば、歩だけで敵陣をグッチャグチャにして、手番を得て、相手の駒の働きを悪くしてしまいました。いや~、この歩の使い方は凄いわ。

20151101NHK_行方vs藤原_向飛車101手 でもって、ここからが2年で一気にA級1位にまで登り詰めた恐怖の行方終盤の攻撃術!101手目盤面図は飛車の打ち込みを成功させた場面ですが、多分これは龍を作って威張るという以上の構想を既に持っていた一手でした。ちなみに、この時に行方さんはすでに秒読み状態。

△62玉▲54飛成△45角
 後手は本当は美濃の中に逃げ込みたいところだと思うんですが、しかしそれでは▲63歩成が激痛なので△62玉は仕方なし。ここでも歩の攻めです。そして▲54飛成で龍を作って一段落かと思いきや、藤原さんの角の打ちこみが攻防手の見事な切り返し!!かと思いきや…

▲12と
 えええ!!てっきり▲65龍と逃げつつ63への攻め駒を増やしつつ金に紐をつけつつとやるのかと思ったんですが、逃げずにじっと香を補充しに行く?!いや~、これは何という事だ、これ、龍と角の交換をされるとどうなるんだ…

△59飛▲11と△54角▲同歩△同飛成
 △59飛?!ああなるほど、ここで後手藤原さんの構想は、飛車を打ち込んでから飛車引きで龍を自陣に引きつけての自陣の整備。ついでに先手の龍と自分の捌き切れそうにない筋違い角を交換し、これは綺麗な構想。さすがはプロ、C級といえどやっぱりすげえなあと思ったんですが…

▲82角
 うああああああ何だこれはあああ(゚◇゚;)?!!!!ここ、井上さんが解説してましたが、▲55香で龍角の串刺し狙い。タダじゃんと思って△55同龍と取れば、▲63歩成で龍を素抜けます。いや~これは強烈、秒読みの中でこれを狙ってたのか、A級1位は伊達じゃないわ。。で、こんなの喰らったらおしまいでしょうから、後手は何か良い手で返さないといけませんが…

△93香
 あ、藤原さん、これはさっきの筋を見落としたんじゃないかと。やってしまいましたね( ̄ー ̄)。まあでもこれは秒読みに突入していたし、一見すると香を抜いて馬を作る手と錯覚するのも仕方ないのかも。逆に、早指しだとプロでも見落としがあるんだなと、ちょっとほっとした所でもありました(^^)。以降は行方さんの怒涛の寄せが決まり、135手にて先手行方さんの勝ち!

 最後の△93香ですが、その後に藤原さんは「しまった」という顔をしていたので、やっぱり見落としてたんじゃないかと。かといって代えてどういう手があったかというと、△73歩の合駒は、さっきじっと補充された香車が思いっきり炸裂して▲63香が王手金、銀で取ればと金まで出来て先手が躍動、これは△13香より悪いかも知れません。じゃ、手抜いて攻めるといったって、相手は鉄壁のビッグ4、王手をかける事すら難しいっす(>_<)。というわけで、▲82角を喰らった時点では、もしかすると後手は既に敗勢だったのかも。いやあ、A級棋士の終盤力のオソロシさよ。。

 今日は、居飛車穴熊の方針の立て方、歩の使い方、そして細い攻めのつなぎ方と、勉強になるところが満載の対局でした。面白かった(^^)!!


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ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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