第64回NHK杯 菅井竜也 vs 高崎一生 (角交換四間飛車)

 疲れております。寝不足です。今週こそ、NHK杯を見るのは控えるべきです。今勉強している角交換四間飛車以外なら、ぜったい寝よう。寝るぞ。…角交換四間飛車です(^^;)。。こうなった以上、ぜひとも居飛車に勝ってもらって、角交換四間飛車の破り方を覚えよう!

20140629NHK64_21手 菅井さんって、居飛車を指すんですね。現代振り飛車のバイブルである『菅井ノート』なんて出しているものだから、てっきり生粋の振り飛車党かと思ってました。さて、盤面図は21手目、向かい飛車に構えた後手に対し、先手の居飛車が▲46歩とあがったところ。この前のNHK杯▲小林裕-△鈴木大戦は、四間飛車に対して▲46歩~▲47銀、A級順位戦▲森内-△渡辺戦では後手の向かい飛車に対して▲36歩から振り飛車を迎え撃っていました。将棋を指し始めたばかりのころは、向かい飛車には絶対に▲36歩だったんですが、やっぱり▲46歩が本筋なんでしょうか。このあたり、先後が入れ替わると居飛車の玉の囲いが全然間に合わなくなるので、先手後手で有効な指し手が変わってしまうのかもしれません。

△44歩
 お、いきなり△33銀と逆棒銀にいかずに、まずは△44歩とあがりました。これはよくある▲66角の反撃を先受けして飛車のコビンを閉めたのかな?それとも位をとられるのを防いだのか?よくわかりませんが、プロっぽい渋い手です。

▲58金△33銀
 逆棒銀、来ました!!三間飛車や向かい飛車って、強い人と指すとこの向かい合った飛車の戦場で負けてしまうので、ここはどう戦うのかをよく見ておきたいです。それにしても、居飛車先手だと玉型の整備に間に合うので、後手で角交換四間飛車を受けるより全然楽そうだな。

▲56角
 いきなり角を打ったあああ!!!
いやいや、角交換の将棋って、いかに敵陣に角を打ち込むのかというところが大事というか、受ける場合は相手が角を打ってくれれば自陣に打ち込まれる筋が消えるので、駒組みが恐ろしく楽になります。というわけで、いつもチャンス到来まで角は打ち込まないでいるのですが、いきなり打っちゃうのか。。しかしこれ、逆棒銀の牽制としてはすごくいい手に見えます。構わず△24歩と来たら▲同歩△同銀▲23歩で、飛車か銀をタダで捕獲できるので、後手の逆棒銀の出足を遅らせることができる、というわけですね。なるほど~。。

△43金▲36歩△24歩▲37桂
 後手は逆棒銀に行く為に金を繰り出して34の歩を支え、その間に先手は▲36歩~▲37桂で2筋の受けを補強、これが間に合ってしまいました。な、なるほど~。。これは実践で即使えそうだぞ、覚えておこう(^^)。

△25歩▲同飛△24銀
 しかし後手は構わず逆棒銀を続行。ここで先手は…おお、桂じゃなくて飛車をぶつけました!!なるほど、玉型に差があるので、捌きあいは先手有利という事ですね。というわけで、後手は銀を当てて受けましたが、飛車の引き場所がすごかったです。

▲26飛
 ここ、▲29飛と引くのが普通と思ったのですが、なんと引き場所は26でした。ここ、戸辺さんの解説が素晴らしくて、「▲29飛には△27歩と抑え込まれるのが嫌だったのかも」とのこと。え、そんなの飛車でとってタダじゃん…と思ったら、△49角が飛車金両取りのうえ、馬を作られて試合終了ですね(^^;)。でも…じゃ、△27歩には銀を前進させない▲16歩と突きだしたら?それなら受かるは受かるんでしょうが、抑え込まれる事自体が嬉しくないという事なんでしょうね。

 以降、振り飛車はなんとか棒銀を捌きに行くんですが、菅井さんの受けが素晴らしく、銀も飛車も捌けません。一方の菅井さんは穴熊へのトランスフォームを終了、これで状況が一変、今度は菅井さんが飛車を捌きに行って、高崎さんがそれを拒否して抑え込みを狙う展開にひっくり返りました。
 そして終盤、と金を使われた攻めに来られ、速度負けすると見た高崎さんが強引に穴熊崩しにいくのですが、これが足りない。結果、104手にて先手菅井さんの勝ち!!だったんですが、この互いの終盤術が素晴らしすぎて、手筋の勉強の宝庫!思わず並べなおしてしまいました。で、結果論なんですが、実は後手がよかったのかも知れないと思ってしまいました。

20140629NHK64_77手 問題が、終盤に突入する後手の78手目。77手目のこの盤面図、居飛車はカッチカチの穴熊を作ることに成功したんですが、攻め筋が全くない。攻め駒は全部足の遅い駒、しかも7~8筋の攻防戦に使った24の桂も34の歩も37の銀も、ぜんぶ遊んでしまっています。これらを攻めに使えば確実に崩せますが、どう考えても速度負け。唯一の攻め筋は64に打ち込んだ歩の拠点ですが、後手はこの応接が難しかった。本譜は…

△74角成▲33歩成△24飛▲43と

 後手は馬を74に作ることで、63への金駒の打ち込みをケアしたんですが、引き換えに▲33歩成~▲43とのと金攻めを許してしまいました。結果、これが敗戦の一因に。でもこれ、△74角成は自然な応接だし、攻防手でもあるし、好手にしか見えません。ここに馬を作らないと、63への金駒の打ち込みがすこぶる厳しく見える。しかし、これは完全に結果論ですが、それよりもと金攻めの方が厳しかったので、それを防ぐ方法があったかというと…あったのかも。角の成り場所を74ではなく、解説の戸辺さんがチラッと言っていたように65にして検討してみたら…

△65角成

 △65角成のデメリットは、63への利きが作れない事と、穴熊姿焼きへの橋頭保となる9筋への利きが作れないこと。一方のメリットは、本譜の敗因のひとつとなった先手がと金攻めで43への寄りを防ぐことが出来るという事。で、これで63に打ち込まれると何が起こるかというと…

▲63銀△64馬▲72銀成△同金
 金駒を剥がされておっかないですが、先手の攻めの拠点を解消、さらにと金攻めも届きません。じゃ、銀じゃなくて金を打ち込まれたら?

▲63金△76桂▲72金△同金▲76金△同馬▲63銀△61金…
 いやあ、これは千日手を含みにして後手受かるのでは?実は、63を受けない方が受かったのかもしれません。いやあ、将棋って難しい…。

 もうひとつ思ったのは、先手からのと金攻めを受けつつ、端攻め目の穴熊崩しを成立させる攻防手はなかったのかという点です。これも本当に成立するのかどうかはわかりませんが、77手目盤面図からの本譜△74角成▲33歩成△24飛▲43と△95歩▲同歩の次。僕はよく穴熊を指すんですが(主に四間飛車持久戦)、振り飛車の方って、間に合わないとみるとまず間違いなく端攻めから反撃してきます。この攻防戦はもう500局ぐらいは指していると思うので慣れているんですが、戸辺さんの解説通り、歩が足りていれば叩いてから桂の跳ね出し、足りなければ垂らしてから桂の打ち込みが手筋なんだと思います(これって、振り飛車の方ってみんなそう指してくるんですが、藤井さんの本か何かに出ているんでしょうか?)。しかしこの場合、速度も問題だし、と金攻めの受けも同時に成立させないといけないので、垂らしていては間に合わない。じゃ、△95歩▲同歩の次は強引に…

△97歩▲同香△64馬
 として、94の拠点の歩を外しながら、と金の寄りを防いで、同時に9筋に馬のラインを合わせたら攻防手になったのかもしれません(駄目かもしれません^^;)。ああ、将棋ソフトを持っていたら、こういうところを検討できるのかなあ。なんか買おうかなあ。…高いんだよなあ(T_T)。俺には無理だ。。

 いずれにしても、今日の向かい飛車対策は、ものすごく参考になりました!今読んでいる『角交換四間飛車徹底ガイド』は、振り飛車よしの変化ばかりで、読んでいると居飛車絶望の気分になるのです(T_T)。今度は、△64歩からの反撃を指してみることにしよう!!

『3手詰めハンドブックⅡ』 浦野真彦・著

3tezumehandbook2.jpg 仕事で調べものがありまして、図書館に行ってきました。そしていつもの如く将棋コーナーに釘付けになってしまう私(^^;)。羽生さんの『終盤術』の1巻とか『戦いの絶対感覚』とか、いつも夢中で読んでしまって、すぐに1~2時間経っちゃいます。おまけに、仕事の本を借りてくるのを忘れてるし(゚∀゚*)エヘヘ。

 そんな中、詰め将棋の本が置いてありました。おお~、名著『3手詰めハンドブック』には2巻があるのか!!最近、2桁の詰め将棋にトライして脳みそが爆発しているので(^^;)、これはいい気分転換になると思い、ついつい借りてきてしまいました。…おおお~、面白いほどスラスラ解けるぞ!!たかだか1年半程度で、人間って上達するものだなあ。

 さて、『3手詰めハンドブックⅡ』をやった理由は、やり残しが無いようにしたかったからです。ほら、基礎を飛ばしてしまって、あとで苦労するって嫌じゃないですか。羽生さんが「終盤力を鍛えるには、3手詰めを何度もやると上達が速い」と言っていたのが、ずっと心に残ってるんです。だから、詰め将棋の名著といわれている浦野さんの「ハンドブック」シリーズは全部解きたいと思っているのです。そうしたら、「俺は少なくともハンドブックを全問解けるだけの棋力がある」って思えるじゃないですか(^^)。そしてこの本…いやあ、1巻より良く出来てるような気がします。で、これも制覇出来たので、コンプリートできた気分になって気持ちがいいです。

 さて、この本の何が良いかというと、構成と解答、このふたつが素晴らしい。まず、構成。最初の方の問題は、同じ基本手筋を連続して出題して、詰めの形を覚えさせてくれるようにしてあるように思えます。例えば、一間龍だったら一間龍の寄せを何問も連続して出題。で、そういう基礎編が終わったら、次第に色々な寄せ筋をシャッフルして出題、問題がだんだん難しくなります。いやあ、これは上達の近道なんじゃなかろうか。ただ作ってあるだけじゃなくって、読んでいる人が強くなるようにという配慮をビシビシ感じます。ありがとう、浦野さん。
 次に、解答。詰め将棋の本って、変化の説明を省いているものがあります。あれをやられると、「え、2手目で玉を躱されたらどうなるの?」みたいな事態になったりして、ずうっとモンヤリした状態に(^^;)。しかし浦野さんのハンドブックシリーズは、変化の筋も丁寧に書いてあるから嬉しいです。そして、解答欄で更に嬉しいのが、寄せで使った手筋を言葉で書いてくれています。「逃げ道に捨てる」、「利きをそらす」、「邪魔駒を捨てる」、みたいな感じです。これが身につくのが、本当に素晴らしい(^^)。。人間って、言語的思考が優先する生き物なので、将棋に慣れるまではやっぱり言葉で思考のガイドを作るのは効率の良い方法だと思います。最初の頃、生意気にも「将棋の論理は言葉ではなくて、あの盤面そのものだろう」なんて考えて上達の遅れた僕はしみじみとそう思います。。で、これらの作りが、なんとなく1集より良く出来てる気がする。

 詰め将棋って、プロでもずっと練習しているそうですね。そして、初心者も絶対にやる将棋の勉強だと思います。僕は、詰め将棋よりも、寄せの手筋と囲い崩しの勉強を先にやった方が効率が良いと思っていますが、でも詰め将棋をやらないで強くなるなんてあり得ない。で、これから将棋の勉強を始めようという人には、間違っても5手詰めからなんて止めて、絶対に3手詰めから始めた方が良いと思います。勉強し始めの頃、「もしかして俺ってまあまあ強いんじゃないか」と思っていたのですが、それが3手詰めが半分も解けず、ショックを覚えたことがあります(T_T)。で、この『3手詰めハンドブック』の第2集は、第1集をやってから読まないといけない内容かというとそういう事は全然無くて、どちらからやっても、あるいはどちらかだけをやるのでも特に問題はないと感じました。スラスラ解けるならどちらか1冊で十分、けっこう手間取るようなら5手詰めに行かずに3手詰めを2冊ともやる、みたいな。僕の実感だと、3手詰めが即答で解けるようになったら、詰め将棋的な終盤力はもう4級ぐらいまでは来ていると思います。終盤力強化の近道の1冊、これから将棋を勉強しようという人のマストアイテムと思います!



角換わり棒銀の受け方

 このブログを書き始めた1年前は、将棋の勉強を始めて半年ほどが経過した頃でした。備忘録としての側面が強かったのですが、読んでくださる人の数が僕の予想を大幅に超えており、嬉しい反面、ビビッてます。僕が超強い人ならそれは嬉しいことなんですが、「がんばって初段を目指」している程度の棋力であるという事を忘れないでいただきたいなあ、と(今は何とか段位にはたどり着けたんですが、人に教えることができるほどの棋力があるわけではないという意味では同じようなものかと。特に、序盤定跡は相当にやばいです^^;)。。その上での話なのですが…

かつめさんという方から、以下のようなコメントをいただきました。

「いきなり質問で恐縮なのですが・・・私の記憶では、『最新 棒銀戦法』では先手棒銀は後手が△6三銀型でも△7三銀型でも先手優勢になる(どちらかといえば△7三銀型の方が良い)と書かれてあり、『よくわかる角換わり』では、先手が居玉棒銀の場合であれば△6三銀型なら後手から(ハメ手に近い)王手飛車の筋があるため後手有利、しかし居玉でないのならば△6三銀型であろうが△7三銀型であろうが互角または先手有利(ハメ手にはまらない限りは△7三銀型の方が良い)と書かれてあったと思います。
 なので、わたしは角換わりの後手番を持ち、先手が棒銀を選択してきた場合、ハメ手に頼って△6三銀型を選択しています。もちろん相手が格上の場合はそんなものにハマるわけもなく、結局は定跡から外れての終盤勝負になるわけですが・・・。とにかく、先手棒銀で後手が必ずよくなる定跡が書かれてあったようには思えないのです。
 しかしながら、本記事では「角換わり棒銀を仕掛けられた時、『よくわかる~』とこの本を読んでいれば必勝」と書かれてあり、私の足りない頭では理解が追いついていない状態で・・・。
もしよろしければ、このことについてもう少し具体的に教えていただけませんでしょうか。相手が先手棒銀の場合、ShougiX様はどういう受け方を選択されるのでしょうか。」

 というわけで、復習がてら、ご返答させていただこうと思います。あくまで、僕の棋力はそこそこのもので、とても強いとは言えないという事を忘れないでくださいね(^^;)。

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角換わり22手 まず、角換わりの基本図です。後手はとにかくこの形にまで持っていければもう大丈夫だと思います。ここでは△74歩型を採用しましたが、△64歩型であっても、先手棒銀が捌けるのかどうかという点では同じ結論になるので、△64歩型の説明は省略させていただきます。

(先手が玉を囲いに行くと…)

 で、ここから先手が棒銀を保留して玉を囲いに行くとどうなるかというと…
▲68玉△44銀▲58金△94歩▲79玉

 大体こんな感じに進行するんじゃないかと思います。この時点では互角ぐらいだろうと個人的には思うのですが、注目すべきは、先手の棒銀が捌けていない点です。つまり、先手の攻めはすでに手詰まりであると僕は理解しています。一方の後手は?この状況、後手は絶好の早繰り銀の駒組みですよね。ここで自然な受けといえば▲66歩だと思うのですが、それは…

▲66歩△75歩▲同歩△同銀
 もうこれは早繰り銀の大成功例、後手よしなんじゃないかと。

 あと、僕が思いつく先手の自然な手というと、先に▲88玉と潜られる準ぐらいしか思いつかないのですが、それも早繰り銀の狙い筋は変わらず、△54角あたりを打ち込んで、増やされた87の利きの数を増やしてからやっぱり△75歩で、これも後手よいんじゃないかと思います。あとはマジメに考えてないから検証してみないと分かりませんが、▲88玉には△15歩という交換を入れても、今度は矢倉崩しの好形に持ち込むことができるので、それも後手のほうが指せるような気がします。早繰り銀の定石に関しては『よくわかる角換わり』とか、先後逆ですが青野さんの『最新棒銀戦法』に書いてある早繰り銀の銀捌きなんかも役に立つかと思います。まとめると、先手は棒銀に行きながら囲いを優先して指してしまうと、棒銀の銀が捌けず、かつ後手に先制を許す事となるわけで、だったら何で棒銀を選択したんだ、という事なんじゃないかと思います。囲いに行くと、そもそも先手は棒銀をさばきに行く暇すらない、という事だと私は理解しています。

(棒銀をつっかけると)

 ようやく本題ですが、ここから棒銀に行くとどうなるか?それこそ、『最新棒銀戦法』と『よくわかる角換わり』に正解が全部書いてあると思います。
 その前に…僕が示した角換わり棒銀の基本図ですが、『よくわかる角換わり』だと、この1筋の歩を突き合わないで▲15銀まで進出できる順があるように書いてあると思います。だから、棒銀に行っても互角になりうるんですね。でも、棒銀を見たら△73銀を保留して△14歩と突くと、先手は△14歩不突型の棒銀定跡に踏み込むことができません。つまり△14歩型にするかどうかは先手の権利じゃなくて、後手の権利なんですね。△73銀は不急の一手なんだと思います。僕はこれをネット将棋の81dojoで当たり前のように指されて痛い目を見て学習しました。これがなければ、僕も角換わり棒銀を指し続けていたと思うのですが…。この順はたしか『よくわかる~』には説明されていなかったと思います。

 あとは、あまりに有名な定跡手順ですので、少し注意をしたほうがいいところまでは符号だけ書いていきます。有力な変化も色々あるのですが、それについては上記2冊の本か、『羽生の頭脳 角換わり』を参照してください。

角換わり33手▲15歩△同歩▲同銀△同香▲同香△16歩▲18歩△44銀▲24歩△19角▲27飛(33手目盤面図)

 で、ここが古い定跡書と『よくわかる~』の分岐点で、『最新棒銀戦法』や『羽生の頭脳』では、ここで△24歩で先手よしの結論だった気がします。しかし『よくわかる~』では…

△17歩成▲同歩△18銀▲26飛△35銀▲56飛△29銀不成…

 という順で、以下はどの変化は後手よし。良しどころか、初段もあれば後手勝勢というぐらいの圧倒的な局面になります。これもたしか『よくわかる~』に正解手順がズバリ書いてあったと思います。つまり、△14歩型で受ければ、角交換棒銀は後手よしで結論というのが現状なんじゃないかと。
そうそう、▲56飛に対する応手も、森内さんの新手で後手良しに覆ったのだと何かで読んだ記憶があるので、それ以前の定跡書では互角~先手よしになってるのではないかと。というわけで、『最新棒銀戦法』が、変化を一番詳しく書いてあって良いと思うのですが、結論の覆った局面が何か所かあるので、そこを『よくわかる~』で修正するとよいと思います。また、『よくわかる~』で、棒銀に行って互角になる変化は、先述の方法で先手から互角の筋を指すことができなくなるので、実際には後手良しが結論、という事になると思います。『よくわかる~』は、あの量で一手損まで述べるという暴挙に出ているので(^^)、あくまで角換わり全体の見取り図を学ぶ本で、そこから先は専門定跡書とプロの棋譜研究を行う必要があると思います。でも、あの本を読まないと、スタート地点にすら立てないと思うので、マストだと思うのですが(^^)。。

 というのが、僕の棒銀の受けの考えです。ただし…何度も言いますが、僕の棋力は褒められたものではないので、これで正しいかどうか自信がないのですが(^^;)。。そうそう、僕は角交換棒銀でアマ4段の人に勝ったこともあるのですが(^^)v、それは後手が右玉で受けたから。で、気分を良くして角交換棒銀をずいぶん指したんですが、棒銀が無理だと思い知らされた対局がありまして、その棋譜も載せられると良いのですが…棋譜の載せ方がわかりません(T_T)。あれ、どうやればいいんだろうか。



切り替えていく

 日本負けた…終わった。。しかし、今日のサッカーは面白かったし、素晴らしかった。もう勝つしか生き残る道がなかったのだから、ああいうリスキーな戦法を選択したという決断も、またそれを見事に形にした実践も見事でした!!すべての選手に拍手を送りたいです!!

 まあでも終わったものは仕方がない、これから棋聖戦に切り替えていくぞ!

森下卓

MorishitaTaku.jpg 僕はプロ将棋というものを、羽生世代を中心に眺めているような気がします。その前になると谷川さんが飛び抜けて強かった世代で、塚田さんや森下さんや島さんはそのグループにいるイメージ。その前となると中原さんや米長さんや加藤一二三さん、その前となると大山さんや升田さん、それ以前は有史以前、といったイメージです。大山さんや升田さんとなると、もう伝説の世界の人なので「凄い」となるのですが、これが今まだ現役でいる40台後半以上の棋士となると、そうはなりません。今この瞬間の、あまり強くなくなってしまった将棋を見てしまうからなんでしょうね。昔、プロ野球で似たような体験をしたことがあります。ジャイアンツに堀内という伝説の剛球投手がいたのですが、幼少時の僕が見た堀内さんというのはもう引退間際ぐらいの時で、球も遅いし、けっこう打たれるし、とにかく印象が悪い。で、あとから全盛期のビデオなんかを見て「すごいわ」と思い直すという感じ。しかし思い直せたからいい方で、j実際には思い直さないまま良くないイメージのままの場合が多い。そんなわけで、森下さんに関しても、正直のところ、印象は良いものではありませんでした。電王戦の時も、「勝てそうな人に出て欲しいなあ」という感じで、実は良くなかった。イメージが変わったのは、電王戦以降の森下さんを見てからです。

 森下さんは、賭け将棋を生業としていた花村さんの弟子。花村さんの書いた棋書が古本屋にあって立ち読みした事があるんですが、なんかイカサマについてばかり書いてありました(^^;)。しかし森下さんの印象というのは、そういうのとは全く反対で、すごく人柄が良くてマジメで、どちらかというとお坊ちゃんという感じです。で、若かった頃はすごく強くて、棋戦優勝を8回もしているし、タイトル戦登場も6回あります…が、タイトルを取る事は一度も出来ず。理由は?谷川さんに敗れ、羽生さんには4度挑戦して、4度弾き返されています。これは相手が悪すぎる。で、そうこうしているうちに全盛期を過ぎてしまい、現在に至るという感じなんだと思います。その中での座右の銘が「淡々」だったそうで、これは少しわかる気がします。マイナスとプラスの両方を含まれているような言葉ですね。

 中国の古い言葉に、「失意泰然」というものがあります。字面通りに受け取るのなら、失意の時には落ち込むのではなく、泰然としていろ、という事。失意を味わった事のない人には軽く聞こえる言葉かも知れませんが、本当にどん底の気分を味わった事のある人なら、この言葉って胸に響くんじゃないかという気がします。僕は、この言葉に救われた事があります。失意が形になるときって、どういう状況なんでしょうか。極端な例を挙げると、自殺なんかは、そのひとつなんじゃないかと。自殺大国の日本ですが、自殺する瞬間の人の気持ちって、どんな感じなんでしょうね。完全な無気力に陥る事もあるんでしょうが、もっと多いのは、その前段階の絶望を味わった時に、自殺に踏み込むというのも多い気がします。もし自分の起こした会社がつぶれて、何億もの借金が覆いかぶさったら。一番信用していた家族や恋人から裏切られたら。自分の夢がかなわないという事が分かってしまったら。ガンに冒されている事を知ってしまったら。こういう救いがたい状況の時に、最初に要求される事って、具体的な対処より先に、最善手を冷静に考える事が出来る状態に自分を保つ事、つまり「泰然」とする事なんじゃないかと。森下さんの「淡々」という言葉は、これと似たものを指し示しているんじゃないかと。ある側面では失意のうちにある人の言葉だと思うんですが、しかしその中でも心を乱してしまわずに最善を行い続ける、これが「淡々」なんじゃないかと。本気で何かを成そうと頑張ってきた人が、5年努力し、10年努力し、20年努力し、しかしそれでも夢がかなう事はないと朧に分かってきてしまう…これって、人生の中間地点ぐらいまで来た人の多くに訪れる事になる、人生のひとつの壁なんじゃないかと思います。森下さんも、きっとそういう心境だったんじゃないかと。しかし、これが人間対コンピュータでプロ棋士が追い詰められる事になった電王戦をきっかけに変化します。

 きっかけはコンピュータ対塚田さんの一戦だったそうです。プロデビューから連勝記録まで作ってタイトルを取った塚田さんは、森下さんぐらいの世代の人にとっては羨望と嫉妬の両方が同居していた対象なんじゃないかと。森下さんの方が強いだろうに、森下さんはタイトルを取れずに将棋の世界の脇役で終わりそう。しかし塚田さんはタイトルを取ったという一点で将棋の歴史に名を残す。その塚田さんが、いま自分と同じように勝てなくなり全盛を過ぎ、しかしその状況でコンピュータに真剣勝負を挑みます。もう投げても誰も責めないというぐらいのひどい状況になってからも勝負を投げず、ギリギリのところで引き分けに持ち込んで涙を流します。これを見た森下さんは、電王戦の出場に手を挙げたそうです。1年後の電王戦で、森下さんは伝家の宝刀の矢倉でコンピュータに挑みますが敗退。この時、あまり練習対局をしなかったという内容の局後インタビューがあって、僕は「やる気がないなら立候補なんてするなよ」と思ったのですが、しかし引っかかっていた事がありました。負けとはいえ、この将棋の棋譜が素晴らしかったのです。これ、本当に準備なしで、全盛を過ぎてB2にまで落ちた棋士の残せる棋譜なんだろうか。順位戦B2以下というのは、これからB1やAに上っていく若手昇り竜と、どんどん落ちていくベテランが同居するランクなので、同じB2といっても棋力が同じわけでは全然ないんですよね。しかも降級は人数が決まっているので、弱くても何とかしがみ続けることが出来る。森下さんぐらいの年齢のB2クラスの人の棋譜って、正直のところひどいものも結構あります。しかし、森下さんとコンピュータの棋譜って、そんな所にいる人の指した将棋には到底思えませんでした。
 そして、後日談。「あまり練習対局はしなかった」というのは嘘で、

「努力しました」と練習をアピールしてしまうと、負けた時の実は電王戦に向けてもの凄い努力をしていたそうです。つまり、「努力しました」と言う事が、負けた時に人に頑張りを認めてもらいたいという、一種の言い訳や甘えという行動になってしまうのを嫌った行動だったんじゃないかと。努力していたであろうことは、電王戦の素晴らしい棋譜を見ても、電王戦以降の森下さんの勝率を見ても明らかです。そして森下さんは、座右の銘を「淡々」から「情熱」に変えます。…いやあ、口でいうのは簡単です。しかし挙体全真、これを身をもって実際に行為するところが素晴らしい。もう、夢潰えたかに見える所から再起を図るというと、映画の「ロッキー」なんかを思い出しますが、あれは映画であって、作り話。リアルで情熱をもってこれに取り組むという所に感動してしまいました。

 そしてこの前のNHK杯。森下さんは、20代唯一のA級棋士である広瀬さんに勝ちました。しかも完勝です。口だけで「情熱」なんて言っている人に出来る芸当ではありません。本当に、日々を情熱をもって将棋に打ち込んでいるんじゃないかと思いました。

 トップアスリートというのは、だいたい子供の頃からひとつの事をやってきた人で、しかも最初からトップであって負けの経験を知らない人というのが多い気がします。しかし、ほとんどの人は、負けを経験し、絶望を味わいながらも生きていきます。そういう人の方が、実は人生というものを強く経験しているように思えてしまいます。今の森下さんの生き方というのは、素直にお手本にしたいと思える、素晴らしいものと思っています。

第64回NHK杯 広瀬章人 vs 森下卓 (矢倉急戦 右四間飛車)

 仕事がヘヴィーになってきたので、NHK杯はオモシロそうなものだけ見ようという気分になってはや2ヶ月。ところが…今週もまたまた面白すぎて、全部見ちゃいました(^^;)。正直言って、サッカーより面白いわ。。それにしても、電王戦以来、森下さんって変わったなと思います。
 なにが変わったかといって、心構えだけじゃなくって、将棋の内容まで変わったという所が凄い。受け将棋の代表格みたいな人が、なんと攻めが切れた瞬間に負けという右四間飛車を採用なんて、ありえない。昔はこの戦型にさんざんやられたので、広瀬さんがこれをどうやっつけるのかを見たかったんですが…いやいや、とんでもない事になってしまいました。

 一時は右四間飛車対策に追われまくった事もありまして(81dojoには初段付近に右四間ばかり指す人がいます。この人に勝たない事には初段になれないという状況で、死に物狂いで研究したのはいい思い出です^^)、所司さんの『矢倉急戦道場 棒銀&右四間』とか羽生さんの『変わりゆく現代将棋 下』とか金井さんの『対急戦矢倉必勝ガイド』あたりを読みまくっていた事があります。中川流とか、右四間にも色々あるんですよね。僕は何を中川流というのかよく分かっていないんですが(^^;)、とにかく多いのが、後手が△54歩を突かずに△64歩~△54銀と腰掛け銀にしていく形。逆に言えば、△54歩を見たら右四間は消えたものとばかり思っていました。ところが今日の将棋はちょっと違いました。

20140622NHK64_広瀬vs森下_右四間19手 昨日の羽生棋王3冠vs森内竜王の棋聖戦のように、矢倉戦で後手が早めに△53銀を決めた格好になりました。対して、先手の広瀬さんがはや目に▲67金右とあがって矢倉の形を決めたところが19手目の盤面図。▲67金右は不急の一手と覚えていたのですが(昨日の棋聖戦でも後回しにしていた気がする)、こう指すプロも多いので、特に問題はないのかも、なんて思い直していました。が…

△64歩
 うおお、右四間飛車か?!しかし、プロで右四間なんて、北浜さんか中川さんが指したのしか見たことが無いぞ。だいたい、腰掛け銀ではなくて△53銀からでもいけるのか?後手の右銀が攻撃に参加しにくいように思えるんですが…

▲26歩△62飛▲25歩
 右四間飛車だあああああ!!…しかし、解説の阿久津さんはこれを右四間飛車と呼んでいなかったので、正確にはちょっと違うのかもしれません(^^;)。なんでも、塚田さんの得意戦法だったそうで(ここにも森下さんがこの戦法を採用した理由がありそうな気が)。

△65歩
 うおお、桂も跳ねず、銀も攻撃参加しないまま、いきなり行ったああああ!!
単に飛車先の歩を交換しただけかもしれませんが、もしこれで成功するなら恐るべしという事になっちゃうぞ。

▲同歩△同飛▲66歩△61飛
 とりあえずは、飛車先の歩の交換でおさまりましたね。ここで先手に手番が渡って…

▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛
 今度は先手が飛車先の歩を交換しておさまりました。しかし、最後に▲28飛とせずに▲34歩として横歩を取りに行ったらどうなるんだろうか。後手の反撃でもう一度△65歩から仕掛けられたら、▲同歩△同飛▲66歩に△85飛がまずいという事かなあ。う~ん、ちょっと分かりません。

20140622NHK64_広瀬vs森下_右四間35手△74歩▲57銀(35手目盤面図)△73桂▲68銀左(37手目)

 ここからは第2次駒組み。後手はようやく右桂の攻撃参加を準備、先手は37手目に▲68銀左と銀を引いて、右四間の受けの形である雁木に組み直しました。しかし…

 もう過程が全然違うので何とも言えないのですが、右四間対策に追われまくっていた頃、色んな本をめぐり廻ってもぜんぜん受け切れずに負けまくり、羽生さんの『変わりゆく現代将棋』に辿り着いたところで、ようやく右四間を破る事に出来るようになったという苦い思い出があります。あの本の何が良かったって、けっきょく右四間を受け切るってムズカシくって、つまり攻めを切らせていよいよ反撃…というのは現実的に難しい構想で、攻め合いに行って後手玉の形の悪さを咎めないといけない。だから、手が間に合うようになるために、一手で攻め合いに行ける反撃の筋までは作っておかないとシンドい。で、その反撃の筋の最有力候補として、先手は右銀を繰り出して34の歩を狙いに行っていたのが、羽生本の主旨だったと思います(他には、81dojoで右四間の73の桂を的にして咎めるのが巧い人がいて、後手の飛車の位置次第ではそれも狙える時がある気がします)。それを受けるべく△33銀としてくれれば角道が止まるので、そうなれば右四間の恐怖のひとつである角のラインが止まって、先手成功。もし後手が間違えて△33角なんて受け方をしてくれれば▲34銀で先手の勝利、お疲れ様です( ̄ー ̄)。その前提で言うとですね…37手目に、先手からの反撃が一手で間に合う▲46銀ではなくって、先に守りの雁木を完成させる▲68銀左を優先したというのは、ひとつのターニングポイントだったような気がします。これはもちろん結果論で、じゃ代えて▲46銀~▲35銀なら先手が良かったのかというと全然わからないんですが、以降の森下さんの見事な攻めを見ると、ここが分かれ目だったのかなという気がしました。

20140622NHK64_広瀬vs森下_右四間53手 進んで53手目、森下さんは攻めと守りのバランスを取った駒組みに数手を使い、広瀬さんは守りを固めてから遅ればせながらいよいよ右銀を攻撃参加させたという状況。しかし、ここからの森下さんの攻めが鋭すぎました。この盤面図で、既に後手よしだなんて信じられん。

△86歩
…いやあ、何でもない一手に見えるんですが、阿久津さんの解説を聴いていると、もう先手に受ける方法が無いんじゃないかとしか思えませんでした。手抜いたら後手勝ちなので問題外ですが、▲同角は?…△45歩▲35銀△65歩▲24歩△同歩▲同銀△66歩、これは後手が速いな。という事は、▲同歩しかなさそうですが…

▲同歩△85歩
 連打の歩か!これ、手抜いて▲24歩はさっきと同じで後手が速いので、これも▲同歩しかなさそうですが…

▲同歩△95歩
 …いやあ、5手一組の歩の手筋ですが、これは先手参ったようにしか思えません。▲同歩なら△98歩以下、典型的な端攻めが決まっちゃうし、手抜いて▲24歩はやっぱり間に合わない。こう考えると、やっぱり先手は右銀の繰り出しが遅れたのが全てだったんじゃないかという気がしてしまいます。ここで広瀬さん、さすがA級棋士!という曲線的な指し回しに出ます!!

△86角
 …いやあ、これは見事。端を受けつつ、後手の玉頭を直撃しています。すぐにどうという訳ではないですが、右辺でごちゃごちゃと戦いを起こせば、手順にこの角のラインを活かしたうまい攻防手が発生しそうな気もします(^^)。しかし…森下さんは辛かったです。。

△96歩▲98歩△65歩▲55歩△45歩▲54歩△同銀直▲55歩△66歩
 広瀬さん、突き違いの歩なんかを駆使して攻め合い、速度計算の難しい局面を作り出します。こんな指し方されたら、アマならみんな騙されちゃうだろう。。しかし…森下さんの指し回しが見事すぎる。いやあ、これは素晴らしかった!

 ここからの寄せも急ぎ過ぎず慎重になりすぎずで綺麗に寄せ切り、114手にて森下さんの勝ち!いやいや、若手で一気にA級まで上り詰めた今が旬の広瀬さんが一回戦で消えるとは…。

 それにしても、森下さんの指し回しが見事すぎました。もう全盛を過ぎた人かと思っていましたが、攻め将棋でA級棋士を攻めつぶすなんて、とんでもない強さじゃないですか。しかし、やっぱり右四間飛車は怖いな。これで右四間使いが増えたりしたら嫌だなあ。

第85期棋聖戦 第2局 羽生善治 vs 森内俊之 (矢倉)

 5番勝負の第1局を後手番でいきなりブレークした羽生さん。この第2局を落とすと一気にカド番に追い込まれる森内さん、今日は落とすわけにはいきません。そして戦型は…おおお!ついに来ました、満を持しての登場、矢倉本組みです!!森内さんの最強戦法でありながら、名人戦ではついに登場しなかったので、見たかったのです(^^)。しかし…誘ったのは羽生さんの方というのがちょっと不気味。今期の羽生さんは順位戦を戦わなくていいので、研究時間が例年よりありそうだしなあ。

 序盤の駒組みで面白かったのが、先手の羽生さんが矢倉城を築くよりも先に▲37銀とあがった事です。どちらにしても本筋に合流するのかもしれませんが、これで後手の森内さんが右銀の方針を決めるより先に△64角とあがる事になり、後手からの先制がなくなりました。細かい事ですが、これはなるほどと思わされました。

20140621_32手 序盤、32手目の盤面図です。後手の森内さんが、右銀を73ではなく53にあがり、玉の入城を保留しています。僕はいつも構わずに▲46銀37桂を目指すのですが…

▲16歩△94歩▲15歩
 互いに敵矢倉城の側の端歩を伸ばした後、先手は更に端歩を突き越しました。

△22玉
 後手は端歩を突き越しよりも、玉の入城を優先させましたね。これは受け将棋の森内さんらしい選択かな?

▲17香
 おおっと、雀刺しか!!いやあ、雀刺しって、覚えたての頃はバカの一つ覚えみたいにガシガシ指していたんですが、なんか無理攻めのような気がして、全然指さなくなってしまいました。しかし、羽生さんがタイトル戦で使うという事は、無理攻めという訳でもないのか。その成立条件は?広瀬さんや阿久津さんの解説によると、「△53銀には▲46銀とあがりにくいので、▲16歩が多い」との事。で、その流れで、はやめの△53銀には端攻めが多くなるとの事です。なるほど~、勉強になったぞ。。しかも、この香をあがる位置というのが、最近では17よりも16の方が多いそうで。いやあ、広瀬さん、素晴らしい解説だ。

△95歩▲18飛△24銀▲26銀△45歩▲35歩
 雀刺しって、桂を跳ねて角桂香飛の威力で突破するもんだと思っていたんですが、羽生さんは桂を跳ねず、しかもいきなり▲35歩と仕掛けました!これで銀交換確定ですね。

△同歩▲同銀△同銀
 銀交換をして…

▲65歩△73角
 おお、銀を取る前に6筋の歩を突き出しました!いつ突くかはともかく、6筋の歩の突き出しは勉強しましたよ(^^)。これ、66のスペースを開けてここに角を潜るんですよ。そうすると、コビンの空いた矢倉に角が直撃するんですよね。…でも、あんまり使いこなせた事が無いなあ。。

▲35角(先手、銀を取り返した)△44銀▲57角
 これでまずはひと段落ですが…もうすでに先手指しやすい気がするなあ。角換わりにせよ相掛かりにせよ矢倉にせよ、ほぼ同形になる時の相居飛車って、先着出来る先手がやっぱりちょっと有利な気がします。

 以降、羽生さんは手駒にした銀を守りに使い、端攻め。しかしさすがは森内さん、端を突破させるなんて事にはならず、しかもかなり強い手をガシガシ指してきます。受けは受けなんですが、攻めを切らす受け潰しというのではなくって、相手の攻め駒を攻めていくような感じ。ここのところ羽生さんに連敗しているので、指し手の方針を変えてみたのかもしれません。

20140621棋聖85-2_羽生vs森内_矢倉98手 また、羽生さんの中終盤の指し回しもとんでもないものがありました。先手の攻めが切れたか…というところで、もの凄い曲線的な指し回し。盤面図は98手目、飛車も捌けず、角も失い、後手に入玉を狙われ、更に攻めが切れてしまったかに見える先手。銀が助からないので、せめて金銀交換して終わらせたいですが、その瞬間に手番を渡してしまうという、ついに森内さんが逆転したように見えたんですが…

▲33歩△同金
 ああ、これで金銀交換で先手の攻めが切れた。今日は森内さんの勝ちだ、と思ったら…

▲73歩成
 なんだこれはw(゚д゚* )w。。
!!いやあ、意味がまったく分からないぞ。でも少し安心したのは、佐藤康光さんも阿久津さんも広瀬さんも理解できていないみたいです( ̄ー ̄)。

△73同角▲33銀成△同玉
 73のと金を桂で外すのか角で外すのか、これも異常にムズカシイ問題だと思うのですが、森内さんの選択は角。で、羽生さんは33の地点で金銀交換して、しかしこれで攻めが切れたと思ったら…

▲64歩
 …いったい何が起こっているのか、まったく理解できません。要するに、自分の攻めも切れて手を渡す事になるのは避けられなかったけど、相手の速い反撃をこうして封じる事で、相手もまたすぐに手番を渡さざるを得なくした、という事なのかなあ。ここは本当に混乱させられた感じ、いまだに何が起こったのか理解できていません。

 しかしこれが好手順だったのか眩惑の指し回しだったのか、森内さんは入玉も出来そうに見えたし、攻めても優勢に見えたんですが、なんと羽生さんは入玉を防ぎながら、なんと寄せ切ってしまいました。。結果、141手にて先手羽生さんの勝ち!!う~ん、順はまったく分かりませんが、森内さんに勝ち筋は本当になかったんだろうか、魔法にかかったような気分、信じられない。そういえば去年の中村さんとのタイトル戦でも、羽生さんは入玉を押し返して寄せてしまったとんでもない終盤術がありましたね。森内さんは、終盤で1分将棋になってしまったのもきつかった。

 これで棋聖戦は羽生さんの2連勝、あっという間にリーチです。ついこの前の順位戦で、あの2冠の渡辺さんに何もさせないで一方的にフルボッコした森内さんが、羽生さん相手にはなんと6連敗ですか。いやあ、今の羽生さん、手のつけようがないかも知れません。強すぎる、すごすぎる。

第73期順位戦 A級 1回戦

 一昨日の森内竜王vs渡辺2冠と、昨日の三浦さんvs郷田さんを終えて、A級順位戦の一回戦が終わりました。

○森内俊之 vs 渡辺明●
 いきなりの今期順位戦の事実上の頂上決戦!ひとつ前の記事で書いたように、森内さんの角交換四間飛車破りが凄かった!序中盤は完璧、角を切っての鋭い仕掛けから寄せまでもあっという間の完璧な指し回しでした!勝った方が名人挑戦に近づくと思っていたんですが、これは次も羽生さんvs森内さんの名人戦になるかもしれませんね。しかし渡辺さん、今後も後手番で振り飛車を指し続けるんだろうか。対抗形が見れるという意味では嬉しいのですが、なんだかこのままズルズルと負けを重ねてしまいそうで、心配です。。

●三浦弘行 vs 郷田真隆○
 これはいい勝負になるんじゃないかと思いましたが、意外や意外、郷田さんの圧勝!郷田さんは去年から好調をキープし続けています。郷田さん、名人挑戦にいいスタートを切りましたが、次の佐藤康光戦が早くも山かと。

○行方尚史 vs 阿久津主税●
 あれ、これは横歩取りになったやつだったかな?行方さんが右と左の銀が入れ替わったような使い方をした将棋だったような。それにしても、行方さんは結婚してから本当に強くなりましたね。棋譜を見ても、正面から組み合うみたいな横綱相撲みたいなものが多くて、しかもそれで抑え込んでしまう。「これは強いわ…」とため息の出てしまう将棋が多いです。一方の阿久津さん、順位の悪い今期さえ踏ん張ってA級に残留できてしまえば一流棋士の仲間入り、落ちれば次のチャンスは来ないかも知れないので、なんとか頑張ってほしいです。

○佐藤康光 vs 久保利明●
 これはメチャメチャ面白かった!先手久保さんの中飛車に対して後手佐藤さんが2間飛車。それを久保さんが飛車で受けて向かい飛車になり、先手穴熊に後手美濃、そしてなんと3筋から開戦…という、定跡というよりも、互いの構想力が正面からぶつかったスゴイ将棋でした!そして…とても届きそうにないところから穴熊を崩しにいった佐藤さんの寄せが凄すぎる。。速度的に勝てるわけないだろうという所からのとんでもない寄せ、この終盤力は化け物だわ。。しかし佐藤さん、今期も相変わらず独創的な将棋を指し続けるのでしょうか。対戦相手は対策しづらくて嫌な気分だろうなあ(^^;)。

●深浦康市 vs 広瀬章人○
 A級唯一の20代棋士の広瀬さん、勝ちました!!順位戦は、どんなに勝ちまくってもA級にあがるまで4年はかかるので、広瀬さんの強さはホンモノみたいです。やっぱり、終盤力があるというのは強い武器ですよね。5年後のA級って、広瀬さんとか渡辺さんとか豊島さんあたりを中心に回りそうな気がします。

 というわけで、まだ1回戦なんですが、やっぱり順位戦は燃えますね!(`・ω・´)。そして、A級順位戦の将棋って、やっぱりどれもこれも凄いです。参考にしたい棋譜ばかりで、いつか研究しようと思っている、僕の棋譜コレクションフォルダーがパンパンです。。

第73期A級順位戦 森内俊之 vs 渡辺明 (角交換四間飛車)

 去年、あんまり仕事がなかった事をいい事に始めた将棋の勉強でしたが、最近は鬼のように忙しくなっております(T_T)。好きで選んだ仕事なので嬉しい悲鳴なんですが、将棋の時間が減る事だけがちょっと悲しい。。で、昨日の順位戦をチェックすると…おおお、森内竜王vs渡辺2冠じゃないですか!いきなりのA級頂上対決、はやくも来期の名人戦の行方を左右する大一番です!!
 そして、もっとびっくりしたのが…渡辺さん、角交換四間飛車だああ!!!いやあ、渡辺さん、後手番で徹底して振り飛車を指しますね。後手番の戦型選択に苦労しているみたいですが、対抗形の勉強をしたい僕としては、渡辺さんのような超強豪が振り飛車を指してくれるのは嬉しい限りです(居飛車がそれをどう破るのかを見たいんですが^^;)。

20140617順位戦64_15手 まずは、後手番の角交換四間飛車に対する序盤の指し手がメチャクチャ参考になりました!盤面図は15手目、アマチュアだと、もっと早い段階で角交換している事が多い気もしますが、それ以外の形は角交換四間飛車でよくある形。最近、もし角交換後に向かい飛車にされた場合、居飛車側の▲25歩と▲35歩が本当に良いのかどうか悩んでいた僕にとっては、森内さんが堂々とこの構えをした事に勇気づけられました。で、ここからの指し回しが凄い!

△88角成▲同銀△22銀▲24歩△同歩▲同飛

 角交換するならこれが最後のタイミングというぐらいまで溜めてから、渡辺2冠は角交換で、その後の銀の繰り出しは受けのために絶対ですが、この段階で居飛車が飛車先の歩の交換。

△31金
 おおお~~、△23歩じゃなくて、金で受けるのか。。2筋を素通しにしておいたという事は、渡辺2冠は向かい飛車を狙っているという事ですね。なるほど。。

▲26飛
 いやいや、△44角のラインに入る所に引くのか?!う~ん、これは研究してないと、ちょっと怖くて指しにくいなあ。

△33銀▲58金右△22飛
 向かい飛車、来ました!!これが受けにくいんですよねえ。

 角交換四間飛車を受ける時にいつも思うのが、居飛車の駒組みが間に合わない事です。角交換四間飛車を指す人って、7割がた向かい飛車を狙って来る気がするのですが、居飛車の理想としては、戦場の受けは▲33桂と▲43銀、玉型は出来れば▲58金69金じゃなくって▲68金69金までは持って行きたいんですが、絶対に間に合わない。そうなると、2筋方面はある程度覚悟して、他の所からの反撃を狙う事なんかをよく考えるんですが、これが簡単じゃない。しかし、この将棋の森内さんの指し回しは素晴らしすぎました!

▲23歩△42飛
 な、なるほど~~、これは辛い!向かい飛車の足を止めてしまいました。これで振り飛車は早くも方針転換を迫られる羽目に。4筋から行くか、あるいは23の歩を外しに行かなくてはなりません。角交換四間飛車の速度さえ止めてしまえば、既に居飛車良しなのでは?

▲37桂△44歩▲56歩
 桂跳ねも間に合い、さてどうするかという所で…なんと5筋から行きました!!なるほど~、後手の左金が向かい飛車を指す為に3筋に寄ったのを咎めているんですね。角交換で5筋を突くのは怖いとも思ったんですが、もし5筋の位を取れてしまったら、もう居飛車よし…ですよね。森内さんというのは、とにかく戦いが始まる前の駆け引きがうますぎます。中盤の最強棋士なんじゃなかろうか。

20140617順位戦64_50手 そこから進んで50手目、捻じり合いが続く中、ここから森内さんがいきなり仕掛けるのですが、これが強烈!!もの凄い切り込みでした。

▲43馬△同銀
 馬を切ったああああ!!!でも…それでどうするんだ?

▲15金
 うおおお!!これは鳥肌モノだ。。しかし…これを思いつくだけで、たしかにとんでもない達人だと思うのですが…しかし、先手はそんなに玉形も良くないのに、一気に捌きに行って、本当に先手よしなのか??守りの金駒が一枚多いとはいえ、金の位置があんまりよくないぞ。もしこれで先手よしなら、形勢判断力がハンパでないわ。。

 しかしこの切り込みで勝負あったみたいで、以降は渡辺さんに何もさせずに斬り倒してしまいました。つ、強ええ…。。といわけで、なんと77手という短手数で森内さんの勝利です!!

 しかし森内さん、強い、強すぎます。最初から最後まで、振り飛車を完全に抑え込んでしまいました。角を切っての仕掛けからも、相手に何もさせない指し回し。いやあ、これは途轍もない強さだわ。
 これ、そのまま定跡になるんじゃないでしょうか。角交換四間飛車退治のための素晴らしい棋譜を見せて貰いました。ちょっと、森内ファンになってしまいました(^^)。


第64回NHK杯 小林裕士 vs 鈴木大介 (角交換四間飛車)

 先週まで追われまくってた仕事が終わり、今日はうって変わって優雅な1日。やらなきゃいけないことは色々あるんだけど、自分のペースでひとつずつ丁寧に片づけていけばいいので、気分的にすごく楽です(^^)。
 というわけで、昨日見逃したNHK杯の小林裕さんと鈴木大介さんの棋譜を観ました。やっぱり角交換四間飛車だったのか、解説つきで見たかった…。そして、将棋はなんとW杯の日本vsコートジボワール戦以上のド派手な大逆転劇で、メチャクチャ面白かった!!面白かったんですが(やっぱりNHK杯を見るべきだったT_T)…鈴木さん、重度のスランプですね、これは。将棋の面白さ以上に、鈴木さんの事が心配になってしまいました。

 序中盤は完全に振り飛車の鈴木さんペース。角交換四間飛車の肝である居飛車側の玉形を悪くして、自分は囲いに成功、本筋の向かい飛車も成功、更に飛車をぶつけての大駒の豪快な捌きも成功…非の打ちどころがないほどの圧倒的大差です。ところが、受け一辺倒になった居飛車に粘られた終盤に突入した途端…鈴木さん、今までとは打って変わって、もの凄い雑な指し手になってしまいました。なんというのかなあ…アマチュアのヘボヘボの僕ですら疑問を覚えてしまうような手の連発。人間だし、しかも早指しなので、プロといえどもミスはするんでしょうが、それが一手じゃなくって、連続で疑問手連発。寄せも何回逃すんだよというぐらいに間違えてます。いやあ、負けが混む事ってありますが、この指し手を見るに、たまたま負けが混んでいるんじゃなくって、何かがおかしくなっているとしか思えません。

20140616NHK_115手 色々あったんですが、その一例を。盤面図は115手目、後手の鈴木さんが△55歩と叩いて小林さんが▲同金と取らされた局面。ここ、プロがどうこうというレベルじゃなくて、アマチュアですら初段もあれば△46桂がひと目ですよね。まあ、それ以上にいい手があるのかもしれませんが。。また、△46桂と打たないのなら、なんで歩で叩いたのか、その意味も分かりません。しかし、鈴木さんの手は…

△24桂

 …う~~~ん、いろいろ考えてみたんですが、どうしても深い意味のある手には思えませんでした。もっとはっきり言えば、悪手…ですよね。更にこれは▲83歩△同玉▲47角という反撃をサポートしてしまったとすら思えます。で、こういう指し手がガンガン出てきてしまってました。

 僕は見る専でなくて自分でも指すので、プロ棋士の強さは、痛いほど承知しているつもりです。しかも鈴木さんは、タイトル戦にも何度も出場してきた、プロの中でも文句なしの古豪(タイトル戦に登場できないプロ棋士が9割)。将棋を覚えたての頃、大好きな棋士のひとりでもありました。一手ぐらいだったら、僕みたいなアマがプロよりもいい手を思いつくという事はあるのかもしれません。しかし、一局のうちに、さっきのようなシロウトですら気づくような手の見落としが4手も5手も出たり、またそれが非常にオーソドックスな手筋だったりしてしまうというのは、絶対に普通じゃない。絶対にどこかが悪い。自分では気づいていないけど脳が機能しなくなる障害とかもあるみたいですし、マジで一回検査を受けて欲しいです。

 僕は居飛車党なのですが、相居飛車の将棋に負けるのは悔しくありません。しかし、振り飛車に負けるのって悔しいんですよね。だから、プロ将棋の対抗型は見たい。見たいのですが、トップレベルになるとほとんどが居飛車なので、タイトル戦とかA級順位戦とかでは、ぜんぜん見れない。だから、プロの振り飛車党の人には頑張ってほしいのです。そんなわけで、久保さん、藤井さん、鈴木さん、菅井さんあたりにはぜひとも頑張ってほしい。まあそれで、彼らが居飛車を玉砕してしまうというのは困るんですが(^^;)。。

W杯かNHK杯か

 先週は仕事に追われまくってまして、体もきついし、アタマの中もトロトロです。こういう時に、日課の序盤勉強は横歩の最新形みたいなハードな研究はキツイので、角交換四間飛車対策をゆる~く進めていました。そしてようやくたどり着いた日曜日、ボオっとしている中でいきなりの難題が。ワールドカップの日本戦を見るべきか、NHK杯将棋を見るべきか。よりによって、時間帯が完全にかぶってるよ。今日はずっと応援している小林裕さんの対局だったので、心が揺れました。しかも相手が鈴木大さんなので、いちばん勉強したい対抗形になることはほぼ確実でしたしね。しかし…4年に一度のW杯を見逃すというのもどうかと思い、苦渋の思いでW杯を見る事に。

 前半、押され気味だった日本がなんと先制!!おおおお~~!で、日本リードのままハーフタイムに。その隙にNHK杯にチャンネルを切り替えると…こ、これは…まさに今勉強中の角交換振り飛車じゃないのか?!!やっぱりNHK杯を見るべきだったのかなあ、阿部さんの解説が素晴らしく分かり易いし。まあでも、日本勝利の瞬間を見逃すのはあまりに惜しいし、今日は仕方がないか。と思ったのですが…
 後半、コートジボワールがエースのドログバ選手を投入した途端、あっという間に2点を取って逆転。…いやあ、ひとり代わるだけでこんなに違うのか。。失点のパターンがまったく同じで、右からクロスをあげられてオシマイ。これは角のラインを活かした美濃崩しと同じだと思った人は、日本に50人ぐらいはいた筈です(ひとりは僕^^)。そして日本は負けてしまいました。残念。

 やっぱりNHK杯将棋を見るべきだったかなあ。で、最後にまたNHK杯にチャンネルを戻すと、終盤の凄い局面。ここでの小林裕さんの指し回しが凄かった!これはテレビを意識してわざと派手な指し回しを選んだな( ̄ー ̄)。鈴木さん、「この将棋を敗けるのは私ぐらいのものでしょう」なんてぼやいています。かわいそうに、スランプなんだな。メチャクチャ面白そうな将棋に見えたので、仕事が一段落したら棋譜だけでもチェックする事にしよう、そうしよう。

熟練について part2: 熟練には量が必要、というハナシ

 若い頃、江戸川乱歩にハマった事があります。あまりに面白すぎて、1日2~3冊のペースで、あっという間に全部読んでしまった。「ウィザードリィ」というテレビゲームにハマった事もあります。金曜の夜から日曜まで、起きている時間はそれだけをやり続けた時期がありました。なんという人生の無駄遣い。。しかし、将棋とか楽器とかスポーツって、そういう「お手軽」に目的を達成できるものとはちょっと違う気がします。将棋でも楽器でもスポーツでも、いざやるとなると「知っている」「分かった」というだけでは全然ダメなんですよね(>_<)。演算の為の思考様式を自分の中に確立したり、覚えたと思ったものも、同じことを練習や本番で何回も繰り返さないとなかなか身につきません。熟練が必要な気がします。場合によっては自分を作り替える必要すらある。

 アタマがいいというのには、幾つかの意味があると思うんですが、たいがいの場合のそれって、「色々とモノを知っている」か、「物事に対する帰納や演繹という情報処理能力がある」のどちらかを指すのだと思います。しかし、熟練って、そういう「アタマがいい」という事とはちょっと違って、記憶の事だと思うのです(身体的記憶なのか中枢神経系の記憶なのかは別として)。そして、熟練、つまり記憶に必要なのは量なんじゃないかと。フィギュアスケートやスキーのジャンプなんかを見ていて、思う事があります。技なんて僅かしかありません。競技時間もあっという間に終わります。で、あの人たちって、その同じことを、延々ず~~~っと繰り返し練習してるんでしょうね。

 将棋に限らず、練習や勉強に効率や質が求められるのは当然で、そういう意味では量やれば熟練するというものでもないと思うんですが、しかし量やってないのに熟練するという事はありえないんじゃないかと。こうなると、熟練の前提は質ですが、熟練の達成は量、つまり勉強時間とほとんどイコール。じゃ、勉強とか練習というものがどう継続されるかっていうと…気質もあると思うんですが、動機としては好きかどうかが大きい気がします。将棋の場合、僕は許されればずっと勉強していても対局していても、ぜんぜん苦になりません。むしろ、そうならないようにセーブしているぐらい。しかし、何にでもこれぐらい打ち込めるのかというと全くの逆で、むしろ続くものの方が少ない。若い頃はずっと野球をやっていたのですが、練習が嫌いで嫌いでたまりませんでした。要は、そこまで好きじゃなかったんですね、きっと。

 将棋なんて、ほとんどの人にとっては趣味の領域を超えるものじゃないと思います。でも、将棋って、勝たないと面白くありません。で、勝つためには熟練が必要で、熟練の為には質だけではなく量(ひいては時間)が必要、この「熟練には量が必要」という事を考えれば、将棋みたいに熟練を要求されるようなディープな趣味というのは、「練習したくてたまらない」「止められたって勉強しちゃう」と思えるまでは、深入りしない方が良いのかもしれません。将棋に限らず、音楽だって絵画だってスポーツだって、「これだ!」というものに出会ってしまったら、止められたってやるんでしょうから。

『羽生の頭脳5 横歩取り』の記事を更新しました

 実は今まで勉強していなかった(^^;)相横歩取り。いいタイミングだと思ったので、『羽生の頭脳』に戻って勉強していました。いやあ、これはスゴイ戦型だ。超急戦に行くともの凄い乱戦、一手でも緩んだら勝敗が簡単に入れ替わります。しかも、横歩△45角戦法のように、正確に指せば先手必勝という訳でもないみたいで、かなりの接戦になります(若干先手指せるぐらい?)。でも、今あんまり指されないという事は、プロ間では結論が出ているのかも知れませんね。所司さんの横歩道場とかに書いてあるのかなあ。でもあれ、読みにくいし、図書館にも無いんだよなあ。。

 というわけで、昔に書いた『羽生の頭脳5 横歩取り』の記事に若干加筆しました。
http://shougix.blog.fc2.com/blog-entry-168.html


 これはオモシロい戦型なので、身につくまでしばらく指し続けてみようと思います。またまた勝率を落としてしまう事になると思うんですが(^^;)。まあ、それはしょうがないか。

熟練について part 1: 学習自体が熟練する、というハナシ

 横歩取り△33角戦法の定跡書での勉強が一応終わりました。しかし、横歩というのは角換わりのように定跡一直線になる戦型と違って、玉型や飛車や銀の位置なんかの組み合わせでバリエーションが大量に発生してしまい、それぞれで違う将棋になっちゃうので、定跡書数冊程度の勉強じゃ全然足りないんですよね。まあ、それが力戦指向(=序盤定跡の勉強が追いついていない^^;)の僕には向いていると言えなくもないのですが…。本当はここで最近2~3年のタイトル戦で登場した横歩の指し手を調べるのが正しい勉強法だと思うのですが、どうも最近、△33角戦法以外の超急戦を指してくる人が多いです。きっと、飯島さんの『横歩取り超急戦のすべて』の影響なんだろうなあ。飯島さんの本も読んでみたいんですが、勉強のスピードが全然追いつかないしお金もないので(T_T)、一時的に『羽生の頭脳5 横歩取り』に戻って、相横歩の勉強をしています。…いやあ、これは面白い。やっぱり横歩が一番派手で面白いです(^^)。
 定跡の勉強って、実利を優先すると、どうしても流行形の勉強が優先してしまいます。でも、いつかは結論の出た戦型も潰していかないとダメだと思うのです。勝ちで結論が出ている戦型で負けるというのは、本将棋を指すにはあまりに準備不足なんじゃないかと。それで負けた時の自己嫌悪感もハンパないですしね。相横歩も、横歩に進んだら先手番で拒否することが出来ないので、プロの最新形の研究に走る前に、まずはこれを潰しておかなきゃ…という訳です。プロの居飛車党だったら、相横歩を指さないからといって、こういう基本的な定跡を知らないという事はさすがにないでしょうし。

 しかし、吉田さんの『これからの角換わり腰掛け銀』を読んで以降、すべての定跡書が簡単に思えるようになってきました(^^)。また、昔は1日10ページが限界だった定跡の記憶も、いまだと20ページぐらいは行けるようになってきました。色々な手筋や定跡の蓄積もあるのかもしれませんが、なんか記憶の方法とか勉強の段取りというものが効率化されてきたんじゃないかという気もします。ほら、子供の頃に初めて小説を読んだ時って、1冊読むのに1週間ぐらいかかったりするじゃないですか。でも、5冊、10冊と読んでいくと、最後には1~2日もあれば読めてしまうようになる、みたいな。楽器なんかもそうで、最初の1曲は演奏できるようになるまでに何か月もかかるのに、5曲、10曲と弾いていくにしたがって、1週間もあれば一応演奏できるようになる、みたいな。将棋の勉強というのも、あれと似たようなものなのかな、と。

 勉強というのは、学習というもの自体が熟練されていくものなんじゃないか、そんな気がしています。もしこの調子で、1日20ページのペースでイケるとすると…おお、3年ぐらいあれば、僕がしたいと思っている序盤定跡の勉強がひと通り終わるぞ!!よ~し、希望が出て来たぞ(^^)。『横歩取り超急戦のすべて』は、勉強手順としては後回しだな( ̄ー ̄)。




『長岡研究ノート 相居飛車編』 長岡裕也・著

NagaokaKenkyuuNote_Ibisha.jpg 羽生研究会のメンバーである長岡裕也さんが書いた、相居飛車の最新形についての研究本です。全6章の構成で、うち約8割が横歩取り、残りの2割が角換わり腰掛け銀について書かれています。

(角換わり腰掛け銀)
 まず、第6章に書かれている角換わり腰掛け銀。この本は最前線の戦型に的を絞って書かれているので、角換わりの知識の無い人がいきなりこの本を読むのはちょっと無理筋な気がします。まずは『よくわかる角換わり』や『羽生の頭脳4 角換わり・ヒネリ飛車』あたりで基礎知識を身につけてからという方が良い気がします。その上で…
 プロ将棋で角換わりを見ると、その殆どが腰掛け銀です。しかも、△73歩を保留したまま指したり、はやい段階で飛車を右四間に振ったりして、みんな知っている有名な同形腰掛け銀の木村定跡なんかにはなりません。で、プロがそう指すものだから、ネット将棋でもみんなそう指してきてパニック状態(ボクもそう指してました( ̄ー ̄))。で、この本が出た頃、そういう最前線の指し方が書いてある本が無かったんじゃないかと。これが40ページ弱の分量で、ものすごく分かり易くまとめてあります!ただし、その後に出た吉田正和さんの『これからの角換わり腰掛け銀』とは内容がほとんどかぶっていて、しかも『これからの~』の方が10倍は詳しいですので、この戦型を本気で極めようと思うのであれば、吉田本をおススメします。ただし…この腰掛け銀の定跡というのは歩や金の位置が僅かに違うだけで全然違う将棋になっちゃうという驚異の難易度で、最初に勉強した時は一度挫折しました(T_T)。というわけで、吉田本に挫折した人や、あるいは横歩の為にこの本を買ったんだけど角換わりの勉強はまだしてない、みたいな人に、この本の6章は価値があるんじゃないかと。僕は、吉田本に一度挫折して、この本で本筋を覚えてから再トライする事で、ようやく何とかなりました(^^)。

(横歩取り)
 さて、この本を買う人は、これが目当てで買うんじゃないかと思います(^^)。いま横歩取りというと、、プロだと9割以上が△33角型という形が指されていると思います。アマだと△45角戦法なんていう戦型に出くわす事もあるんですが、これは『羽生の頭脳5 横歩取り』で勉強しておけば先手必勝です(^^)。で、本書は△33角型以外の戦型の説明はガッツリとカットして、この戦型の研究に集中しています。
 第1章は、この△33角型に進むまでの序盤研究。これが秀逸!ここは本のタイトルにある「相居飛車編」に繋がっていて、横歩に進む事を絶対視していません。相手の指し手によってどの戦型に進むのが有効か、なんて感じで実に細かく書いてあります。いや~、これは素晴らしかったです。しかしこの章を読むと、先手番で横歩を指すなら、いつかは相掛かりの勉強をしなくてはいけないという事を痛感させられます。そうですか、やっぱりサボれないのか…(T_T)。
 第2章は青野流。青野流というのは△33角型では先手番に戦型の選択権のある戦型なので、もしこれで先手が良くなるのであれば、先手番△33角型で他の戦型の勉強をしなくても良いという事になります。現時点ではどちらかというと本流ではない指し方だと思うのですが、先手番での横歩の勉強量をガッツリと減らしたいのであれば、この章は必読です!青野流は『よくわかる横歩取り』にも少しだけ書いてありますが、もう深さが全然違う感じです。
 本書の横歩の本領は4~5章で、△33角戦法で青野流以外の指し方をすると、次の戦型選択権は後手に移るんですが、後手の玉形を52玉の松尾流の中原囲いを本筋と見て、そこから△85飛戦法(4章)△84飛戦法(5章)という形にまとめています。う~ん、これは分かり易い。。特に、今の最前線である△33角84飛戦法に関しては、現時点でこれに変わる定跡書が見当たらない上に、ネット将棋なんかでもこの戦型に進む事が異常に多いので、横歩を指そうと思ったら本書は必読という事になると思います。
 で、先手は普通は後手が飛車を84なり85に引いた後で▲87歩と打って守るんですが、これを保留した場合にどうなるのかという変化が▲87歩保留型(3章)にまとめてあります。この章を読むと、やっぱり僕は▲87歩と打ちたいな…と思わされちゃいましたが、しかし後手番で横歩を指すならこの章も必読です。そうそう、後手の玉型が41の中原囲いなんかに関しては、本書では全然説明していませんので、『よくわかる横歩取り』とかの手助けが必要かも。

◆◆◆◆◆

 さて、先ほど書いたように、横歩を指すなら△33角戦法の勉強をする前にやっておかないといけない勉強があるんじゃないかと思います。たとえば△45角戦法なんかは、知らなければ瞬殺されると思います。というわけで、先に『よくわかる横歩取り』みたいな初心者本と『羽生の頭脳』での△45角戦法あたりは先に読んでおく必要があると思います。
 次に、この本は問題もある気がしました(いや、基本的にはメチャクチャいい本ですよ!あくまで、悪い点を挙げるとすれば、というハナシです)。この本って…「研究ノート」なんですよ。マジで最前線の戦型について書いてある感じなので、もうプロ間で結論が出た順について書いてあるわけじゃなくって、プロ間で結論の出ていないものも書いてあるんじゃないかと。それの何が問題なのかというと、ココセ的な指し手はまだしも(プロでも調べ切れていない最新形なのでこれは仕方ないと思います)、形勢判断自体があやしい所が結構あると感じてしまいました。もう単純に「後手よし」と結論している形でも、プロのタイトル戦なんかで似たような形が出てきて、その解説を読んだり、そこから自分で研究してみたりすると、結論が全く逆…なんて事がありました。しかも、大量にあります。それも、先手指せるか後手指せるかとかいう微差のレベルじゃなくって、「後手優勢」と言い切っているのに、実際には先手よしとしか思えない…なんていう所も幾つもありました。特に符号だけ書いてある変化の筋は、どうも長岡さんも深く考えているわけではなさそうなので( ̄ー ̄)、気をつけた方がいいです。というわけで、この本の形勢判断を鵜呑みにせず、読みながら、いかにもありそうだけど書かれていない変化とか、数手でもいいから結論された後の次の指し手を考えるとかいう読み方をした方がいいと思いました。

 とはいえ、横歩の△33角型を指すなら、これより詳しく書いてある本というのはなさそうなので、初心者本を過ぎら必読の本だと思います。横歩というのは、角換わり腰掛け銀や矢倉なんかと比べると、力戦に近い形と思うので、この本を読んで、横歩の部分的な手筋を自分の中にストックしていくだけでも、かなりの成果があるんじゃないかとも思いました。△85飛に対する▲75歩なんていう部分的な定跡は、知らなかったら絶対に指せないんじゃないかなあ。。



マジでどこなんだ

 昨日の棋聖戦は痺れるようなもの凄い将棋でした。ホンモノの神技を見た思い。昨日から何度も棋譜を見返しているんですが、いまだに鳥肌が立ちます。ネットでは87手目▲86金が敗着みたいな声が多いですが、じゃ代えて▲76金なら本当に後手が良かったかというと、それでも先手よしだったんじゃないかと。じゃ、逆転はどこで起こっていたのかというのを遡って考えるんですが…マジでわからない。もう自分の棋力では分析不可能と思い、超久しぶりにボナンザを引っ張り出して調べてみたりもしたんですが、ボナンザですら羽生マジックに引っかかっちゃって使い物になりません(^^;)。。マジでコンピュータより羽生さんの方が強いんじゃなかろうか。

 棋聖戦というのは、僕にとっては感慨深い棋戦です。去年の羽生vs渡辺戦も、鳥肌モノの名勝負の連発でした。そういえば、去年の棋聖戦も横歩取りが多かったな。初段になるまでは横歩の勉強が追いつかず、去年の棋聖戦での羽生さんの将棋を見よう見真似で指していたのはいい思い出です。

第85期 棋聖戦 第1局 羽生善治 vs 森内俊之 (横歩取り▲48銀型)

 この前の名人戦の熱気がまだ残ってます(`・ω・´)。そんな中、はやくも棋聖戦が開幕です!!対局は…なんとまたしても羽生vs森内。ほんの1年半ほど前は渡辺さんが最強で、羽生さんも森内さんも遂に渡辺さんに抜かれて世代交代してしまうんだろうな…と少し悲しい思いで見ていたんですが、なんと40を超えたこのふたり、そこから巻き返して返り討ち、またまたツートップにになっちゃったんだからすごい。羽生さんに名人を奪取された森内さん、棋聖戦でリベンジなるか?!

 先手は森内さん。さて、戦型は…横歩取りだあああ!!!この前の名人戦は相掛かりのオンパレードだったので、このふたりの角換わりや横歩取りも見たかったのです(^^)。序盤は訥々と進みます。普通に横歩を取ったな、これで相掛かりへの変化は消えた…△33角と守ったな、これで相横歩も消えて王道まっしぐらかな…先手は飛車を引いて青野流も消えた…後手は△84飛、今の王道か…おおお!先手は玉を動かす前に▲48銀!▲48銀型だあああ!!!いやあ、この形は『長岡研究ノート』で勉強したんですが、後手の指し手が難しくって、もっとたくさんプロの実践例を見たいと思っていたのでした。それが頂上対決で見れるとは(^^)。

2014060223手 23手目盤面図から、後手の構想で僕が知っているのは、まず△52玉型中原囲いに囲ってから①右桂の活用を図る手、②先手が▲36歩や▲46歩などで飛車の横利きが止まった瞬間に△86歩、③9筋端攻め、④いちばんよく見る△14歩~△23銀~△24飛の飛車をぶつけて飛車交換からの1筋端攻め。

 一方の先手の構想ですごく興味があるのが、囲いはやっぱり▲68玉型で、攻め筋では▲36歩ではなく▲46歩。これを指されると嫌らしいんですよ…。そして本譜は…

△62銀▲46歩
 森内さん、▲46歩を指したあああ!!しかし、玉の位置を決める前に歩を突きあげちゃうのか。ちょっと危険な気もするけど、玉型の変化を含みにしておいた方が得という事かな。なるほど~。

△72金
 え?羽生さん、なんと中住まい?!打ち込みを極度に恐れる僕は中原囲いよりも中住まいの方が好きなんですが、しかしこの戦型での後手の中住まいは見たことが無いぞ…と思ったら、前例はないそうで。

▲28飛
 …いやあ、はやくも分からない手が出ました。ここで飛車の横利きを外してしまうのか。これが攻めの手である筈がないので、何か後手の攻め筋を予め避けておいたという事なんだろうなあ。

△74歩▲47銀
 ▲47銀、キターーー!!しかし森内さん、ここまで来てまだ居玉だよ。。まさかこのまま戦う気じゃないだろうな…
 しかし、この▲46歩47銀という構えが曲者で、これを後手番で破る方法がどうもよく分からないのです。さっきの話でいえば僕は④を主要戦術に使ってるんですが、後手の攻めが細くて攻めきれない事が多いんですよ(俺がヘタなだけか)。しかし今回の羽生さんは中住まい。なにかそこに秘密があるのかも知れません。

△75歩▲同歩△73銀
 羽生さん、早くも仕掛けました!!しかし、なんだこの何の狙いもなさそうな銀の進出は。こんな攻め筋は見たことないぞ、一体何を考えてるんだ??う~ん…
 …おお、そういう事か!!つまり、▲46歩47銀で嫌な攻めのひとつが▲45歩~44歩の突き捨てで、これを△44同歩と取り返すと玉のコビンが空いて、後手玉が右辺に逃げ込もうとしても斜めのラインがかなり厳しい事になっちゃう。だから中住まいに組んでおいてから右銀を繰り出すようにすると、その筋を消す事ができる、という事なんじゃなかろうか。…きっと違うな(^^;)。。

2014060237手▲33角成△同桂▲88銀△76歩▲68玉(37手目)

 おお、森内さん、角交換をしてからようやく▲68玉を決めました。羽生さんの△76歩は、森内さんの居玉を咎めて玉型を決めさせたんでしょうね。

 この局面、シロウトの僕にすら、先後ともにいろんな狙い筋が見えます。これは面白い盤面図だ。しかし後手は△23銀をあがり切れずに来てしまったので、32の金に連絡がついてなくって、そこが思いっきり傷。なので後手は▲21角あたりの手を消してからでないと攻めにくいかも。更に後手、73の銀を本当に使い切れるんだろうか…。しかし羽生さんの銀使いの巧さは異常だからなあ。こうやって見ると、後手は玉も薄すぎるな。いや、実はすでに先手よしなんじゃないか?ここから後手がどうまとめていくのかを見たいんですが、これから仕事です(T_T)。はやく終わらせてダッシュで帰ってくるぞ!!

◆◆◆◆◆◆
 帰ってきました!!さて、どうなったんだろうか…えええ!!あの状況から羽生さんがひっくり返したのか?!…う~ん、あの37手目の状況が後手指せる状況だったなんてことはあるんだろうか。やっぱり逆転だよな。でも…どこで?

 あそこから羽生さんは△25歩で先手の飛車道を遮る方法で先手からの▲21角を回避、そのままひねり飛車にして右辺を決着させないまま放置。
 一方の森内さんは、4筋ではなく5筋の歩を伸ばし、飛車を5筋に振ってど真ん中から後手陣を食い破ります。また、金銀が左右にばらけた後手の玉型に目をつけ、後手の飛車を詰めに行きます。しかしどうもこの構想で羽生さんに騙されたみたい。飛車は確保し、更に駒得した筈が金をソッポに打たされて実質的な駒の働きではあまり駒得を活かす事の出来ない展開。そして勝負は、難解きわまる先手左辺での戦いと、後手玉に対する寄せの速度という非常に高度な終盤戦に突入。ここからがもの凄い将棋。

20140602棋聖85-1_77手 盤面図は77手目、後手飛車の捕獲のために打たされた金というのが35にいて、更に▲55銀とあがったところでこれで後手の飛車が死んでいます。後手は飛車を取られたらご覧の通りのスカスカの玉型、はっきり言えば素っ裸。後手がここから勝つなんて不可能なんじゃないかというぐらいの絶望的な状況に見えるんですが、まさかここから神がかりの終盤術が炸裂するとは。。まず、羽生さんが放った手は…

△65桂
 …いやあ、もしこの桂を跳ね出すなら一発△57歩と叩いてから跳ねれば両取りを掛けられるんですが、なんと単に△65桂なのか。なるほど、先手の守り駒を剥がすよりも、57に利きを作っておく方が先手玉は逃げにくいという発想なのか。これは勉強になるわ。

▲54歩△62玉▲64銀△同歩
 しかし森内さんは▲54歩と先に王手をかけ、拠点を作ってから飛車を切り取ります。後手玉はまだ右辺が広いのですぐに詰めろはかからなそうですが、次に41や81に飛車を打ち込まれたらほぼ決まりの気がする。

▲53歩成△73玉▲81飛(85手目)
 あああ、▲81飛を打ち込まれちゃったよ。しかし…先手は持ち駒ナシの上、5筋の飛車もすぐには走れない。これは先手からは…3手空き?これは後手にもチャンスありかも知れません!が…後手はいったいどうやって攻めるんだ?ひと目△57歩だけど、それで飛車を取っているようでは速度的に間に合いそうにないぞ…

20140602棋聖85-1_85手△88角

これはまたムズカシイ手を…。先手は駒切れなので、ある駒を使って寄せていかなければいけませんが、ありそうなのは歩の手筋と77の金を使ったコンビネーション。先手は単純にこの金を狙いながら、避けたらなんか手を狙っているんでしょうが…分からん、ムズカしすぎる(T_T)。逆にいえば、不利なので曲線的な手を指したとか?でもここ、先手が受けずに攻めるとしたら?…▲75歩が一応詰めろか。手抜けないからけっこう厳しそうだなあ。あと、解説では「▲76金」なんて言う筋も指摘されてますが、これは先手からの攻めを督促する事になってしまうように見えるんですが…

▲86金
 いやあ、これで▲75歩からの2手空きでしょ。後手、ここから攻めを繋げられるのか?

△57銀▲78玉△58銀不成
 う~ん、さすがプロ。こういう時って、いつも焦って手数計算がムチャクチャになっちゃうんですが、△58銀不成で手番を渡すところがスゴイ。しかしこれ…逆転してないか?もしここで手抜いて▲75歩と詰めろをかけたら、△69角で詰みだぞ。逆転してるとして…しかし、どこで?この5~6手ぐらいの間のどこでマジックが起きたんだ?信じられない、全然わからん。。

▲同銀△77歩▲68玉△82歩
 うわ、ここで手を戻すのか。プロの神技に完全に魅了されています。

▲59玉
 ここで早逃げか!いや、これは先手玉はつかまらないんじゃ…

△79角成▲48玉△46馬(98手目盤面図)

 うあああああ!!!これは△57角からの詰めろになってるわ。いやあ、一手差なんですが、その一手が重すぎる。いやあ、プロの終盤力、凄まじ過ぎるわ。。

20140602棋聖85-1_98手 以下、後手の寄せがこれまたもの凄いので、全部書いておきます。ここから後手を持って寄せ切れたら初段以上は確実にあると思います。▲75歩を許したら詰めろなので気をつけてくださいね。。

▲37銀△57桂成▲同銀△47飛▲38玉△49飛成▲同玉△57馬

まで、106手にて後手羽生さんの勝ち!しかし、投了図からも13手詰めぐらいの気が(^^;)。。

 この将棋はメチャクチャ面白かった!!しかし、中盤にしても終盤にしても、どこで逆転が起きたのか、まったく分かりません。序盤も▲48銀型に対する後手の構想がもの凄かった!!デンジャラスすぎて真似する気にはなれませんが(^^;)。でも、ものすごく勉強になったので、今週末にでももういちどこの棋譜を調べてみよう、そうしよう。

第64回NHK杯 飯塚祐紀 vs 塚田泰明 (角換わり相腰掛け銀同形)

 昨日は久しぶりの友人たち大勢で、バルタン星人が店長のをしている「怪獣酒場」という所に行ってきました。いやあ、楽しかった。というわけで、やや二日酔い気味なので、NHK杯はぼんやり見るだけにしようと思ったら…とても興味深い内容で、結局最後まで見てしまいました(^^)。なにが興味深かったかというと、塚田さんが後手番で、0手損角換わりの同形腰掛け銀同形に持って行ったところでした。この戦型は先手必勝のハズなんですが、最近この戦型に踏み込むプロの対局をチラホラと見かけるのです。

20140601_09手 最初に勉強になったのが、後手の塚田さんの序盤の駒組み手順。盤面図9手目はいかにも角換わりの形ですが、僕はここから△77角成▲同銀△38銀…という手順しか知りませんでした。しかし、ここで塚田さんは…

△42銀
 なんと、こういう手順があるのか!!でも、ここで先手から▲22角と角交換されると△22金と取るしかなくって、これは後手悪形じゃないのか?わざわざこういう順で指す理由がよくわからなかったんですが…

▲22角成△同金▲77銀(13手目)

 最初の角成が手損なので、ここで先手が一手損。つまり先後が入れ替わった計算。で、14手目に後手が△32金と直せば、それでまた後手が手を一手使う事になるので、また先後が入れ替わって通常の角交換に合流という事ですね、なるほど。しかし塚田さんはここですぐに合流させずに…

△62銀(14手目)▲38銀△64歩▲46歩△63銀▲47銀△44歩▲68玉△52金▲58金△32金▲36歩(25手目)

 25手目でようやく通常の相腰掛け銀の定跡形に合流。後手は25手を過ぎても玉を右にも左にも行かないので、右玉を含みにしながら駒組みを進められる…という狙いなのかな?あんまり深い意味はないのかもしれませんが、これはちょっと勉強になりました。

20140601NHK_35手 次に面白かったのが、36手目からの将棋です。ここから将棋は相腰掛け銀同形という先手必勝形に進むのですが、面白いのは9筋の歩の突き合いが入っていない事。これ、後手は9筋を詰めておかないと、同形腰掛け銀の超重要な攻め筋の端攻めが使えなくなるので、当然△94歩▲96歩の交換を入れて来るかと思ったのですが…

△73桂
 …いやあ、これは塚田さん、何かを狙ってるな。。相腰掛け銀では、先手後手とも右桂の跳ね出しは、桂頭を的にされる事にもなるので諸刃の剣だと思うのですが。しかも桂を跳ねた時点で、同形腰掛け銀が決定しちゃうのでは??

▲25歩△33銀
 うああ、9筋の歩を突き合っていない以外は、先手必勝の同形腰掛け銀になっちゃったよ。。ただでさえ先手よしなのに、9筋の関係では更に先手が得をしているように見えるので、これはワンサイドゲームになるんじゃないか??次に先手から4-2-1-7-3の順で歩を突き捨てられたらゲームセットだぞ…

5歩△同歩▲4歩△同歩▲5歩

 …飯塚さん、何かを感じたのかもしれません。先手必勝と言われる順での突き捨て順をわざわざ回避しました。これで将棋は全く違う展開となりました。この順を塚田さんは「よく覚えていなかった」みたいに話していたので、やっぱり今の最善手に対してなにか狙いがあったんじゃないかと。もし「42173」とか「43172」みたいな定跡手順で指したら、後手の塚田さんが何を狙っていたのかを見てみたかった。。

 しかし、その後の森下さんの素晴らしい解説からすると、今の有名な先手必勝の定跡手順が発見される前は、この順なんかもずいぶん追及されたみたいです。たぶん、谷川さんや塚田さん全盛期が同形腰掛け銀追及の時代だったんでしょうね。僕が勉強した角換わりの教科書にはどれもこの順は書かれていなかったので、すごく勉強になりました。

 将棋は97手にて先手飯塚さんの勝ち!プロ間ではしばらく指されなくなったという角換わり相腰掛け銀同形ですが、最近は後手からこの戦型に誘い込むプロ将棋をチラホラ見かけます。で、その多くで先手が定跡手順を回避するので、後手の狙いがずっと見られず仕舞い。後手が何を狙っていたのか知りてえええ~~~!!

プロフィール

ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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