第67回NHK杯 宮田敦史 vs 久保利明 (後手中飛車)

 NHK杯はまだ1回戦なので、そんなに気合いを入れてみる気になってないんですが、なんとなく見始めてもプロの将棋はどれもこれも興味深いので、けっきょくずっと見ちゃいます(^^;)。今日は久保さんが後手の5筋の位をとれていない中飛車。居飛車を持って流れでこの形になっちゃうことがあるんですが、そうなると僕はいつもうろ覚えのアドリブになっちゃって、『羽生の頭脳 振り飛車破り』に出ていた中の居飛車穴熊をとにかく狙いにいく、みたいな感じなのです(^^;)。というわけで、興味津々で見ていました。

20170528NHK_宮田vs久保20手 20手目盤面図は、5筋の歩を突きあった状態から先手から角交換し、先手は46銀を決めて後手は美濃を完成させたところ。僕は穴熊とか矢倉とか美濃とかは好きなんですが、それ以外の囲いはどうにもうまく指せないので、こういう角交換になった時の対振り飛車が得意じゃないのです(^^;)。20手目盤面図からは、僕なら穴熊への含みを残しつつ、それを許してくれないようなら矢倉を目指すと思うんですが、それが多分よい方針でない事は、角交換系の対抗形の定跡を見ているとなんとなく分かります。

▲68銀
あら、これでいきなり穴熊も左美濃も銀冠も消えてしまいました(^^;)

△94歩▲96歩△51飛▲88玉△84歩▲78金△83銀▲66歩△72金▲67銀
うわあ、銀を77じゃなくって67にあがっちゃったよ、これで矢倉も消えてしまいました。これは左桂の跳ね出しを狙っているんでしょうが、これが玉形が悪い気がしてどうしても指せないんです(T_T)。。

20170528NHK_宮田vs久保35手△74歩▲77桂△73桂▲58金(35手目盤面図)

というわけで、完成したのが35手目の囲い。いや~、対抗形の定跡書を見てるとこういう囲いが出てくる事がありますが、なんかこれだと振り飛車の銀冠美濃の方がいい気がしちゃうんですよね。。角渡してるので、79角とか57への打ち込みあたりが急所になりそうな気がして、やっぱり怖いなあ。

 将棋はここから久保さんが△92香~△91飛で端攻めを見せ、これを受けるために先手は金冠を作らされてさらにあんまりよくない囲いにさせられました。しかしここから互いに攻め筋を潰して囲いを優先したために仕掛けられない手待ち合戦。最終的には久保さんが2筋を薄くしたところで先手が仕掛け、いきなり終盤戦に。


20170528NHK_宮田vs久保74手 いきなりの殴り合いになった74手目盤面図。まず驚いたのは後手久保さんの飛車の成り場所で、29になれば持ち駒なしの状態から桂も手に入るうえにいかにもモロそうな先手の1段目を押さえられます。しかし…いや~なるほど、次の△57桂成がいきなり厳しいのか。これはもう寄る寄らないの局面じゃないですか!しかし、さらに驚いたのは宮田さんの次の手で…

▲41龍
 えええええ~受けないのか(゚ロ゚ノ)ノ?!!驚くのは、受けないでこの手を指せるというのは、先手が寄らないと見切っているという事ですよね?だって、この手は詰めろになってないですし…いや~プロの終盤力って恐るべしです。。

△57桂成▲同銀△同角成
 とうぜん後手は攻め込みますが…

▲91角△93玉
 王手が入るので先に玉を追い込んで受けを限定させてから…というか、なるほど具体的に▲85桂を発生させてるのか、これは具体的な狙いがありますね…

▲58金打△68馬▲同玉△29龍(84手目盤面図)
 それから受けました。いや~たしかにこうなるとここでの後手の手が難しいです。△同馬なら一応詰めろだけど▲同銀で何でもないのか。かといって後手陣への迫り方も簡単じゃないと思うんですが、▲41龍からの先手の踏み込みは見事でした!

20170528NHK_宮田vs久保84手 そしてここからの先手宮田さんの後手玉への襲い掛かり方も攻防手を含めた見事さでした。いや~一手30秒でよくぞここまで読めるもんだと驚き。。

▲73角成
 うおおお、いきなり切ったああ!!!いや~、これはたしかに▲85桂打からの詰めろですが、普通に取られたあとはどうなるんだろうか…感想戦でこのあたりをやってましたが、よく聞いてなかったもので聴き逃しちゃいました(^^;)。でも、角を渡すと後手からは△71角の退路封鎖があるので、ある程度は見切れていないと怖い踏み込みだと思うんですが…

△同金▲85桂打△同歩
 おお、馬をとられてもやっぱり▲85桂打!あああなるほど、解説の渡辺竜王が解説してくれたように、最後に▲85桂と跳ねれば王手だけでなく先手玉の逃げ場が出来るのか、これは攻防手じゃないですか。。

 ここから先手は詰めろ詰めろで迫って、113手にて先手宮田さんの勝ち!タイトルホルダー&現役A級の久保さんを1回戦で葬る金星です!!宮田さんといえば順位戦はC1で、決して強豪とは言えないと思うんですが、しかしそのランクでもプロというのは恐ろしく強いですね。斬り合いになってからの自陣の危険度と比較しつつの鋭い踏み込みと、寄せに行ってからの切れ味はさすがにプロだと思いました。一手30秒の早指しでこんなに見事な将棋を指しちゃうんだから、やっぱりプロはすごい…。

 でも、実際に宮田さんが久保さんに実力で勝ったかというと、ちょっと違うのかも。何期か前の羽生さんがNHK杯で負けた対局もそうでしたが、あの時も羽生さんが千日手を打開して敗戦しました。あれって、テレビ的に千日手指し直しが好ましくないので、そうなったら位が上の棋士が打開してあげているという事なんだと思っています。今日の久保さんは後手だったわけですし、これがもし順位戦とかタイトル戦トーナメントとかなら、成算が持てなかったら絶対に打開にいかないでしょうからね。そういうところで大人な所も、強豪棋士の風格なんでしょう。というわけで、視聴者のために△91飛の狙いとか先手に攻めさせつつ角の打ち込みで面白い局面図を作り出したに行っただろう久保さんもかっこよかったです。。


 

第43期女流名人戦 第5局 上田初美 vs 里見香奈 (後手中飛車vs先手一直線穴熊)

 この将棋、メッチャメチャ面白かった!!全盛期の羽生さんを思わせるほど、女流将棋で無類の強さを発揮している里見さんと、その里見さんをカド番まで追い込んだ上田さん。フルセットまでもつれた第5局は、お互いの心の機微が指し手にあらわれるような壮絶な心理戦のようでした!

20170222女流名人43-5_上田vs里見_後手中飛車30手 最初の山は中盤。僕にとって中盤のイメージって、お互いに辛い状態でガマンした方が勝ち、という感じ。無いようにみえる所から手や順を探す、それでもない時は代償を求める、みたいにして、簡単に崩れずに相手との辛抱合戦をしのぐイメージです。中盤は手が広くて将棋でムズカシイ所のひとつだと思うんですが、逆に言うと手が広いので、なさそうでもあったりするんですよね(^^)。そして、今日の中盤はまさにそんな感じの辛抱合戦。30手目盤面図は、里見さんが5筋から仕掛けたところ。ここ、先手はそれこそ手が広いですよね(^^)。問題は正着が何かという事なんですが、ここで上田さんは…

▲68角
 居飛車党の人なら、異筋が見えない限りはほとんどこう指すんじゃないかと思うんですが、こうすると△57歩成からの仕掛けは成立しないですよね。アマチュア低段ぐらいの僕の場合、一直線穴熊で居飛車が良くなるのは大体このあたりで後手が手詰まりになって、居飛車の遅れていた攻めが追いつくからだと思うんですが、里見さんはどうするんだろう…

△54飛
 先に辛抱したのは里見さん。▲46歩からの銀ばさみの受けに浮き飛車を4筋に回そうという事でしょうね。しかしこれはいい手だなあ、先手は▲46歩と突きにくくなったぞ。しかしよくこういう手を思いつくなあ。

▲96歩△52金左
 上田さんの▲96歩は渋いながらも入るなら入れておきたい手だし、このあたりで入れないと入る時がなくなってしまいそうなので絶妙のタイミングだったのかも。それはここで美濃の完成に着手した後手も同じ…といいたい所ですが、僕的には対中飛車で41から動かない金というのもそれなりに厄介なので、ここに手を使ったというのは、後手は手詰まり気味なのかな?もしそうなら、駒組みの進展性がある先手がいいんじゃないかと思ったんですが…

▲46歩△同銀▲56金△55銀
 上田さん、ここでいったああああ!いやあしかしこれを警戒して後手は飛車を浮いたのに、入るんでしょうか?アホな僕は分かりませんが(^^;)、僕なら後手手詰まり気味とみて▲16歩とかで駒組みを更に万全にしつつ後手に手番を渡して攻めさせて受け潰したい所ですが…相手が里見さんだと先着で仕掛けられる恐怖感とか、受け潰すどころか自分が攻め潰されそうだなとか、心理的なプレッシャーが半端じゃないんでしょうね(^^;)。ここ、相手が里見さんでさえなければ、上田さんは違う手を指していたかもしれません。

▲65金△84飛▲86歩△同歩
 上田さん、飛車をいじめているようにも見えますが、実際のところは辛抱という感じですね。いかにも切れそうな攻めを督促されている時のようなイヤナ感覚…でもこうなった以上は仕方ないと開き直った感じかな?しかし先手のこの飛車先の歩の突き捨て、絶妙のタイミングに見えます(^^)。

▲22歩
 これは凝った将棋を作りにいきました(^^)。でも歩の突き捨てが入ったんだから、普通に▲55金△同角で角の利きを外して▲24飛で飛車を捌いて駒損ながらも飛車が捌ければ先手も決して悪くないと思うんですが、ここで△64銀と出られたら難しくないかい?これは凝りすぎのような気も…

△64銀
 ですよねえ…。ここも先手は手が広いですが、どの順がいいかの判断が難しそう…

▲64同金
 いやあ、これはさすがに先手辛抱しきれなくなった手なんじゃないでしょうか。歩があれば▲67歩で先手よしなんでしょうが、歩切れってやっぱり辛いっす。。飛車を捌かずに▲22歩を選択した以上は▲21歩成の駒得で主張して欲しかったですが、それだとまずい順があるのかな…。でもそれがまずいのであれば、ここじゃなくて▲22歩がまずかったという事なので、やっぱり悪くても▲21歩成で勝負してみて欲しかったなあ。これで指し手の一貫性がなくなってしまった感じがして、「中盤はお互いに辛い状態でガマンした方が勝ち」状態は、上田さんが先に我慢しきれなくなったように見えてしまいました。

 ところが、ここでプッツリ切れてしまわず、立て直しに行った上田さんの精神力が見事!上田さんが里見さんというプレッシャーから先に動いてしまったのに対して、里見さんは有利と見たところで安全策を取りに行ってしまって食らいつかれてしまいました。羽生さんとか久保さんとか渡辺さんとか康光さんとかだと、有利と見ても安全に行かずに一手差でも勝ちきる順に踏み込みに行くと思うんですが、それこそ傍目八目というもんで、タイトル戦の最終局という大舞台になると、心理的なものがお互いに働くんでしょうね。宮田さんや藤井さんが先手良しと解説する局面すらあったほどの大熱戦の終盤!!しかし、その瞬間に今度は良くなったはずの上田さんが安全に行こうと銀を惜しんで逃げてしまい、これが痛恨の一手で勝負あり。…と思ったら、粘る上田さん必死の攻防の受けに数の攻めで被せすぎた里見さんが攻撃速度を落としてしまい、その一瞬を突いて今度は上田さんが美濃崩しの王道の香打ち…と、目まぐるしい終盤の攻防の末、202手という大熱戦で後手里見さんの勝ち、女流名人防衛です!

 いや~、今日の将棋は面白かった!良くなったと思った次の手とか、凌いだと思った次の手が一番怖いなんていいますが、今日はお互いにそんな感じ。人間って、追い込まれた時はギリギリまで考えて最善を見つけに行けるんだけど、自分がいい時は楽しようとしてしまうという事なのかも。将棋って、心を動かさずにどこまでも冷静に指さないといけないんでしょうね。この間、身内の集まりの将棋大会で、準決勝で焦ってやらかして勝ち将棋を負けにしてしまったボクとしては、学びの多い、しかし観ていてメッチャクチャに面白い将棋でした!(^^)。



第66回NHK杯 橋本崇載 vs 深浦康市 (先手中飛車)

 NHK杯の橋本さんは、いつもいい所まで勝ち進むんですが、いつもこのあたりで負けるイメージがあります。今期はどうでしょうか…うああああああ、深浦さん、最後の最後でやってしまいました(^^;)。プロ将棋って、終盤で敢えて怖い方に逃げたり、難しい方の寄せを選ぶ時がありますが、あれってなんでなんでしょうね。勝ちが決まっているので少しでも練習しておこうという事なのかなあ。でも、プロでもこういう事があるから、真似しないようにしよう…。
 それにしても、序盤から互いに馬を作りあってのメッチャクチャ面白い将棋でした!これ、流行されるといやだな…。王将戦も始まりましたし、いよいよ2017年が始まった実感がわいてきました!!



第6期女流王座戦 第1局 加藤桃子 vs 里見香奈 (ゴキゲン中飛車)

 里見さん、強えええええ!!!最近、女流同士の戦いで里見さんが負けたの見た事ないんですけど(^^;)。棋譜解説を読むと24手までの所要時間9分、里見さんに限っては48手目までで消費時間が9分だったそうです。この速さ、僕が道場でおじいちゃんと指してる将棋みたいです。結果、里見さんの勝ち!!
 いや~、この消費時間からすると、50手目あたりまでは完全に研究通りに進んだんでしょうね。ただでさえ中終盤がぶっちぎりの強さなのに、序盤でも研究勝ちしてしまうようになってくると、女流で無双は当然だわ。これでも奨励会を突破できるわけではないというんだから、奨励会はオソロシイ。。この棋譜は途中まで定跡化されるんでしょうけど、途中までは居飛車が良く見えます。これで居飛車側が悪いんだとしたら、居飛車で超速を指す人は知っておかないとマズイ事になりそうな棋譜ですね…。ああよかった、先手でも後手でも穴熊志向の僕は高みの見物ができて(^^)。

 さて、今日は竜王戦かな?仕事が忙しくってじっくり見れないけど、暇を見つけて覗き見だけでも出来るといいなあ。


第66回NHK杯 豊島将之 vs 久保利明 (ゴキゲン中飛車)

 自分の本の出版が決まりました!!とはいえ、専門書なもので、そんなに売れないというのが最初から分かっているもので、これで生活が楽になる事はないと思うんですが、本業でそれなりの仕事を果たす事が出来たのは嬉しいです(^^)。好きな将棋を控え目にして頑張った甲斐がありました。というわけで、王位戦も順位戦も一応は見ていたんですが、ブログを書く暇がありませんでした。王位戦第6局、土俵際に追い込まれていた羽生さんの右玉からの大技、凄かった!あんな成り捨てを前提にした構想なんてどうやれば出来るようになるんでしょうか。僕なんて、1手前ですらそれに気づかなかったよ。。それどころか、反撃狙いではなくて完全に主導権を取る鉄壁の右玉なんて、僕が知っている右玉と全然違う(^^;)。あと、B1での郷田-糸谷戦。郷田さん、昨年からどうしちゃったんでしょう…よもやとは思いますが、郷田さんがB2に落ちるのは見たくないなあ。逆に、B1で凄いのが久保さん。阿久津さんや木村さんを倒しての全勝!!順位がいいだけに、一期でのA級復帰もあるかも。長く続いた羽生世代の時代は関東中心だったように思いますが、今は関西の方が勢いがありますね。

20160918NHK_豊島vs久保_後手ゴキ中48手 というわけで、今日のNHK杯も好カード、豊島さんと久保さんでした。そして…いやあ、急戦調の居飛車対振り飛車となると、久保さんの捌きの見事さが爆発してしまいますね。実際の形勢は分かりませんが、早指し戦で久保さんに角を捌かれてしまったら、勝つのは相当に難しくなっちゃうんじゃないかと思いました。△59角成と角を捌かれてしまった後(48手目盤面図)も、僕レベルのアマ同士だったら、最善手ではないかも知れませんが▲39飛△26馬▲65歩で、馬を自陣に張り付かせたままにしておかないで、馬をどかしてから歩を切り取った方が、アマなら頑張りやすいんだろうな…なんて思って見てました。でもあの辺で殴り合いに行けるかどうかが、プロとアマの差なのかも知れません。僕なんかだとその辺までしか考えられないけど、プロなんてその後の読みも入ってるに決まってますしね。また、超速に行った以上は…というプロとしての矜持もあったかもしれません。最後は、久保さんから△75銀なんていう華麗なタダ捨ての順も飛び出して、久保さんの勝ち!久保さん、魅せにいったな( ̄ー ̄)。

 いや~、久保さんの将棋は面白いです。相変わらず中盤の構想力と終盤力がハンパない。もちろん強いんですが、それ以上にうまいという感じでしょうか。華麗さ満載の久保将棋でした(^^)。一方の豊島さん、どう考えたって強い棋士なのに、タイトル戦でも順位戦でも、紙一重のところで微妙に届かない感じ。今期の順位戦も、良い成績ではあるんだけど1敗していて、成績いいけどトップではない…みたいな、ギリギリ届かない感じなんですよね。好きな棋士のひとりなので、なんとか突破していってほしいです(^^)。


プロフィール

ShougiX

Author:ShougiX
駒の動かし方を知っていた程度の初心者です。せいぜい1日1時間ぐらいしか将棋に時間を割けない社会人が、ガンバって1年で初段になる事が目標です!
(*追記)10ヶ月ちょいで初段到達!!ただいま、居飛車側から各戦型に対応できるよう奮闘中(汗)。。

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