第64回NHK杯 大石直嗣 vs 稲葉陽 (相掛かり)

 稲葉7段というのは、個人的にはすごく思い入れのある棋士です。というのは、プロ将棋というのを見始めた頃に見た、稲葉さんと丸山さんの対局が凄く面白かったから。。たぶん、2年ぐらい前のNHK杯だったんじゃないかなあ。後手の丸山さんが仕留めたと思ったところで稲葉さんがまさかの入玉狙い、これで形勢がひっくり返ってしまったのでした。そして最後に稲葉さんが丸山玉を仕留めに行った時、なんか丸山さんの顔を横目で何度も見るんです。それが「参ったか」みたいな顔に見えて、すごく印象に残っている。そんなわけで、稲葉さんというのは、何となく好きな棋士になったんです。

 そして、きょうのNHK杯も面白かった!戦型は相掛かり。僕は相掛かりの勉強が全然追いついていないので、すごく勉強になります(^^)。そして…先手の大石さん、なんと相掛かりから右玉を構想!!いやあ、相掛かりの定跡勉強が出来ていないとはいえ、タイトル戦で何番も見てきました。相掛かりから右玉なんて見た事がないぞ。。これは、途中で角交換が入ったから、という事かな?あるいは、解説が右玉の使い手である糸谷さんだからサービスでやったのかなあ。そんなわけで、稲葉さん目線で見ていたはずが、途中から大石さんの構想に魅せられてしまいました(^^)。

20140831NHK64_大石直嗣vs稲葉陽58手 盤面図は58手目、角交換が入り、先手の大石さんは既に玉を右に寄せての右玉を構想しています。この盤面図自体が個人的にはすごく面白くて、先手は4~5筋で位を取っているけれども位の確保は出来ていない、2筋の歩の突き捨てが入ってるけれど、がっちり右玉に組もうというのであればそれがプラスなのかマイナスなのかがよく分からない。ここが個人的には一番面白い局面でした。実際にプロが指した棋譜は見た事がありませんが、後手から地下鉄飛車で1筋端攻めという右玉の弱点を突く手も考えられる…『よくわかる角換わり』に出ている構想ですね。そして、次の大石さんの一手は…

▲46銀左
 おお、まずは位の確保を選択しました!位取りを活かすなら5筋に飛車を振る事になると思うんですが、そうなると右辺がスッカスカだし、52の金が邪魔。7~8筋に振るなら玉を3筋まで逃がしてから右金をつけてからの方が…いやいや、考え始めると面白すぎて何時間でも考えたくなる局面です(^^)。

△76歩▲68金右
 右金を左辺に寄せた?!いやあ、これは後手からの飛車を絶対に捌かせず、かつ5筋に飛車道を通したという事でしょうが、玉があまりにスカスカすぎないかい?右玉を構想した時点で、まずは受け優先という事なのかな?う~ん、これでもし飛車を5筋に振ると、右辺がさらにスッカスカになっちゃうぞ…。

△65歩▲38玉△62金▲59飛
 うあああ、マジで5筋に振っちゃったよ。。位取りを活かすという意味で一貫性がある気がしますが、後手も地下鉄飛車になっているというのに、右から攻撃された場合に間に合うんだろうか。。△26歩~△25歩~△21飛あるいは△24銀みたいな手、その前に桂跳ね?あるいは香を先に吊り上げて1筋端攻め?みたい手は成立しないのかなあ…。

 な~んて感じで、とにかく中盤の構想合戦が面白かった!!たぶん、お互いに手将棋だったと思うのですが、やっぱり将棋の面白さって、自分で色々と考えて構想するこういう所だと思うんですよね。そういう意味で、今日のNHK杯は素晴らしく面白かった(^^)。で、終盤は右玉を崩せないときの典型というか、右玉特有のあの下段飛車がウザくてどうにもならない。それはプロの稲葉さんですらそうだったみたいで、ある意味で受け潰され、攻めを督促され、結果151手にて大石さんの勝ち、という感じでした。

 大石さんは、2期連続でNHK杯で快進撃しそうな気がします。早い段階で渡辺2冠と当たるからダメかなと思っていたんですが、渡辺さんが既に敗退と、運まである。結局、今日も日曜の午前をお楽しみしてしまったなあ(^^;)。。さあ、仕事しよう!

第73期 A級順位戦 広瀬章人 vs 渡辺明 (ゴキゲン中飛車)

 これはすごい将棋だった!!中盤以降がものすごい大死闘!後手の渡辺2冠がゴキゲン中飛車から細い攻めをうまく繋げて圧倒的優勢。どれぐらい圧倒的かというと…先手玉を完全な丸裸にし、挟撃形が既に完成していて、駒台には飛車を残し歩切れでもなく、更に銀を質駒にし、自陣の美濃は無傷という状態。こんなの、仮にここで投了しても誰も怒らないだろうと思ったのですが…広瀬さん、なんとここから凌ぎまくり!攻め合いなんて望むべくも無く、攻防手もまったくなさそうという事で、90手目あたりからは広瀬さんは受け一辺倒の辛抱を続けるんですが、この受けの強さがとんでもない。終盤で間違えないあの渡辺さんの寄せですよ、その渡辺さんが先手玉を崩せないどころか、広瀬さんの玉は受けながらどんどん堅くなり、40手近くを凌ぎつつ、桂、香、角…受けながらも反撃の下準備が徐々に整い始めます。それでも後手の渡辺さんが勝ったんじゃないかと思っていたところで、なんと147手目で渡辺さんが投了!!!いやあ、これは驚きました。広瀬さんの受けの凄さにも、詰め将棋力にもちょっと感動してしまった。『逃れ将棋』でも読んで、受けの勉強をしてみようかなあ。。

20140829順位73A_広瀬vs渡辺147手 で、これが投了図。ネット将棋の早指しに慣れてしまった弊害かも知れませんが、詰みを読み切れないで、詰め将棋でなく寄せ将棋に行ってしまう事がよくあります。で、寄せ将棋だったら、この飛車の打ち込みは怖くて指せない。先手が斜めの駒を持っているならこの踏み込みは分かりますが、しかし斜めの駒がない状態で、しかも1段飛車が辛そうな玉形で、飛車を渡す事になるこの打ち込みに踏み込んだことが凄い!読み切ってないと指せない手だと思うんですよね。でもこれ、本当に必至になってるのか?と思ったんですが…なんとこれが長手数だけど奇抜な手はなく、基本手筋だけで寄ってしまうという面白い詰め将棋(^^)。飛車を渡す事になるので、一手でも空けたら、さすがに一段飛車から一気に寄りそうに見えるので、本当の詰め将棋かも。で、ガンバって解いてみると…

△88同金▲同桂成△同玉▲73香成
 ここまでは必然。で、△73同桂は…▲74桂で即詰みだからダメか、となると…

△73同銀▲同銀△同玉
 ここも必然。…な、なるほど~、先手はこれで完全に攻め駒を精算する事になって拠点がなくなりますが、後手玉も裸になり、先手は手番を握ったまま飛金銀桂桂歩歩が残っているので、次に王手から入って攻めを継続できるという訳ですね、これは寄せがありそう。そこで74の歩の叩きなら後手は取ったり上にあがったりさえしなければ先手は駒が足りなさそう。下から飛車で追い出すのは…ダメだ、馬のラインだ。というわけで、桂で下に落とすのが必然なのかな?

▲65桂
 玉があがってしまったら簡単な詰みなので、玉は引いて逃げる事になると思うんですが、これで玉を82や62に躱すと…▲74桂で完全に逃げ場なしか。。というわけで…

△72玉
 う~ん、これも必然か。しかし、まっすぐに引く72玉は打ち込んでの押さえこみを許してしまうので、これしかないとしたら後手玉はつらいぞ。なんと、変化の余地がない一直線の寄せだったんだな。。で、今度こそ歩の叩きが入るので…

▲73歩
 なるほど~、これで先手は桂のおかわりが利くようになってしまうのか。。以下もあまり変化の余地なく、余り駒もなしの寄り、まるで作られたかのような詰め将棋です。え~っと…29手詰めぐらい?う~ん、大差負け状態からのこのまくりは凄すぎる。受け切れないと思っての無理攻めではなく、寄せ切れると読んだ上での踏み込み、あの渡辺二冠の猛攻を40手以上凌ぎながらの準備した逆襲、凄いわ。。

 これで広瀬さんは深浦さんと渡辺さんという超強豪を破っての2勝1敗、順位戦は対局数が少ないので新参で下位スタートの広瀬さんは不利だと思うのですが、これはA級に長く留まる事になるかもしれません。一方の渡辺さんは3連敗。どうも、後手番で振り飛車を採用し始めてから、渡辺さんの成績が芳しくなくなっちゃっている気がします。今年のA級順位戦は、けっこう熾烈な争いになりそうです。それにしても、面白い将棋だった!!


第73期順位戦 B級1組 4回戦

 仕事に支障が出るから、あまり将棋に夢中になりすぎてはいけない!だから順位戦もあんまり深追いしない!…と思ってきたのですが、さすがにB1も4回戦、前半戦も終了という所まで来たので、ちょっとだけ見てしまいました。ちょっとだけ。…おもしれええええ!!!いやあ、そろそろ昇級レースの展望が見えてきました。

畠山鎮 ●-○ 屋敷伸之
 おおお~、大スランプの屋敷さんですが、ようやく初日が出ました!あの強さですし、衰えるにはまだ早いので、きっとこれから巻き返してくれるんじゃないかと。しかし、屋敷さんの横歩は、本当にその場で考えているみたいで、持久戦に誘導したかと思いきやいきなり踏み込んでバババっとやっちゃう。見ていて面白いです(^^)。これで屋敷さんは1勝2敗、畠山さんはせっかく橋本さんを倒したのに他が惜敗続き、1勝3敗でなかなか勝ちにつながりません。

谷川浩司 ●-○ 佐藤天彦
 谷川さんの方がかなり良かったようにみたいですが、どうしても終盤でまくられてしまいます。去年のA級順位戦でも、NHK杯でも、こういう将棋をいくつか見ました。さすがに52歳になると脳も衰えてきてしまうだろうし、その上で会長職なんていう激務をやっていたら、仕方がない事かもしれないけど、残念。でも、上り竜の若手とここまで指すんだから、逆にすごいのか。谷川さんはこれで0勝3敗、一方の天彦さんは4連勝!しかし天彦さん、強い人との対局が全部後半に残ってる(^^;)。勝負はこれからですね。

松尾歩 ●-○ 村山慈明
 うあああ、松尾さん、負けたあ(T_T)。。実はひそかに応援していたし、また村山さんより松尾さんの方が強いとも思っていたので、ちょっとショックです。逆に、村山さんはすごく好きな棋士ではあるんですが、正直のところB1ではほとんど勝てないかも…と思っていました。それが、4位の松尾さんを倒しての2勝目、これはけっこう大きいかもしれません。

山崎隆之 ○-● 飯塚祐紀
 この前のNHK杯では、色々と楽しいコメントを残して笑わせてくれた山崎さん、これで4連勝!!同世代で実力者と言われている橋本さんや阿久津さんが先にA級に行きましたから、今期はぜひ勝ちまくってA級に行ってほしいと思います!しかし、山崎さんも強豪との対戦を後ろに残しちゃってますね。一方の飯塚さんは、そうとうマズイ。11位の上に4連敗。う~ん、降級候補の1番手かも知れん。ガンバレ!

藤井猛 ●-○ 橋本崇載
 は、早ええ…藤井さん、あっという間の投了です(;_;)。勝つときはえらくカッコいい勝ち方をしたりするんだけど、負けるときは大差負けも多くて、なんかヤクルトスワローズみたいだ。。対抗型のプロの棋譜をもっとたくさん見たいと思っている僕としては、藤井さんがA級で指してくれることを期待してはいるんですが、1勝3敗ではちょっと厳しいかな…。一方の橋本さんはこれで3勝1敗、すでに丸山さんという超難敵も倒しているし、やっぱり強いです。A級では1期で追い返されてしまいましたが、なんとかもう一回A級にあがってチャレンジしてみてほしい。豊島さんを倒すことが出来れば、その可能性はあるんじゃないかなあ。

 なお、豊島さんと木村さんの対局は、やっていないみたいです。木村さんは羽生さんと王位戦の対局の真っただ中でしたからね。でも、いつやるんだろう?

 というわけで、全勝が山崎さんと天彦さん。しかし両者とも競合とはまだ全く指していないので、現時点での1敗棋士との差はあまりない気がします。で、その1敗には豊島さん、丸山さん、橋本さん、木村さんがいます。でも、豊島vs木村戦でどちらかは2敗となるので、序盤のスタートダッシュに成功したのは5名、という感じ。しかし、大混戦になるような気がするので、順位のいい人は、2敗までは大丈夫のような気もします。豊島さんが木村さんを倒したら、本命はやっぱり豊島さんと丸山さんですかね。
 いやあ、B1というのは、来季のA級棋士を決定づける争いなので、やっぱり一番面白いと感じます。甲子園に行けるかどうかの地方予選の決勝を見ているみたいな楽しさがあります(^^)。。

第55期 王位戦 第5局 羽生善治 vs 木村一基 (角換わ相り腰掛け銀)

 壮絶な戦いになってきた今期の王位戦。2勝1敗1分けで羽生王位4冠が一歩リードですが、しかし将棋の内容はどれもすれすれの激戦ばかりで、見ていてマジで面白い。。さて、ここで羽生さんに負けると3敗で後がなくなる木村さんですが手番は後手、これは戦型の選択が重要なんじゃないかと。矢倉はさすがにもう出来ないよなあ。後手ならやっぱり横歩か?戦型は…おおおお~、角換わり相腰掛け銀だ!!なるほど、研究がモノを言う角換わり、研究時間は羽生さんよりもあったはずなので、これは木村さんにとってはいい展開かも。一時は先手にやられまくっていた角換わりですが、最近は後手が勝つ将棋も結構目にしますしね。

20140828王位55-5_羽生vs木村_角換腰掛銀37手 盤面図は37手目、後手は今のところ△73歩保留型。陣形の傷を少なくして受け潰してしまおうというヤツですね。△73歩保留の場合って、▲66歩を突いてあるなら△42金~△43金が本筋、▲66歩不突きでその一手を▲48飛に回しているなら△43金が本筋だったよなあ。う~ん、最近は中飛車対策ばかりやっているもんだから、せっかく覚えた角換わりをまた忘れかけてるぞ。。

△43金右(38手目)▲25歩
 あ、あら?木村さん、金を42ではなくて43にあがったぞ?これは何か研究があるんだな、きっと。そういえば、深浦新手の飛び出した、後手が穴熊を狙うヤツはたしか…いやいや、それは先手飛車が4筋に回ってないと手番がおかしくなるな。や、ヤバい、マジで忘れかけてる…

△74歩▲48飛△42金引
 おっと、7筋の歩を突いて△74歩型に合流させる?もしかして△73歩不突きと見せておいてから誘導した?う~ん、さっきから木村さんがなんか狙ってそうで怖いな。。でも△74歩型も、結局は後手の右金を42に構える事になるので、いきなり△42金右の方が得だったと思うんだけど、違ったかな…もう自分の記憶を信用できなくなってきた。うう。角換わり、勉強し直しだ(T_T)。

▲45歩△同歩▲同桂△44銀▲37角
 細かいところが少し違うかもしれませんが、後手の右金が4筋によっての△74歩型は、常に角のラインを活かした打ち込みがあるので、この辺は定跡通り、という感じじゃないかと。級位の頃、何度この角の打ち込みにやられた事か。。

△75歩▲64角△92飛▲75歩
 なるほど、やっと木村さんの構想が分かった気がします。先手の角の打ち込みは受からないけれど、後手の端攻めも厳しいという事かな?先手は既に良いので、後手がこの端攻めを繋げられるかどうかが、この将棋の勝敗を分けそう。それにしても、この王位戦は、受けの木村じゃなくって、積極的な攻め手が多い気がします。。

 以下、後手の木村さんは中央で駒の交換をし、角のラインを先手陣の嫌な所に通したのですが、羽生さんはその戦場を放っておいて後手の飛車をいじめに行きました。これで後手の端攻めは消され、その瞬間に先手よしになったような気がしました。結果、123手にて羽生王位の勝ち!!

 う~ん、羽生さん強い。とんでもなく強い。これで3勝、タイトル防衛にリーチです。しかし個人的には、38手目△43金右からの将棋をぜんぜん研究していなかったので、そこに踏み込んでくれた木村さんには感謝、あとは棋譜中継の詳しすぎる解説に感謝ですm(_ _)m。羽生さん、ちょっと手のつけられない感じですが、しかし竜王戦の挑戦者決定戦が先に負けて土俵際いっぱいなんだよなあ。なんか、ストレートで糸谷さんに負けちゃうような気もする。。頼む、竜王戦を頑張って永世竜王/永世7冠になってくれ~!!

羽生さんのスケジュール

 いや~、先日の王位戦は凄かった!木村さんが強い!しかし、羽生さんがそれ以上に強い、なんだあの化け物のような中終盤の力は。しかし羽生さん、竜王戦の挑戦者決定戦3番勝負に、王位戦7番勝負に、王座戦5番勝負…番勝負の3つ掛け持ちという信じられない状況になっている気がするのですが(^^;)。羽生さんのスケジュールって、どうなってるの?

8/15 竜王戦 挑戦者決定戦#1 vs糸谷 (東京)
8/19 王位戦#4 前夜祭 (福岡)
8/20-21 王位戦#4  vs木村 (福岡)
8/26 王位戦#5 前夜祭 (神戸)
8/27-28 王位戦#5 vs木村 (神戸)
8/30 将棋日本シリーズ vs行方 (札幌)
9/02 竜王戦挑戦者決定戦#2 vs糸谷 (東京)
9/03 王座戦#1 前夜祭 (大阪)
9/04 王座戦#1 vs豊島 (大阪)
9/08 竜王戦挑戦者決定戦#3 vs糸谷 (東京)
9/09 王位戦#6 前夜祭 (神奈川)
9/10-11 王位戦#6  vs木村 (神奈川)

 東京→福岡→東京→神戸→札幌→東京→大阪→東京→神奈川…これに移動日が加わるんだよな、どう見ても過密スケジュールだわ。。なんでこんなスケジュールで新手がバンバン飛び出すんだ?いつ研究してるんだろうか、まさか対局中に頭の中でいろいろ考えて、可能性のありそうな指し手は次の対局で試している?それ以前に、よく頭のスタミナが持つな、すごすぎます。

第64回 NHK杯 屋敷伸之 vs 山崎隆之 (横歩取り)

 屋敷さんと山崎さんか、NHK杯も2回戦になると好カードの連続ですね(^^)。しかし、明日の仕事に向けての準備があったので、ながら見になってしまいました。戦型は…おお、横歩です!そして後手の山崎さん、玉を中原囲いでも中住まいでもなく、美濃を目指す62にあがりました!電王戦以来、この玉形をチラホラ見かけるようになりましたが、僕はこうなった時の弁巨が全然出来ていません。ひとつでもいいので、参考の狙いを覚えてみようかな。

20140824NHK_屋敷vs山崎_横歩26手 盤面図は26手目、後手は△62玉のあとに左銀を23まで持ってきてからの△14歩。最近の横歩の後手は、端攻めと飛車のぶつけを絡めるこの構想が主体なんでしょうか。

▲75歩△72銀▲48銀△15歩▲33角成△同桂▲77桂
 屋敷さんは▲75歩と飛車の横利きを通す手を優先、こうなるとどこかで角交換になるかと思うんですが、かなり早いタイミングで角交換をしました。そしてこのタイミングでなんと山崎さん…

△16歩
 うおお、いきなり仕掛けたああ!!いやあ、△25歩と飛車をどかしてから、飛車を回すなり、角の打ち込みを狙って先手の右香を浮かせるなり、そういう色々なタイミングを計ってから行くと思ったのですが、いきなりの仕掛けでした。しかもこの一手にそれなりの時間を使っていたので、これは読みを入れた上で行けそうという計算なのでしょう。いやいや、これが成立するとしたらすごいぞ。。

▲同歩△54角
 うおお、また下工作なしで角を打ち込んだああ!両狙いなので、一瞬すごい打ち込みかと思いましたが、先手の右辺は▲85歩の合駒が利くので大丈夫、左辺は次に△18歩が入ると怖いですが、解説の北浜さん指摘の▲28金で受かりそう。いや、これはどういう狙いなんだろうか。解説の北浜さん、考えながら話している為か、小声で自信なさそうに解説するんですが、しかし指摘する手そのものはどれも素晴らしくて、さすがプロは違うと感心してしまいました。。

▲24歩△34銀▲23角
 うわあ、屋敷さん、受けずに強引にこじ開けに行ったあああ!!いかにも横歩取りの激しい展開、こういうのって一歩でも後手を引くと一気にやられちゃうんだよなあ。。どちらも、攻めを切らさないで行かないとヤバそうですが、どうにも電王戦で飛び出した62玉からの美濃狙いの形が生きてきそうで、屋敷さんはこの戦場で勝ったとしても玉までは遠い。これは構想としては後手の方が良いんじゃなかろうか。

△25銀
 なんと山崎さんも銀をぶつけて飛車取りという激しい順を選びました!!しかしこれ、もし飛車取りを手抜いて▲32角成~▲33馬と2枚替えに行ったらどうなるんでしょうか?…2枚替えは得なんていう局面ではすでにないのかなあ。

20140824NHK_屋敷vs山崎_横歩45手▲86飛△同飛▲同歩△31金▲56角成(45手目盤面図)

 いやあ、ここはどちらもさすがプロ、先手は飛車を交換しにいきましたが、なるほどこれは▲32角成みたいな博打を打つよりも確実な手に見えます。早指しでは勝負手よりも確実な手、ということかな?また山崎さんが受けのために指した△31金が素晴らしかった!のちのち、この金が守りに利きまくります。先手は大駒を手にするのですが、この金がいる為に飛車の打ち込みは使えないわ、角は打ち込んでも馬を作るだけにしかならないわで、左辺からの美濃崩しが全く使えない。。守りの金は下にいるほど効くなんて言いますが、まさにそれを地でいくような見事な指し手、まるで大山さんの金みたいです。そして、ここからが今日一番すごい場面に…

△18歩
 いやあ、屋敷さんの仕掛けが先行したのでずっと打てませんでしたが、とうとう来てしまいました。△16歩の仕掛けも△54角の打ち込みも、この△18歩を狙っての事。とうとうこれが飛んできてしまいました。これはもう受からないので、先手はそれよりも早く攻めたいところですが…あの後手の左金が受けに利きすぎている。これは後手勝ちか?

▲55馬△19歩成▲65桂
 うおおおお、ここでの屋敷さんの狙いがすごい、まったく見えなかった。。▲55馬~▲65桂で先手右辺に利かされ続けた角のラインを消し、しかも△18とみたいな手で手抜いて来れば▲54馬△同歩▲53角で一気に寄り筋か。着実な手を指したかと思いきや、寄せがありそうな順が浮かんだらいきなり踏み込んじゃうこの呼吸がすごい。。昨期から絶不調の屋敷さんですが、メチャクチャ強いじゃないか。。

 以降は横歩取り特有の恐怖の終盤戦、先手中住まいで右辺がと金でボロボロにされるというのはよくある展開ですが、玉に早逃げされれると意外と掴まらないんですよねえ。最後は山崎さんが寄せ切ったようにも見えたんですが、屋敷さんが電光石火の切り返しを見せ、95手にて先手屋敷さんの勝ち!

 今日の将棋はメチャメチャ面白かった!!今期NHK杯のベストバウトじゃないでしょうか?!しかし、感想戦の山崎さんの口調だと、後手優勢の筋もあったみたいです。負けた山崎さん、感想で「こうやればいいと分かっているのにやらないって病気ですかね」とかつぶやいてました(^^;)。う~ん、山ちゃん、面白い。。いろいろ見えすぎちゃって、ついつい「あれ?こうやったらどうなるんだ?」みたいな手を指しちゃうのかなあ。

第55期 王位戦 第4局 木村一基 vs 羽生善治 (矢倉)

 前局では持将棋の末に引き分けとなりましたが、なんとタイトル戦での持将棋は22年ぶりだそうで!2度と見れないかも知れないものを見せて貰ったわけで、なんだか得した気分です(^m^)ウシシ…。というわけで1勝1敗1分けというガチガチの互角になった王位戦ですが、この第4局は、勝った方が先にリードをするという重要な一戦。個人的には、羽生さんには永世竜王/永世7冠を取ってほしいので、王位戦は落としてもいいから竜王戦の挑戦者決定戦を頑張ってほしい。糸谷さんは一手損角交換・角交換・横歩しか指さないと思うので、もしこれらの戦型の研究手があるのであれば、王位戦では温存しておいてほしいなあ。。

20140821王位_45手 そして戦型は…おおおおお、矢倉です!!これで4戦中3戦が矢倉本組み、硬派な矢倉シリーズになりました。やっぱり『木村の矢倉』を読んでみようかなあ。そして、盤面は45手目、先手がまったく不満なしで▲46銀37桂の基本形を組み上げたところです。

△95歩▲同歩△同香▲97歩△64歩
 うああ、羽生さん、またわけのわからない手を指しちゃったよ。。せっかく73に角を設置したのに、その角道を止めてしまうという構想が理解できない…。しかし、史上最強棋士の指す手ですから、狙いがあるんでしょうね。私には指し手の意味が全く分かりませんが、もう少し指し手が進んだら意味が分かってくるんだろうか。9筋に手をつけたんだから、欲張らずに
6筋は引いておく?いや、自分で何を言っているのか分かりません(^^;)。。

▲25桂
 先手はお決まりの桂跳ね、先手の駒組みこれで万全。羽生さん、仕掛けるとしたらここ、また第2局の時みたいに△42銀とさらに受け続ける手もありそうですが…

△45歩
 おお!仕掛けました!これで中盤に突入、なるほどこれで▲同銀に△65歩と突きだせば、去年もよくタイトル戦で見かけた部分的な形になります。先手は銀を引いてから改めて46を戦場にする形もありますが、後手の角道が止まっている場合、どちらが得なんだろうか。。

▲37銀△44銀▲46歩△同歩▲48飛
 受けの木村さん、銀を引く手を選択、こうなると後手は自動的に△44銀を銀を繰り出すことになる。ここからが面白かった!!

20140821王位55-4_木村vs羽生_矢倉58手△65歩(58手目盤面図)▲同歩
 羽生さん、いったああああ!いやいや、角道を一時的に止める事になる△64歩は消極的どころか、攻めを構想した手でした!これを手抜いて良くなるとは考えられないので▲同歩は必然、これで先手玉のコビンをこじ開けてから角を活用しようという事か!う~ん、こういうのは途中で色々な変化があるので、バッチリ研究してから対局に臨んでいるんだろなあ。また、この局面は中盤ならではというか、先制した後手からは色々な構想がありえそう。

△86歩
 おお、すっかり中央の戦場とか角の捌きばかり考えてしまっていましたが、まずは飛車先の歩を突き捨てに行きました。なるほど、▲同銀とすると玉のコビンががら空きになって後手の注文通り、しかし歩で取ると継ぎ歩に垂れ歩ですか。これは銀で取るのはあり得ないな…

▲86同銀
 うおお、木村さん、銀で取ったあああ!!
これはシロウト目に見てもおっかない手だし、解説の深浦さんも畠山さんも杉本さんも声をあげたそうで。。銀で取っちゃうと、後手は角を84から使っても中央から突破してもいけそうな筋がありそうな気がしたんですが…

△55歩▲77角△56歩▲45歩△33銀右▲46銀(67手目盤面図)
 羽生さんの選択は中央!しかしこれに対する木村さんの手が▲77角で、僕にはこれが素晴らしい手に見えました。銀が戻れなくなるのでおっかないと思ったのですが、後手の玉のコビンに角のラインを入れられる方が、たしかに後手からすると嫌な気がする。そして、ここからは大ゲンカです(^^)。

20140821王位55-4_木村vs羽生_矢倉67手△25銀▲同歩△66歩▲56金
 羽生さん、質駒の桂を取ってから66に叩きの歩を入れました。これを取ってくれれば桂馬のフンドシが決まりますが…取りませんよねえ。ここからどうやって攻めを繋げるんだろうか。

△46角▲同金
 おおおっ!角を切ったあああ!!なるほど、これで△67銀か?!いやいや、それだと▲66角で攻めが切れるな、じゃあ△57銀だとして、問題はそこからどうやって手を繋げるかだな。。なんか、『羽生善治の終盤術』の復習をしているような状況になってきたぞ。

△57銀▲47飛△46銀成▲同飛△54桂
 なるほど、両取りではないけど、利かした歩に紐をつけつつの飛車取りの桂打ちです。しかし後手の持ち駒は歩3枚と金だけか、これは攻めが切れちゃうような気がする…

▲47飛△56金▲27飛△57歩
 後手は金を打ち込んで飛車をどかしてから、歩で飛車の横利きを消しました。これで次に△67歩成が決まっちゃうと後手が良くなりそうですが、ここで手番が先手に。

▲64角
 木村さん、面倒見るのをやめて攻め合いを選びました!後手はどこかに飛車を躱すと思うのですが、その次に先手はどうやって攻めるんだろうか?

△62飛▲24歩△同歩▲25歩△同歩▲24歩
 な、なるほど、先手の打ち込んだ角は、攻めの拠点ではなくて後手玉の退路封鎖なのか。。で、角を利かしてから2筋の継ぎ歩から垂れ歩に行く、と。また、羽生さんはそれを見越して、最悪の場合は角を切り取れるように飛車を角に当てておく、と。で、先手の垂れ歩が決まったところで、また手番が後手に。攻め合い殴り合い、すげえおもしろい。。

△67歩成▲25飛△23歩▲同歩成△同金▲24歩
 羽生さん、△67歩成から攻めますが、木村さんはこれを手抜いて▲25飛からの怒涛の攻め!これは▲23銀からの詰めろなので、ここで羽生さんがついに後手を引いてしまいました!と、思ったのですが…

△77と▲同銀△24銀▲44歩
 今度は羽生さんが手抜いて△77との王手!これがコビンを狙う角を外す事になり、後手の△24銀を可能にしました。これが歩を取り払うと同時に飛車に当たっていて、ここ飛車を引いてまた後手の手番かと思いきや、ここで木村さんは飛車を逃げずに▲44歩!!なるほど、これを手抜いて△25歩と飛車を切り取ると▲43歩成でほとんど終了か。。すごい終盤になったぞ…

△33金右▲45飛△66桂
 先手の木村さん、ここが際とばかりに勝負をつけに行きます!こんな飛車まわりをされたら、僕ならビビりまくって△42歩とか指しちゃいそうですが、羽生さんはここでもひかずに△66桂!またしても攻め合い、お互いに火だるまになりながら相手玉にしがみつきに行きます。う~ん、正確に手数が計算できているから、こういう手が指せるんだろうなあ。

 で、この後に互いが互いの飛車を抜くというとんでもない大ゲンカから、さらなる壮絶な攻め合い!!そして…もうどこで形勢が傾いたのかまったく分かりませんが、ついに羽生さんが優勢に。で、ここからの羽生さんの指し回しが凄くいやらしくて、なんかわざと難しい順を選んでいるような感じ。なんというか、相手の読み筋を外す練習をしているみたいな。途中、また相入玉かと思わせる展開になりつつ、134手にて後手羽生さんの勝ち!

 いやあ、中盤以降の壮絶な攻め合いが凄かった!!攻めるか守るか、このジャッジを一手間違えた瞬間にすぐ終わってしまいそうなところでの双方の指し回しが凄かった。プロはすげえわ。。また、どちらも大駒を切りに行くタイミングが見事というか、これも素晴らしかったです。これで羽生さんが先に2勝、一歩リードする展開になりました。この王位戦、今期のタイトル戦で一番面白いと感じています。。結果は羽生さんの勝ちでしたが、木村さんも強い。

横歩取り 16手目角交換からの△38歩 (=横歩取り△44角戦法)

 甥っ子が近くに住んでいるのですが、僕に懐いてくれていて、ちょくちょく僕の仕事場に遊びに来ます。とはいっても、こちらは仕事中なのであんまり構ってやれないのですが(^^;)。で、昨日も「将棋やろう!」と飛び込んできました。しかし仕事で構ってやれない…そうだ、81dojoの妻のアカウントで、ネットで対戦しといてもらおう!

 で、戦型は…なんと、横歩取り。いやあ、まだ低級の甥っ子には早すぎる戦型だと思ったんですが、どうも僕と父(甥からしたらおじいちゃんですね)の将棋を眺めていて覚えてしまった模様。「門前の小僧、習わぬ経を読む」、これには驚きました。で、そこで僕が知らない指し手に遭遇。

20140819_17手 盤面図は17手目、先手が横歩を取った瞬間に後手から角交換をしてきて、先手の甥っ子がその角を銀で取り返したところ。いやあ、△45角戦法か、これは甥っ子は見た事ないはずなので、ちょっとヤバい展開だぞ…と思ったのですが、相手の4級の方は違う指し回しをしてきました。

△38歩
 あ、あら?△28歩じゃないのか?いやあ、これは81dojoで高段の方が指しているのを見た事がありますが、まったく覚えてないぞ…。力戦だと思っていましたが、2回目という事は、こういう定跡があるのかも知れん。

▲38同銀△44角
 金でなく銀で取るというのは、甥っ子もセンスがあるな。。僕も、壁形を作るのが恐いのでここは100%銀だと思ったんですが、後で考えたら、もしかすると金で取るほうが得だったのかも知れません。それにしても△44角か!いやあ、まったく未知だわ。これ、ノータイムで指されていたので、やっぱり定跡がなんでしょうね。『羽生の頭脳』にも出ていなかった筋で、かつ16手目角交換という最近指されていない定跡というと…さては飯島さんの『横歩取り超急戦のすべて』に出ているな?あの本はしばらく読む予定がないので、この筋は今日教えて貰っちゃおう。。

▲77角△同角成▲同桂
 甥っ子、考えまくった末に合わせの角。いやあ、まじで甥っ子はセンスがあるわ。。定跡も手筋も何も勉強していないのに、小学2年生でこの角はなかなか打てないんじゃないかい?しかし、対戦相手が小2とも知らず、相手の方は緩める事もなくガシガシと攻め込んできます(^^)。

△89角▲87銀(25手目)
 この△89角は横歩でチラホラ見かける手筋です。甥っ子の指した▲87銀の受けは僕の第一観でもあったのですが、これは恐怖の横歩超急戦、一手でも間違えると即死なので、甥っ子はもうちょっと考えてから指した方がいいぞ…。

△87同飛成▲同金△67角成
 ですよねえ、ここは飛車切りですよねえ。。後手は飛車捨てからの角の成り込み、しかもこれが即死級の詰めろ。こうなってはもう勝てません。甥っ子は何とか粘るも、34手にて後手の勝ち。さすがに小2でこの手の飛車切りは見えないよなあ。。

 横歩というのはこういう嵌め手みたいな定跡がいっぱいある印象がありまして、しかも僕はこういうのをあんまり知らない。そんなもんだから、感想戦で定跡手を質問しようと思っていたら…相手の方、即去り(>_<)。甥っ子も短手数で負けてしまったものだから涙目です。

 というわけで、甥っ子と感想戦をしてみました。まず、24手目△89角の打ち込みに対する応手。▲87銀で悪いとすると、▲68玉しか残ってません。で、これで果たしてどうなるかというと…

△89角(24手目)▲68玉△78角成▲同玉△68金▲同玉△88飛成
 いやあ、今度は龍を作られて、相手の駒台には銀と歩が残っている(T.T)。これは生きた心地がしないなあ。。際どいけど、ここから何とか受けてみると…

▲78金△99龍
 この瞬間に手番が先手に。ここで先手の反撃が決まれば…しかしなかなか難しい。
①とりあえず▲84飛は?攻防手にはなりますが、△82歩とか△83歩なんかで止められると何でもなさそう。
②▲65桂~▲55角みたいな狙いは?55角が決まらなくとも▲53桂成もあるし、これは感触が良さそうだな。検討の価値があるかもしれん。

20140818_33手▲65桂(33手目盤面図)

 一番強い狙いは▲55角なので、後手は△52玉、△52金、△62銀みたいな受けをすれば▲55角で一気に先手優勢じゃないかと。これは後手も攻めるかうけるかの方針の立て方が難しそう。こういう時は激しい順から考えるべきだと思うので、攻める順から。

後手が攻めるとすれば:
 後手の攻めとしてすぐ目につくのは△69銀でしょうか。仮にそうすると…

△69銀▲53桂成△78銀成▲同玉△98龍▲88歩
 ▲53桂成は、次に▲32飛成が決まると即死級。というわけで受けるわけですが、その前に先手玉の守りを崩してから、というのが正着な気がします。というわけで、ここまでは必然の気がします。△98龍が一間龍なので先手はメチャクチャおっかないですが…う~ん、これは先手受け切ったように見えるなあ。▲88歩の合駒に対し、一間龍の手筋の△87金は、普通に▲68玉と逃げられても掴まえにくいし、▲69玉ならなおさらつかまらなそう。じゃ、送りの手筋の△68金は?…タダですね。。というわけで、安い駒で詰めろをかけるとなると…△87歩の一択でしょうか。

△87歩▲69玉
 いやあ、これはもう終盤だわ。。先手も▲69玉に替えて▲68玉なんて逃げ方もありそうですが、△88龍が王手になってしまうのはちょっと怖いので、▲69玉の方が良い気がする。で、それに対する後手の追い方がまた難しくて…

①やっぱり△88龍で詰めろ:
 これは▲86角が絶妙の攻防手で、しかも詰めろ。手抜けば▲52銀△同金▲同成桂△同玉のあとに▲32飛とバシッと切ってしまえば詰み。やっぱり王手をかける順の方がよさそう、というわけで…
②△89龍:
 これは一直線で…△89龍▲58玉△78龍▲68銀△77金▲48玉△68龍▲39玉。△77金のところでは△69金と下から打つ手もありそうですが、それは▲77角と打つ手が飛車取りにもなる絶好手になってしまうので、「敵の打ちたいところに打つ」△77金の方がよさそうです。いずれにしても…いやあ、これもつかまりそうにないぞ。どうも後手の攻めは切らされそう、切れてしまえば先手が一気にまくれそうです。

 では、後手が受けに行くと?

後手が受けるとすれば:
 33手目盤面図から後手が受けるとすれば、飛車の成り込みを防ぐ△33桂か、桂の受けの手筋の△64銀ぐらいでしょうか。しかし△33桂ではやっぱり▲55角がやっぱり決まっちゃうのでダメ。では△64銀だとすると…

△64銀
 こうなると銀が桂の成り込みを防ぐとともに55に利きを作っているので、▲55角は打てない(-_-*)。さらに桂取りにもなっていて、先手は攻めを急がされる格好になってしまうなあ。それでも飛車取りに当てるとすると、66か77に角を打ち込む事になりそうですが、攻防を考えると77の方が若干いいかな?

20140818_38手▲77角△89龍▲11角成△65銀(後手受けの変化の38手目盤面図)

 …う~~~ん、ムズカシイ。。ここ、▲21馬~32馬と攻めて大丈夫なら簡単ですが、それで行けるんだろうか。。いかにも横歩超急戦といった感じの局面、先後とも一手間違えたら即死級だぞ、これ。。
 
 で、ここから▲21馬とするとどうなるのかを色々やってみたんですが、ものすごい泥仕合。おたがい火だるまになりながら相手にしがみつくような将棋になってしまいます。。後手が34手目に△64銀と受けた場合の変化は、研究課題として残ってしまいました。

 というか、きっと、飯島さんの定跡書あたりにサラッと正着が書いてあるんだろうなあ。。(*追記:コメント欄から、『横歩取り超急戦のすべて』に定跡が書いてあるとの情報をいただきました。横歩取り△44角戦法というのだそうで…。情報をいただきましたメル様、ありがとうございましたm(_ _)m。)ちなみに、相手の4級の人が、きっと同じような戦型で指しているに違いないと思って、その人の過去の棋譜を覗いてみると…おお、指してます!で、その対局では、先手が角交換直後の△38歩を▲同金と取ってから破っていました。ああ、あそこは▲同金が正着だったか。たしかに△28歩の打ち込みを消せるという理屈は通るかもしれん。。横歩の超急戦は知らないと怖すぎる変化が多すぎる…。。



第64回NHK杯 金井恒太 vs 久保利明 (ゴキゲン中飛車)

 最近の序盤勉強は、ず~~~~っと中飛車破りばかりをやってます。しかも、一直線穴熊というとってもマイナーな戦型からの中飛車破り。本当は超速▲37銀が良いとは思っているのですが…。というわけで、久保さんの登場する今日のNHK杯は、久保さんが後手なら絶対に見ようと思っていました。そして…おおお!久保さんが後手、ゴキゲン中飛車だああ!!!

 居飛車の選択はやはり超速▲37銀、そして快勝です!何となくですが、最近はゴキゲン中飛車は、居飛車相手に相当に苦戦している印象があります。やっぱり超速▲37銀にした方がいいのかなあ、でも一直線穴熊をここまで研究したのに、ここで勉強を止めちゃうのもなあ…。

 いやあ、それにしても金井さんはNHK杯になると毎年すごく強いですね。そして久保さんは負けたという事は…先週に続いて、A級棋士が初戦で敗退です。NHK杯だと、どの棋士も有力な研究手などは指さずに温存すると思うし、逆に調べておきたいと思う局面には誘導すると思うのですが、そうなると勝負は中終盤の本当の棋力勝負。そんな中、解説の鈴木大介さんが感想戦でガチで指し手を質問していたのは笑えました(^^)。鈴木さん、いいキャラだなあ。。

第27期竜王戦 挑戦者決定第1局 糸谷哲郎 vs 羽生善治 (角換わり相腰掛け銀)

 森内竜王への挑戦をかけた羽生さんvs糸谷さんの番勝負が始まりました!棋譜解説を読むと、このふたりは以前にも竜王戦トーナメントでの対局があるみたいです。で、その時の棋譜を見てみると…なんと羽生さん、一手損角換わりのスペシャリストに対して一手損を仕掛けて勝ってました( ̄△ ̄)。う~ん、こんな事されたら、負けた方は心が折れてしまいそう。しかしその後も糸谷さんは角換わりを主戦法にして強くなり、ついに同じ竜王戦トーナメントで羽生さんとのリベンジマッチに漕ぎ着けた…みたいな感じなのか。ドラマがあるなあ。
 今回は糸谷さんが先手。というわけで、既に一手損角換わりは消えたと思うのですが…しかし角換わりだああ!!手損なしの角換わりの先手番は、糸谷さんが準決勝で行方さんを破った戦型。手損なしでも一手損でも、他の戦型に比べれば部分的な手筋などが共通してくるので、やっぱり得意なんでしょうね。そういえば、僕は糸谷さんの将棋で角交換系と横歩以外は見たことがない気がする。

20140815竜王27挑決-1_糸谷vs羽生_角換腰掛銀37手 盤面図は37手目、同形腰掛け銀へのコースを辿っていますが、後手が桂を跳ね出し、しかし33への銀上がりを保留しています。うわ、この形、僕は知ってるぞ。まさかとは思いますが、羽生さん、あれをやるのか?

△65歩▲同歩
 2筋を受けるのを保留していきなり仕掛けた!こ、これは…マジで来ちゃうのか?!

△33銀
 うおおおお、ツツカナ新手、キタ―――(゚∀゚)―――― !!
う~ん、よもや羽生さんがこの手を指すとは…。先手必勝の富岡流への進行を回避できるツツカナ新手ですが、しかし6筋から食いちぎられて先手よしの結論だったはず。羽生4冠にはこれをひっくり返す研究があるという事でしょうか?…たしかに、羽生さんの残る目標と言えば永世竜王だけだと思うので、竜王戦に関しては研究手温存なんてせずに全力でくるかも知れません。変な話ですが、年齢的にも羽生さんはいきなり勝てなくなってもおかしくない時期であって、ここで糸谷さんに負けると、今後は糸谷さんに勝てなくなるかもしれない。もし後手よしの変化があるとすると、これもいきなり定跡になっちゃうぞ。糸谷さん、後手の狙いが分からず、さすがに手が止まっています。いやあ、午前中からすごい事になってきました。。

▲66銀
 おおお、糸谷さん、長考の末に手を変えてきました!▲64歩なら先手よしの筈なんですが、あえてそれを避けたという事は、羽生さんの研究手順は避けたかったという事なのでしょうね。

△75歩▲45歩△同歩▲24歩△同歩
 いやあ、互いに腰掛け銀の仕掛け筋からかましあってのケンカになってますねえ(^^;)。しかも大喧嘩です。しかしこれは桂頭に傷がある後手の方が分が悪いか?羽生さん、どうするんだろう…

▲45桂△44銀▲46角
 ▲46角で、やっぱり後手は跳ね出した桂を的にされてしまいました。跳ねた右桂の桂頭を狙われてしまうのは、相腰掛け銀のパターンですね。これで後手は受けに回らなくてはならなくなります。これは先手の方がいいだろ、糸谷さんの研究外しが大成功?

20140815竜王27挑決-1_糸谷vs羽生_角換腰掛銀50手△51角(50手目盤面図)

 羽生さん、自陣角を放っての受け。と思ったのですが、これが実が恐るべき手でした。なんと、いかにも苦しそうなこの角が受けに利きまくると同時に強烈な反撃力を秘めた一手になっちゃう事に。

▲25歩△同歩▲23歩△同金
 先手は2筋に手をつけて金を浮かせてから…

▲75銀
 後手の攻めの拠点となる7筋の歩を切りとりました。しかし、ここで手番が後手に渡ってしまい…

△45銀直▲同銀△同銀
 うわあ…後手、ここで一気に捌きます!こうなると先手が何を指しても後手のあの角が捌けちゃうぞ…

▲24歩△同金▲同角△同角▲25飛△23歩▲45飛
 う~ん、先手は角を取られる前にひと仕事させ、飛車を捌いてしまおうという事だと思うのですが、これはちょっと強引な気が…。先手は金3枚に銀3枚で駒得ではありますが、結局、糸谷さんは角金交換を強いられる形となり、羽生さんが2枚角を使う展開に。しかも、後手の大駒3枚はすべて捌けてしまいそうな格好。これはさすがに駒の働きが違いすぎるだろう。。いやいや、これはとんでもない反撃術だわ。最近の羽生さんは、受けに回ってから一気にまくるという将棋が多い気がします。なんか、森内さんの将棋を見ているみたい。
 
 こうなってみると、先手は桂頭をエサに角を打たされちゃったみたいに見えてしまいます。羽生4冠が桂頭の傷がおっかない変化に飛び込んだのは、桂頭をエサにした反撃の筋があったという事なのかなあ。う~ん、おそるべき構想力、糸谷さんが角を打ち込んで桂を攻めた時点で、後手が良いと思える人ってどれぐらいいるんだろうか。

 というわけで、羽生さんの快勝…と思いきや、糸谷さんが大劣勢ながら最後に詰めろに入る順を残して最後のお願い。しかし…羽生さん、これを詰めろと思っていなかったのか、形勢が突然ひっくり返って後手玉が詰むや詰まざるやの終盤に突入!これは糸谷さん逆転だあああ!!127手にて先手糸谷さんの勝ちです!

 う~ん、やっぱり劣勢の最終盤は、最善手よりも「間違えたら一気に詰めますよ」みたいな手を指す方が実践的という事ですね。なにせ、羽生さんですら間違えてしまうのですから…。これはいい事を学ばせていただきました。3番勝負の第1局は糸谷さんが取り、羽生さんは後がなくなりました。う~ん、羽生さん、永世竜王/永世7冠に向けて黄色信号です。。

竜王戦の挑戦者決定戦がはじまる!!

 高校野球が熱い!9回土壇場での大逆転劇の連続、緊張のあまりありえないプレーをして泣き崩れる選手、あるいはもうバットすら振ることが出来ないような極限状態から起死回生の一打を打つ選手…素晴らしい試合のオンパレードです。なんというか、ここまで接戦だらけの大会も珍しいんじゃなかろうか。今も、愛媛代表と山形代表がものすごい熱戦!最終回で3点差の絶望的状況、しかしここからドラマでした。守る投手も最善を尽くしているのですが、もう極限状態での緊張感からか、あるいは炎天下での長時間の疲労からか、ボールがわずかに上ずって…何と4点を入れられて大逆転。それでも歯を食いしばり、全力で腕を振って投げ続ける投手を見ていて、涙が出てきてしまった。。
 しかし、ちょっとマニアックな話になるんですが、高校野球は甲子園に来る前の地方予選が一番好きです。甲子園に来てしまうと、ある意味で目標達成であって、負けてもある意味サバサバできるんじゃないかと思うのです。しかし地方予選となると、負けた瞬間に甲子園出場の夢が消え、また選手の9割がたはその瞬間に、小さい頃からやってきた野球人生が終わります。負けた瞬間に青年期が終わる。やっぱり、負けたら何も残らない予選の必死さ、熱さというものはあるんじゃないかと思います。

 な~んてわけで、今期竜王戦も挑戦者決定トーナメントが面白すぎる!名局のオンパレードのうえ、下克上やら超有力そうな新手やらが飛び出しまくり!プロ棋士も人の子、高額賞金には目が眩むんでしょうね( ̄ー ̄)。俺も、もし対局料が400万越えの将棋を指すなんて事になったら、全てをなげうってでも将棋を勉強しまくるわ。。
 そして残すは挑戦者決定戦3番勝負のみ、そのカードは…ついに実現、羽生vs糸谷の、初の番勝負です!!羽生世代最強対20代若手最強、世代闘争の様相も呈しています。個人的には永世7冠なんていう、死ぬまで2度と見れないだろう超絶的な大記録の瞬間を見たいので、どうしても羽生さんを応援してしまいます(^^)。それにしても、あの郷田さんが矢倉で瞬殺されてしまった準決勝の羽生マジックは鳥肌モノでした。。

 いよいよ明日か、実は他のタイトル戦よりも楽しみにしています。よ~し、観戦用にビールでも買い込んでおくか!!

序盤定跡の進化に追いつくには

 え~っと、「序盤定跡の勉強、の前に…」の続きです。というか、それ以前に、最近、将棋の序盤定跡の勉強法を若干変更しまして…。

 マジメに将棋の勉強を始めた時の最初の目標は、初段到達でした。伸び悩んだり、人から貴重なアドバイスをいただいたりしながら、何とか初段に到達したのは勉強を始めてから11か月ぐらいの時。しかしその時点で、やらないわけにはいかないのに手つかずの宿題が山積み状態(T_T)。特に序盤定跡が全然追いつかない。。しかし、プロになるわけでもないし、目標の初段にもなんとか到達できたしという事で、以降はじっくりと勉強をしていこう、と方針を変えました。それが今年のアタマぐらい。
 しかしですね…この「ゆっくりでいいので一歩ずつ、ぜんぶマスターしていこう」という方針は、実は実現不可能な方法だったんじゃないかと、最近思い始めました。

(今までの方針)
・第1段階:戦型ごとの定跡の大雑把なマップを頭の中に作る
・第2段階:段位者向けの棋書をきちんと隅々まで覚える
・第3段階:プロの棋譜で、今までにない変化を潰していく

 上の勉強手順、自分では正しい方法だと思ってやってきたんですが、大きな問題がふたつ発生してしまいました。ひとつは、定跡書に出てこない変化を指され、しかもそれが有力手だと、その穴がいつまでも埋まらない。もうひとつは、この方法って、第3段階まで進んだところでようやく実用的になるんですが、すべての戦型が第3段階までたどり着くという時というのが、ものすごく遠い未来になってしまう。自分が定跡をマスターするスピードより、定跡の進化の方が速いのです。
 というわけで、少し前から序盤の勉強法を微妙に変えてみました。

(マイナーチェンジした勉強法)
・第1段階:戦型ごとの定跡のマップを本で確認するけど、細かくは覚えない!(時間がかかるから)。
 で、自分に選択権があり、かつ自分が踏み込まない変化はガッツリ切り捨てる!
・第2段階:自分が指すことになる変化は、段位者向けの本も、プロの棋譜も総動員してメチャクチャ調べて覚える!
 本に書いていない変化も、有力そうなものは研究して対策する
・第3段階:プロの棋譜と自戦の感想戦で、今まで対策出来ていなかった穴を潰す

 ふたつの問題を解決するために、1を手抜いて2に力を入れる、という事ですね。今までみたいに1に力を入れ過ぎていると、時間的に間に合わない。
 勉強の絞り込みは、実際に起きた不具合への対応でもあります。例えば、横歩取り。横歩は、今年の前半に、角換わりとともに相当な時間を費やして研究しまくったんですが、「よし、これで横歩は先手番でも全員返り討ちだ!!さて、角交換四間飛車対策に進むか…」なんて思っているうちに、もう横歩の定跡が進化してました(T_T)。この状況を、僕の将棋に費やすことのできる時間から逆算するとですね…絶対に研究が追いつきません。プロみたいに時間があればとも思いますが、これは論理が逆で、プロの持ち時間とプロ棋戦の対局数に合わせて、定跡の進化のスピードが決まっているのでしょうね。このスピードに、片手間で将棋をやっている社会人が追いつけるはずがない。この勉強時間の差という壁は、どれぐらいやる気があるかとか、どれぐらい頑張れるかとかいう根性論で越えられるようなものではなくって、もっと具体的な対策が必要だと思いました。結論は単純なもので、自分の指す戦型をなるべく限定して、それ以外のものを切り捨てる、これしか方法はないんじゃないかと。横歩△33角戦法を例にとると、先手では極力避ける、指すとしても先手に戦型選択権のある青野流に絞る、後手の時は△23銀からのひねり飛車に指し手を絞り込む、みたいな感じ。ゴキゲン中飛車対策も、本当なら超速▲37銀を指せるのが理想だと思うのですが、とにかく変化が多すぎるのでこれは捨てて、勉強が追い付くまでは多少勝率が落ちても一直線穴熊に絞る(←まさに今ここ。ずっと一直線穴熊で戦ってきたのですが、勝率があまり良くないので、ただ今序盤システムを開発中)。逆に、自分が踏み込む変化に関しては、定跡書に出ていようが出ていまいが、調べるなり研究するなりして潰す!序盤勉強のメリットというのは、まさに序中盤で「ルートAとされたらこうすればオッケー」というのを調べておくことにこそあると思うので。。

 今までの僕は、棋書に出ていない変化を指されると、序中盤から毎度毎度ウンウン唸りながら考えまくってました。だから早指しは全然ダメだし、しかも積み重なるものがない。このマイナーチェンジで、同じ勉強時間でありながら勝率は大幅にアップ!!って事になるといいなあ。。…甘いか。

『注釈 康光戦記』 佐藤康光・著

ChuushakuYasumituSenki.jpg 昔より、少しは強くなったんじゃないかと思っています。道場でも、総本山の千駄ヶ谷でも思っていたよりも勝てる!プロ棋士の方や奨励会の方に指導対局をつけてもらっても「とても将棋歴1年半とは思えない」なんて言ってもらえる( ̄∀+ ̄)!!しかしですね…「不思議な手を指す」とも言われるのです。これは、前に女流の方にも言われたし、奨励会の方からは指し手の意味を逆質問される始末(>.<)。プロ的には破門レベルの構想をしちゃったりしてるんでしょうね。。
 こんな感じで、プロ棋士の方と、まったく読みが合いません。タイトル戦を見ていても、解説のプロ棋士の方々が「プロなら当たり前」的に説明する読み筋を、僕はかなり早い段階で検討から外していたりするのです。「プロと違った将棋の考え方をしてしまっているのではないか」「プロならみんな知っているようなことを僕は知らないんじゃないか」という疑念が拭い去れないのです。プロと同じ手を選べないなんて当たり前なのですが、それが僕の読みが浅いとか、手が見えないとかなら(いつか克服できるという意味で)いいんですが、形勢判断や指し手の根拠となっている考え方自体が間違っているのだとしたら、中終盤力においては、僕はこれ以上の上達は望めない事になってしまいます。プロが対局中にどうやって形勢を判断して、どういう根拠から指し手を選んでいるのか…最近、この手の本ばかりを読んでいるのは、そんな理由があります。そしてこの本は、超トッププロのひとりである佐藤康光さんの自戦記です。

 この本は、14の対局を、佐藤さん本人が解説してくれています。とくに、「この時に自分が何を考えて、どういう判断基準から指し手を選んだのか」という姿勢が貫かれて書かれています。これですよ、これ!!!こういうのを知りたかったのです。で、要所要所に、僕にとってはものすごく参考になる言葉がさりげなく書かれています。プロが伝えたい事とアマが知りたい事には差があるのかも知れませんね。個人的には、これがすごく良かったです。
 「調子」について書いてあるところがありました。「有力手が3つあるとして、調子がいい時はそれぞれ十分考えたところで決断できるが、調子が悪いともう1回ずつ考えないではいられなくなる。こうやって持ち時間がどんどん削られる。決断は大事な要素だ」。おおお、まさに俺じゃないか!ネット将棋では、大体僕の方が先に持ち時間を使い切っちゃいます。リアル対局をしても、たいがいは僕の方が長考。自分の読み抜けが不安で不安で、たしかに一度読んだ順をもう一回読んじゃってるわ。そうか、決断力か。。
 「新手を食らったとき」という所もすごく勉強になりました。ようやく序盤定跡の勉強が最低限のところまで追いついてきた戦型が出てきました。そうなると、自分が予想しうる範囲の指し手は全部研究済みになるわけで、その範囲内で将棋が進めば全部勝ちになる。ところが、いざ対局となると、自分が想定もしてなかったような手を指されたりする。実際にそれが新手であったかどうかは兎も角として、当事者としては「新手」とまったく同じ状況になるわけです。で、こういう時に佐藤さんはどう考えるかというと、「"おかしい"という気持ちと"なるほど"という気持ちが同居するが、その手が成立するかどうかは別として、対局中はとにかく否定してかかる」との事。いやあ、言われてみれば当たり前の事なんですが、僕は「やべえ」とか「すげえ」と思っている事の方が多い気がします。この間の竜王戦トーナメントでの▲中村太-△深浦戦で、中村さんは新手を指され、しかしそれを咎めに行くのではない順で指してしまっていました。負けてもいいので、あの瞬間は咎めに行くのが重要だったのかも知れませんね。これも勉強になりました。
 「現代的な指し手」という所も面白かったです。複雑な局面、難しい局面で妥協してしまわずに、踏み込んで、その局面がいいのか悪いのか、とにかく決着をつけて白黒をはっきりさせてしまう。いや、これは僕が佐藤さんの言わんとしている事を少し捻じ曲げて解釈しているのですが…たしかに、僕みたいなアマチュアの対局は、その対極に勝つかどうかという事よりも、負けてもいいから課題局面を白黒をはっきりさせてしまうという指し手を選んだ方が、次には繋がるよなあ…。
 「プロ的な強さ」という章は白眉。▲佐藤-△久保のゴキゲン中飛車での丸山ワクチン戦なのですが、互いの指し手が凄い。佐藤さんですら久保さんの手を評して「どこがと聞かれてもうまく説明できないが、うまいと感じた」なんて書いてます。振り飛車御三家の中でも、久保さんって指し手が鋭いというか、ものすごい切れ味だと感じてしまいます。こういう振り飛車相手に指すのって、嫌だろうなあ。。
 「天才少年と戦う」という最終章も面白かったです。天才少年とは、現在の渡辺2冠の事です。これがNHK杯での相掛かり戦で、僕がこの戦型に明るくないから余計にそう感じるのかも知れませんが、佐藤さんの説明なしには理解できないような駆け引きがものすごい!「間合い」というやつですが、アマチュアにはとても真似できない感覚で、ただただため息。。

 さて、こんな感じの本なので、捉え方は色々あるかと思います。まず、純粋に何かを教えるといったような内容ではないので、この本を読んで棋力アップを図ろうというのであれば、それは読む側に工夫が必要なんじゃないかと思います。しかし、前述したような感じで、僕的にはかなり勉強になりました。そうそう、本文には、もっと具体的な指し手の読み筋や、分岐点での佐藤さんなりの形勢判断なんかがかなりたくさん書いてあります。この部分は形勢判断力養成講座みたいな感じなので、間違いなく勉強になります!!
 棋力アップではなく、一種の将棋観戦みたいな「楽しむ」ための読み方をしても、相当に面白い本です。実際に駒を並べず、アタマの中だけで動かすだけで読むなら、1日あれば読み切れます。というか、面白すぎて、僕はあっという間に読んでしまいました(^^;)。マジで面白いです。
 しかし、佐藤さん本人による気になるひと言も。「トッププロの中では、僕が一番筋が悪い。」そ、そうだったのか。。たしかに顔面受け上等のヘンタイ将棋だしな、でもタイトルをバンバンとって、44歳の今でもA級棋士なんだから、不思議な指し手でもいいんじゃないかなあ。…あれ、このセリフ、どこかで聞いたような気が。。
 そんなわけで、買わなくてもいいので、図書館とかで見かけたら、ざっと目を通してみるのもいいかもしれません。「私はアホですか?」という見出しが出てきたときには、図書館で声を出して笑ってしまいました。僕みたいに、夢中で最後まで読んでしまう人もいるんじゃないかと思います(ああ、最後まで立ち読みしたという事をばらしてしまった^^;)。。


第64回NHK杯 渡辺明 vs 佐々木勇気 (横歩取り)

 お、渡辺さんが出てきたという事は、もう2回戦なのか?!しかし、NHK杯を見るのは極力控えようと思っているので、チラ見で終わらせるぞ!渡辺さんの構想力を勉強するだけで終わらせるぞ!…超攻め合いの横歩だ、面白え…結局全部見てしまいました(^^;)。なんか、もう半年ぐらいこのパターンを繰り返している気がするなあ。。

 それにしても、佐々木勇気5段が強い!プロ棋士で弱い人なんていませんが、それでもタイトルホルダーやA級棋士さんと指すと、けっこう実力差を感じる事が多いです。しかし、佐々木さんの将棋は今までに何回か見たことがあるのですが、いずれもすごく鋭い!今日も横歩という、すぐに力将棋になってしまう戦型で、渡辺2冠相手に互角以上の戦い!中盤以降はものすごい攻め合い寄せ合いで、まったく目が離せなくなってしまいました。渡辺2冠、佐々木5段ともにハッとするような手がバシバシ飛び出し、一手指すごとに、指した方が優位になったように見えるような状況。

20140810NHK_渡辺vs佐々木勇_横歩145手 しかしさすがは渡辺2冠、玉頭を押さえられていた待ち駒を見事な順から外し、これで勝負あり。さすがの構想力、2冠は伊達じゃないな、と思ったら…うおお、佐々木さん、そこから準王手龍で切り返し、ギリギリの状況からの反撃!
 盤面図は145手目、その佐々木さんの激しい反撃をまたもやしのぎ切り、先手の渡辺さんが51に馬を作ったところ。、これが▲33金からの詰めろ。いやあ、見ごたえのある大激戦でしたが、最後は渡辺さんの底力が勝ったか、お疲れ様…と思ったら…

△78歩(146手目)
 後手の佐々木さん、最後のクソ粘り、連続王手から何か良い順を探すしかないのは分かりますが、さすがにこれは思い出王手ですね…と思ったら、あらら、これは存外厳しくないかい?もし△66桂の跳ね出しが王手になる順があるとすると、攻めながら玉の脱出口が出来てしまう。だとしたら▲同玉は危険な気がするので▲同角なのかな?でもそうなるといかにも引っ張り出されそうだよな。となると、できればこの歩を取らずに躱す順を探したいですが…いやあ、仮にその順があったとしても、1手30秒の将棋ではその順を模索するのは頓死しそうで危険すぎますよね。せめて1手3分、いや、1分でもあれば…。

▲同角△88金▲同玉△81飛
 あちゃあ、玉を引っ張り出されてからの十字飛車、王手馬です。これは逆転したんじゃないでしょうか?こう考えると、146手目△78歩からは一直線なので、あれが超好手だという事になりそうです。もう、あれ以外の手だと後手はさすがに寄っていたんじゃないかなあ。

△85桂▲同飛
 なるほど、先手は合駒するしかありませんが、馬を抜かれても直後に銀を抜きながら成桂で右辺に利きを作るという訳ですね。これは勉強になるなあ。と思ったら…うおお、後手は詰めろを解かず、▲同飛車で一気に決めに来ました!!マジか、ぜんぜん読んでませんでしたが、これは寄りなのか?
 …ダメだ、▲79玉なら△88金から一気に寄り、合駒は何を打っても△76桂からばらされてオシマイなのか。う~ん、電光石火の逆転劇、ほんの数手前までは先手勝勢だと思ったんですが、これは素晴らしい終盤力、終盤術というよりは詰将棋の力を見せつけられた感じです。いやあ、この踏み込みは参考になるわ、すごい。。

 なんと渡辺さんは2年連続での初戦敗退。豊島さん、糸谷さん、中村さん、佐々木さん、千田さん…20代の棋士の中から、強豪が続々と出現してきた気がします。これからの渡辺さんは、羽生世代を超えるだけでなく、若手の突き上げも跳ね返さなければならないという板ばさみ状況になっていくのかも知れません。それにしても、早指し戦の面白さがいっぱい詰まった、ものすごく面白い将棋でした!!

『羽生善治の終盤術1 攻めをつなぐ本』

HbuShuubanjyutu1 昨期後半から今期のここまでの羽生さんの強さは化け物レベル。絶賛開催中の王位戦でも、王手すらかける事は難しいんじゃないかという負け将棋をひっくり返したり(しかも2局連続!)、名人戦でもとんでもないところに金を打ち込み、それが最後の最後に決め手になってしまったり。竜王戦の挑決トーナメントでは、あの郷田さんを、まだ中盤だと思っていたところからいきなりとんでもない歩の打ち込みから、一気に終盤に引きずり込んで短手数で仕留めてしまいました。相手はいずれもトッププロだというのに、信じられん。。いずれの対局にも共通していえるのは、圧倒的な終盤力。錚々たるトッププロの皆さんですら、羽生さん相手に互角で終盤まで来てしまったらもうアウトという感じのここ半年なのです。7冠の頃もこんなだったんだろうなあ、きっと。

 で、この本は、羽生さん本人が書いた数少ない本のひとつで、終盤術の本です。羽生さん自著という本は意外に少なく、他では中盤の大局観の本『上達するヒント』と、急戦矢倉の序盤定跡『変わりゆく現代将棋』ぐらいみたいです。これらを通して読めば、羽生さんの序盤から終盤までの考え方にひと通り触れることが出来るという感じですね(^^)。

 この本、僕は中級ぐらいの頃に手を出して、全くついていくことが出来ずに挫折した事があります(T_T)。で、ここ最近の羽生さんの終盤術があまりに素晴らしいので、段位になった今なら理解できるかも知れないと思って再トライしたという次第。そして…おおお!!!これは素晴らしい!!段位になって以降、自分の終盤力アップに役立ったと思える本に、谷川会長の書いた『光速の終盤術』という本があるのですが、それと同じぐらいに濃い内容でありながら、それよりもかなり分かりやすいかも。羽生さんの実践譜18局の終盤を、羽生さん本人の解説つきで1手ごとに読み手が解答していくという形です。そして、指し手の根拠となった考えの解説が素晴らしすぎます。また、選ばれた局面図も素晴らしい。

新規棋譜0手 例えば、これは冒頭の1問です。後手が△65歩と突いてきたところで、先手はどうすべきか、という問題ですね。いやあ、これは素晴らしい問題だと思うんですよ。コンピュータだったら総当たりで考えるんでしょうが、中終盤という手の広い所で総当たりなんて、人間には無理。こういう所では、構想力というか、何を基準に指し手を考えれば良いのかというのが、僕ぐらいの棋力の人が知りたい事なのだと思うのです。そういう判断基準がないのであれば、▲65同歩、▲38飛、▲55歩…みたいな感じで、ありそうな手から考えて、中でも良さそうな手を選ぶという感じになっちゃうと思うんですよね。ただ、ここに形勢判断の基準があれば、考えの取っ掛かりが出来るんじゃないかと思うのです。で、羽生さんの推奨手は…

▲57金
 で、なぜ▲57金か。普通に▲65同歩だと△77角成以下、猛攻を浴びてしまうのでナシ、しかし利かされている36の銀を払おうと▲38飛と回すのであれば、できれば△47歩と当たりを打たせてからの方が得。また、狙い筋としては▲35銀で一気に飛車道を通す手もあります。これらを踏まえて、自陣の48の飛車を攻防に使える順で応手を考えると、▲57金△66歩▲35銀となれば、後手は△47歩と当たりを打たざるを得なくなってしまい、先手は打たせてから飛車を3筋に回す事が出来る、という訳ですね。こうなってくると、▲57金その一手だけの問題じゃなくって、5手一組で駒組みも引き締まった上に全体が攻防手になってきちゃう感じです。で、この後も詰みまで説明が続いていくんですが、これが素晴らしすぎる!!いやあ、自分が今までどれだけ即物的な手ばかりを選んでいたかという事を思い知らされてしまいました。即物的な手ならですね、例えば角道を抑えたいなら▲55歩が浮かんじゃうと思うんですよ。でもそれだと玉形と反撃筋がバラバラなままなんですよね。逆に、利かされている銀をどかしたいなら▲37歩が浮かんじゃうと思うんですが、これは今度は△66歩の取り込みが当たりになっちゃう。即物的な近視眼的な手ばかりしか考えられない僕みたいな棋力だと(>.<)、こういう手ばかりをグルグル考えてばかりになっちゃうわけですが(^^;)、プロ将棋を見ていると、いつも僕が思いつく手からは程遠いような、しかし指されて見ると、長い目で見てそれが絶好手だった、みたいな手がやたらと出てくる。きっと、判断基準が違いすぎるんじゃないかと思うのです。そんな僕が知りたいのは、中終盤でプロがどうやって形勢判断をして指し手を選んでいるのかという事。きっと、同じような事を思っているアマの人も多いんじゃないかと思うんですよね。で、この本は、まさにその需要に応えたもので、羽生さんの終盤での形勢判断の仕方を、本人の解説で読める感じ。A級棋士ですら片っ端からやられてしまう羽生マジックのトリックがこれでもかと書いてある感じで、門外不出の秘伝を盗み見たようなな気分になり、読んでいてちょっと感動してしまいました。

 さて、この本、僕は級位者の時には全くついていけませんでした(゚∀゚*)エヘヘ。というわけで、個人差はあるかもしれませんが、やっぱり級位者には難しすぎるかもしれません。でも、2~3段ぐらいの棋力があれば何とかついていけそうな気がします。つまり、2~3段ぐらいの人(という事は、5~7手詰ぐらいは大体バッチリで、寄せの手数計算もほぼ間違えないぐらい?)が、そこから終盤力をあげたいと思っている人は、迷わず読むべき本なのかもしれません。というのは、「ただ逃げるのではなく、当たりを打たせてから逃げる」とか、「相手の攻め手を逆用して攻め手を作る」「捌きたい駒を動かすのではなく、争点を作って捌く」…こういうテクニックというのは、詰め将棋や手数計算の寄せ将棋では学ぶことが難しい。では駒の手筋で学習できるかというと、駒の手筋を使う事にはなるんだけど、どういう判断基準を持っていればその順を選べるのか、という事はやっぱり学べない気がします。終盤術とはこういうもののことを言うんだろうなあ、すげえ。。あ、そうそう、さっきも書きましたが、谷川さんの書いた『光速の終盤術』という本も、ものすごく素晴らしい本です(僕の場合は、この手の終盤術を最初の学んだのは谷川本でした)。しかし、谷川本は、この本以上に難しいです。段位になって、終盤がまずいなと思ったら、いずれ出会う事になる本だとは思うのですが、個人的な感想としては『羽生善治の終盤術1』の方が先の方が分かりやすいんじゃないかという気がします。そうそう、僕の場合は、読んでいるだけで「おお!すげええええ!!」となってしまったので、棋力アップとは関係なしにも一読をおススメしたいです(^^)。いやあ、これはすごい本ですよ。。


第55期 王位戦 第3局  羽生善治 vs 木村一基 (角換わり相腰掛け銀)

 一勝一敗で迎えた王位戦第3局。挑戦者の木村さんは白星先行で行きたいと思うので、意地でもこの第3局を取りたいんじゃないかと。というところで…おおおお!角換わり腰掛け銀です!!先手の勝率が高いこの戦型ですが、最近は後手からの工夫の一手をよく見かけます。しかも、羽生さんは他の戦型に比べれば角換わりが若干苦手な印象があるので、これは木村さん、すばらしい狙いではないでしょうか。

20140805王位-3_羽生vs木村_角換腰掛銀40手 盤面図は40手目。後手は△73歩待機ではなく△74歩と突きだしてから△42金右型を選択。この40手目の局面は△42金右型の基本図という感じですが、ここは先手の指し手がものすごく広くて、角換わり腰掛け銀の勉強をしていた時に、覚えるのに苦労しました。。▲25桂や▲45歩は後手よしですが、他にも▲18香、▲25歩、▲67金右、▲68金右…最近の定跡書にはあまり載ってないけど、ネット将棋でここで▲28角と打たれてあっという間に負かされたこともありました(>_<)。。
(*追記:ユダオ様より、41手目▲28角を破った棋譜をお教えいただきました。なるほど、結局41手目▲25桂に合流するのですね。詳細はコメ欄に書き込みいただきましたので、知りたい方は見てみてください。ユダオ様、貴重な情報、ありがとうございました!!)

 そして羽生さんの選択は…

▲68金右
 おおお、玉の堅さ重視の手です!しかしこれはどこかで△59角や△59銀が入る可能性があるので、けっこう怖いんだよなあ。。『これからの角換わり腰掛け銀』では、「有力だけど危なっかしいから、終盤力に自信がないなら指すのはやめとけ」的な事が書いてあったような気が…。で、ここは後手も作戦の岐路で、△12香の穴熊狙いか、右金の反復とびの手待ちか、大穴で△35歩からの桂頭攻め、と思っていたんですが…

△24銀
 えええ!こんな手があるのか!!
と思って棋譜中継の解説を読むと、先月のB級1組順位戦の▲丸山-△豊島戦で指されたとの事。ああ、丸山さんが劣勢からクソ粘りしてひっくり返したあれか。もう、きれいさっぱり忘れちゃってるわ( ̄ii ̄)ハナヂ。。という事は、木村さんがそんな大事な棋譜をチェックして無い筈が無いので、その後に研究したうえで後手良さそうと見ているわけですね。木村さん、チャンスか?!

▲45歩△同歩▲同銀△59角▲38飛△45銀▲同桂
 うわあ、手待ちとか穴熊とかのジリジリとした展開になると思っていたのに、一転して45を戦場にして派手な戦いになっちゃいました。それにしても、間に挟み込んだ△59角が絶妙のタイミング、後手は馬を作るのはまず確定、先手は飛車が2筋でも4筋でもない所に行かされたので、これを捌くのが大変そう。これは後手がいいのでは…

△44銀▲65歩(51手目)
 後手は△44銀で角の打ち込みを消し、あとは悠々と馬で飛車をいじめに行ける。というわけで、先手はここで何とかしないと一気に敗勢、手をひねり出す必要があります。丸山さんはここで▲25歩△同銀▲46角と行ったそうですが、それで悪くしてしまったので、羽生さんは手を変えるんだろうか。と思ったら、ひと目デンジャラスな▲65歩。いやあ、私なんぞには、だったら▲25歩△同銀の交換を入れてから▲65歩と突きだした方が得に思えるんですが、あの羽生さんが指した手だし、しかも解説の山崎さんも有力手と指摘していた手なので、いきなりの方が良いんでしょうね。しかしその理由が全然分からん(T_T)…凄すぎて、ついていけません。

 というわけで、ここで後手の木村さんが封じて、1日目が終了。このいかにも怪しい指し手で封じるというのは、封じ手争いでは木村さんが若干割を食ったような気もします。いやあ、この▲65歩が利くのであれば絶妙手、即座に△24銀破りの定跡になっちゃいそうだし、そうでなければ悪手認定という事にもなっちゃいそう。う~ん、次の手が気になる…。はやく明日にならないかなああ!!

◆◆◆◆◆◆
 というわけで、2日目が始まりました。昼休みに覗き見したところ…うわあ、お互いにものすごい手を指してるぞ。。実は今回の王位戦、あっさり羽生さんが勝ってしまうのかと思っていたのですが、とんでもない、名局のオンパレードですね。木村さんはただの解説が面白いおっさんという訳ではありませんでした。。仕事が終わるより早く終局しないでほしいなあ。

◆◆◆◆◆◆
 よかった!まだやってた!!って、なんだこれは…。というか、羽生さん、あそこから巻き返したのか?信じられん。。まだ将棋は続いていますが、よもやここからこの間の豊島-丸山戦みたいなことは起きないだろうなあ。…うあああ、なんという幕切れ、178手で持将棋に突入、指し直しとなりました。この指し直し局は今日やるわけではなくて、第4局が第3局指し直し局になるみたいです。

◆◆◆◆◆◆

20140805王位55-3_羽生vs木村_角換腰掛銀61手 さて、2日目の将棋はどうなったというと、やっぱり封じ手直前の▲65歩はイマイチな手だったみたいで、後手は8筋の歩を突き捨てて玉のコビンを開けさせてから悠々と馬を作り、飛車をいじめながら優勢を築いてしまいました。そして盤面図は61手目、羽生さんが跳ねさせられて死亡直前の桂に最後のひと仕事をしてもらおうと、桂の利きを活かして△33歩と打ち込んだところ。これは△同桂と払っても悪くなさそうですが、いかにも無理攻めなので、もっと確実に▲31金△32銀▲45馬みたいな感じで、先手の攻めの拠点を潰してしまうんだろうなあ、と思ったら…

△43金左
 うわあ、木村さん、なんという受け方
をするんだ。。これが「千駄ヶ谷の受け師」の技か。いや、しかしこれもやっぱり狙いは同じで、拠点の桂を消しに行くという事なのかも。いやあ、これはいい技を教えてもらったぞ。しかし、これに対する羽生さんの指し手がまた凄くて…

▲53桂成
 来たよ、ただ捨てだよ。。
はじめて角換わり腰掛け銀の勉強をしていた頃、とにかく▲53桂成~▲71角の筋を理解する事が難しかったです。時にはその桂がただ捨て、場合によっては角すら駒損で失いながらも後手陣を潰す、みたいな定跡がいっぱいあるんですが、プロみたいに先まで読めない僕には、それで先手よしという形勢判断がどうしても出来なかったのです(実は今もそう(>_<))。それにしても…捨てた以上は▲71角が飛んでくるんでしょうが、いくらなんでも無理攻め過ぎるようにしか見えん。。

△同金寄▲71角
 やっぱり来たよ。。しかし指されて見ると、たしかに後手は飛車の逃げ場所が難しい気がします。△52飛なら▲63歩成△同金▲44角成か。。いやあ、封じ手直前の▲65歩はこの筋を狙っていたんじゃなかろうか?プロはどれだけ先を読んでるんだ、恐ろしいな…。他には△72飛?それだと今度は▲53角成△同金▲63金みたいにしてグッチャグチャにかき回すんだろうなあ。しかしここで木村さんは…

△64馬
 うあああ、飛車を見捨てたああ!!!
いやあ、互いに凄い手の連続だよ。。

 この攻防戦は、この後も一手ごとに凄すぎました。見ていてため息が出てしまう。。それにしても驚くのは、悪いので曲線的に指し回しながら、そうすると細くならざるを得ない攻めが切れない所が凄い。以降も、指されてみると手筋の連続なんだけど、しかし受け間違えたら一発でひっくり返るという手がバンバン飛んできます。気づいてみたら鉄壁だった木村玉の玉頭が禿げ剥げ散らかり(`ー´)、このプレッシャーの連続ににさすがの受け師も堪えきれなくなったか、いきなり受け潰しの方針を変えて攻め合いに出ました。しかし…これがまずかったのか、なんと優勢のハズだった将棋を持将棋にされてしまいました。いやあ、前期後半から今期にかけての羽生さんの異常な終盤術は、ちょっと神がかってます。実は、級位者の頃に一度トライして挫折した『羽生善治の終盤術1』という本を今読み返しているんですが、これが凄すぎるというか、なんか羽生マジックの本質がそのまま書いてあるような超良書。終盤で何を考えて指せば良いのかが、少しだけ理解できてきた気がします。しかし、それをこうも毎度毎度見事な順で見せつけられると…やっぱりこの人だけは異次元だわ。。

 というわけで、指し直し局は8/20~21だそうです。王位戦、大熱戦になりましたね!


第64回NHK杯 香川愛生 vs 熊坂学 (先手石田流)

 今日のNHK杯は、女流棋士が登場という事で、序盤だけでも見ようと思っていました。というのは、女流の方って、振り飛車を指す方がやたらと多い印象があるから。現在、振り飛車破りを絶賛研究中の僕としては、プロの指す対抗形は一局でも多く見たいのです。

20140803NHK_香川愛生vs熊坂_先手石田28手 で、予想通り、女流の香川さんは三間飛車から石田流の振り飛車に。受ける熊坂さんは、穴熊でも銀冠でも2枚銀でもなく、23玉と角のアタマに玉を乗せる形に。いやあ、この順から石田に対抗する人をたまに見かけるのですが、僕にはこの手の意味が全く分かっていません(T_T)。狙いを解説してくれれば嬉しかったんですが、残念ながらその解説はありませんでした。さすがにこのまま戦う事はないと思うのですが、もしこのタイミングで振り飛車から一気に捌きに来られたらマズくないかい?とか思っちゃうのです。。で、予想通り、ここから香川女流王将が大駒を捌きまくり、駒損覚悟の攻め将棋。熊坂さんは腐心して手をひねり出し続けますが、しかし中盤は完全に女流が持って行っちゃった感じ。石田流って、受け切るの大変なんだよなあ。。

 しかし…駒損上等の攻め将棋って、正しく指し続けると仕掛けた側が常に不利なんじゃないかという気がしています。早石田しかり、初期ゴキゲン中飛車の居飛車▲58金戦法しかり、横歩△45角しかり、右四間しかり。振り飛車だと更に一手損になるので余計にそう思えちゃう。先に仕掛けた側が相手玉の周りをべりべりと剥がすので一見優勢に見えるんですが、正しく指し続けると[攻めきれない→その上駒損→どこかで手抜かれて攻め合いの筋を作られる→切れた瞬間に反撃の打ち込み一発でまくられる]、みたいな受け側のワンパンチでひっくり返るのがパターン。だから、「考えまくれば絶対に良い順がある」と思えちゃうんですよね。逆に言えば、駒損上等の仕掛けをしたならば、攻めた側は切らした瞬間にアウトなので、どんなに細い攻めでも切らしちゃいけない。もっと言うと…攻めきれるかどうかわからないまま仕掛けて、切れたら負けみたいな指し方って、どうなのかなあと思っちゃうんですよね。結果、案の定というべきか、香川さんは攻めを切らされ、そこからは悠々と寄せられてしまいました。う~ん、女流タイトルホルダーよりもフリークラスの棋士の方が強いのが今の実情か。。

 それにしても、将棋自体はスリル満点で面白かった!途中までは先手互角以上の接戦だったのかも知れません。互角以上という事は…ミニスカートで対局に挑んだ香川さん、仕掛け以降で膝上のハンカチを取ったり戻したりしてたら勝ってたかも知れません。いや、勝っていたに違いない。今日は、あそこで勝負にいけなかった香川女流の作戦負けですね( ̄ー ̄)。

kagawa vs kumasaka

第27期竜王戦決勝トーナメント 羽生善治 vs 郷田真隆 (矢倉)

 仕事の方も何とかペースを掴んできたので、ここは趣味に夢中になりすぎないよう、休んで将棋を見るのは自粛しました。それにしても…気になる。というわけで、仕事をしながら休憩のたびに竜王戦の挑戦者決定トーナメントをチラ見しまくり(^^;ゞイヤァ。

20140801竜王27TN_羽生vs郷田_矢倉56手 まず、羽生-郷田戦は、羽生さんが先手となり、矢倉模様で進行。急戦にもならず、持久戦の展開。この時点で、羽生さん優勢のような(^^;)。で、ビックリしたのが、中盤の攻防戦で、羽生さんの放った57手目。

▲55歩
 わわ、なんだこれは(゚ロ゚ノ)ノ。。▲63馬の一択としか思えない場面で、えらく複雑な手が飛び出しました。…なるほど、銀ばさみか。指されて見れば駒の手筋ですが、しかし明らかな有力手を見送ってまで指すほどの絶妙手なのか?例えば△55同銀とすると?…なるほど、今度こそ▲63馬で飛車銀の両取り、一気に先手優勢になっちゃいますね。じゃ、△55同飛は?▲46歩△54銀▲47馬で垂らされた歩を抜く?で…なるほど、飛車が狭くなるので、飛車を詰めてしまおうという事かな?しかし、自分が先制した局面で、わざわざ複雑な方の順に踏み込むというのは、何か狙いがあるのでしょうか?タイトル戦に備えて研究手を温存した?いや、永世7冠を狙いに行って…まさかね。。しかし相手は郷田さん、手を抜いて勝てるようなレベルの棋士じゃないぞ、と思った矢先…

△同飛▲46歩△73歩
 郷田さんからもものすごい手が飛び出しました!いや~、ここで△54銀以外の指し手があるのか。。でも、かなり危険な手に見えるけど…ああなるほど、▲47馬に△56角と合わせて馬を消してしまおうというのか!いやいや、これはいい手なんじゃないかい?!さすがは郷田さん、これは凌いだんじゃないか?と思ったら…

▲83馬
 すげえ、なんだこれ。。羽生さんとか郷田さんとクラスになってくると、レベルが高すぎてまったくついていけません。同じプロ将棋と比較してすら桁違いな感じがします。しかしこの手、さりげないけど神がかってないかい?馬を清算させない上で△56角と当たりを打たせようとしているんですよね、多分。う~ん、当たりを打たせてから逃げるという構想の立て方は『羽生善治の終盤術1』で勉強して戦慄した事がありますが、実践でこれだけハイレベルな使い方を見せつけられるとと鳥肌モノだわ。いやあ、見れば見るほどゾクゾクしてきました。すげえ…。

△56角▲61馬
 やっぱり後手は角を打たされた上で躱されてしまいました。後手はまずいと分かっていてもこうするしかなかったんでしょうね。結果、矢倉本組とは思えないほどの早期決着にて、羽生さんの勝ち!!いやあ、この▲18飛と飛車を受けに使って角で暴れる将棋、矢倉▲37銀戦法の定跡になっちゃうんじゃないかと思います。。

◆◆◆◆◆◆◆

 準決勝のもう一方、行方-糸谷戦も面白かった!糸谷さんが先手となり、後手一手損角換わりは消えましたが、糸谷さんは先手番でうまく角換わりに誘導した感じ。そして将棋は、相腰掛け銀から、後手は△73歩保留から穴熊への組み替えという大流行の形を作り、先手はこれまた4筋に飛車を振り直すという大流行の攻撃形を作りました。ここで先手は▲25歩と突かずに桂跳ねの余地を残す工夫。一手損角換わりのスペシャリストらしい構想だな^^。で、この形から、先手は▲45歩の突き捨てという定番の仕掛けを見せましたが、この仕掛けが棋譜中継の解説によると「過去のデータは先手にとってマイナス材料が多い」との事。しかし…

20140801竜王27TN_糸谷vs行方_角換腰掛銀47手 盤面図は、相腰掛け銀の仕掛けの常套手段である、先手の歩の連続突き捨ての途中。4筋突き捨てから開戦、続いて1筋、そして3筋を突き捨てにいった瞬間が47手目盤面図。ここで後手の行方さんは…

△22銀(48手目)
 うわ、△同歩と取らないのか?!行方さん、穴熊の完成を優先させましたが、これはヤバいんじゃないかい?

▲34歩
 これは嫌な拠点を作らせてしまった気がするぞ。これでもし端攻めから▲25桂が入っちゃうとヤバすぎる気がする…

△59角▲38飛△36歩
 割り打ちは角換わりによく出てくる後手の反撃筋ですね。しかしここで糸谷さんは…

▲13歩△同香▲25桂
 う~ん、キッチリ端の歩を浮かせてから桂を跳ね出しました。金駒が足りていない状態で、端の歩を浮かされ、香を浮かされたところで▲34歩の拠点と▲25桂が決まってしまうと、さすがにこれは先手申し分ないんじゃないかなあ。それよりも速い先手の攻めがあればいいのですが、いくらA級棋士の行方さんでもこれは難しいんじゃないかなあ。結局この優勢をひっくり返すことが出来ず、107手にて先手糸谷さんの勝ち!

◆◆◆◆◆◆

 というわけで、森内竜王への挑戦をかけた3番勝負は、羽生四冠vs糸谷6段となりました。終盤力がある事と、今はあまり指されなくなった一手損角換わりをメイン戦法に据えているので対策しにくいという2点で、糸谷さんが羽生さんを倒す事も十分にあり得るんじゃないかと思えてしまいます。これは挑戦者決定戦の3番勝負が楽しみ!今年の竜王戦トーナメント、面白い(^^)!!
プロフィール

ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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